鐘は告げる
「…転入生?」
屋上に守護者(なんと他校のクロームまで!)を集められ、黄のアルコバレーノから発せられた言葉に皆首を傾げる。
「そうだぞ、ボンゴレの大事な同盟相手の末娘だ。日本に興味があるらしくてな、並盛に来たんだ」
「初めまして、リリスといいます」
金髪のブロンドに、青色の瞳が輝く美少女。それが皆が認識するリリスだった。
ひらり、ひらりとスカートを翻して近付く彼女に、山本も獄寺君もお兄さんも。
そしてなんと雲雀さんまでも釘付けで。
そんな彼らと対照的に、俺の心は急激に冷めていった。
どこが可愛いのかが理解できなくて(そりゃ一般的に可愛いのぐらいは分かるけどさ)皆が頬を赤くする意味が分からなかった。
今思えばそれは超直感の警告だったんだろう。当時俺は超直感が鈍く、戦闘面でしか使い物にはならなかった。
だから、そっと蓋をしてしまった。その違和感に。
リリスが転入してきて1ヶ月もたった頃。
京子ちゃんを凌ぐ勢いで彼女は人気を集め、新並中のアイドルとして持て囃されていた。
女子からの好感も悪くなく、京子ちゃんの紹介で他校のハル、うちの居候のビアンキやイーピンまでも仲良しになっていた。
クロームは言うまでもなく。
それでも俺はその輪に入りきれなかった。違和感がどうしても拭い去れない。
だから皆で彼女を取り合う様子を一歩引いて眺めているのが日常になってしまった。
山本と獄寺君の間に挟まれて笑う彼女を見たら、自分の居場所を穫られた気がするけれど。
それを言う勇気さえ持ち合わせてなく。
日々、過ぎていった。
そして、ある昼下がり。
世界は急に反転した。
「ボンゴレを、ちょうだい」
「はぁ?」
屋上でふたりきり。
呼び出されたと思ったらいきなりの欲望の塊。
昼休みの終わりを告げるチャイムが遠くで鳴った気がした。
ああ、授業が始まる、とぼんやり頭の片隅で考えて。
にたり。
天使と称される笑顔で、彼女は悪魔のように笑った。
ぜつぼうのはじまりを
(こんな世界誰が望んだというの!)
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