そして、目を覚ます


泣き疲れて、寝ていたみたいだった。

俺の部屋でふたり、ベッドの上でシーツにくるまって。

手は繋いだまま。



長い、夢を見ていた。
前世、と言っていいものか分からないけれど、『始まり』から『終わり』までを一気に遡った。

ああもう気分が悪い。

彼奴等を思い出せば腹の底から何か熱いものがたぎってくる。反対に頭はすっきりとしていて、彼奴等とは関係ない道を歩めるかどうかを模索する。


「……つな」


ぁ、起きた。
紫色のまあるいビー玉が、俺を映す。

不思議だ、この紫色を見れば先程までの不快感が瞬く間に消えてしまうのだから。


「何考えてるの」


ぎゅうぎゅうと抱きしめられて。まだ6歳にも満たないふたりだからシングルベッドでも広すぎるくらいで。


「びゃくのこと」


嘘吐き、とさらに強く抱きしめられて。

ちゅ、と口付けを交わせば。


「なんか、この姿でキスなんて背徳感」


キスしてきたのはそっちのくせに。


「じゃあもうしない?」

「ふふ、するに決まってるじゃん」


ちゅ、ちゅ、と何度となく優しいキスを繰り返して。


「これからは…この生ではずっと一緒に生きられるね」

「一緒に生きれるし、一緒に逝けるよ」


前の生じゃあ君に僕の身体を片付けさせたしね。

「今度はちゃんと、一緒に逝こうね」


うん、うん。

なんて幸せなの。



彼奴等の子どもとして再び生を受けてしまって、ボンゴレと関係が続くなんて嫌な予感しかしないけれど、傍に君がいてくれるなら話は別だ。


頑張るよ、俺、頑張れる。

絶対に、お前と一緒に生きてみせるし、逝けてみせるよ。



「……ねぇ、びゃく。なんで俺の場所わかったの」

「僕の能力忘れちゃった?」


並行世界の君を調べたらすぐ分かっちゃうよ、となんか当たり前のごとく宣う白蘭に、なんてチートな能力なの、と笑えば、君の超直感も十分チートだよ、と呆れられてしまった。



「ツッくん、ご飯よー」

一階から自分を呼ぶ声がして、返事もせずに階段を下りる。

トン、トン、トン


(……?)


「びゃくも下りてくるの?」

大丈夫?


「…だってご飯でしょ?」


いやいやそうだけれども。
普通に顔出していいわけ?


がちゃり、不安を抱えたままダイニングのドアを開ければ、

「あら!びゃっくん、ツッくんと一緒にいたのね」

もう仲良くなっちゃって!


(………!??)


意味が分からずに白蘭へ視線を向ければにこり、綺麗に笑われて。

ほら、大丈夫でしょ。


混乱する頭を追いやって、夕ご飯を食べ始める。

今日はオムライス。

びゃくのには“ようこそ”、俺のには“つな”と描いてある。
ウザイからぐちゃぐちゃにしてやったけど。

それを見ていたびゃくが笑いを耐えてたけど気にしない。

気にしないとは言っても自分のイライラが霧散していることに安堵する。

この女と絶対に顔を合わせなきゃいけない食卓が嫌で嫌で堪らなかったけれど、隣で和やかに食事をする彼がいれば、気が楽だった。


助けられてるなぁ、俺。


心の中で白蘭に拝んでいると、ツッくん、と呼びかけられた。

「お互い自己紹介はしたのかしら?」


その言葉にふたり、顔を見合わせて。

なんか、ねぇ。
今更自己紹介ってのも、ね。


「びゃっくん、この子がさっき話した“綱吉”よ」

仲良くしてあげてね、と声をかけられた白蘭は、口の中にオムライスが入ってるのか、もごもごしながらこくん、と頷いた。


「ツッくん、この子は“白蘭”くんって言ってね、親戚の子よ」

身内に不幸があってね、うちで預かることになったの。

仲良くしてね。


そう言うと目の前の女は片付けをする為か席を立ってしまった。




(……しん、せき!!?)


呆然としていると、くいくいっと服の裾を引っ張られて。


「遠い遠い親戚になりすましたんだ」

「なり、すまし?!」

「うん、ここの家に辿り着くように差し向けたの」


ごめんね、親戚みーんないなくなっちゃった。




そう言って笑う白蘭の口元に付いているケチャップが血に見えて。


そんなのどうだっていいよ、と彼の口元に付くケチャップを舐めあげた。



しあわせにぎせいはつきもの
(なんて恐ろしい六歳児!)






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