それは懐古の温もり
目を覚ませば、見たことがある風景が広がっていた。
(あれ、俺死んだ、よね)
なんだ、身体が動かしにくい。頭で考えても指先まで伝達できない、ような。ってか手が異常に小さい、よ…?
(あ、俺赤ちゃんになってる)
生まれ変わったのか、さっき死んだばかりだと思うんだけど。世界はやけに忙しく生を廻すんだな、と嘆息。
にしたってなんで記憶があるんだ、と不思議に思う。あんな、忌まわしい記憶。忘れてしまいたいのに、頭の片隅にこびりついて離れない。
あぁ、でも優しく笑う君が脳裏を掠めて。君を想いながら過ごすのもいいなぁ、と思い出に浸る。
そこで、はた、と気付く。
(俺、どんなところに生まれ変わったんだろう)
今度は平和に暮らしたい。血も、硝煙の香りも無い世界で。
つらつらと考えていたらふわり、浮遊感。あ、抱きかかえられた。この人が俺の母さんか、と視線を上げれば。
「ツっくん起きたのね」
え、そんな。
「お、綱吉!おはよう」
そんな、なんで。
「あなた、声が大きいわ。ツっくんがビックリしてるじゃない」
「おお、奈々すまん」
俺、また「綱吉」なの。
生まれ変わったんじゃなくて生を繰り返してる!
「ほら、ツっくんおねんねしましょうね」
優しい温かな手が俺の頭を撫でる。ああ、気持ちいい。混乱する頭を隅に追いやって、安息の揺らぎに身を任せた。
あぁ、俺、愛されてたんだ。
それでもおれをうらぎるの
(どうして、なんてもう言わないよ!)
←