B

昔の夢を見て変な時間に起きてしまったせいか今日の仕事はミスが多かった。
仲の良い同僚からは珍しいねと驚かれた。
たまには私もたくさん間違えることもあるよと言えば恋愛関連で悩んでるんでしょと言われ内心ドキリとした。
恋愛関連ではないことを否定してみたが信じてもらえず今度ご飯に行った時に詳しく聞かせてねと言われ複雑な気持ちになった。

夢でこんなにも影響があるんだから実際に白石くんに再会して彼女の話を聞いてしまったらどうなってしまうんだろう。
まあ彼女の話題になるかわからないけど…。

電車に揺られながら早く最寄りの駅に着かないかなと思っていると背後から声をかけられた。
誰だろうと振り向くとそこには中学生時代から成長したような白石くんに似た人がいた。
なんで声をかけられたか分からず戸惑っていると白石くんに似たような人から苗字さん…よな?と尋ねられたため頷くと白石くんに似た人は俺のこと覚えとるかなと心配しながら聞いてきたため私は悩みつつ白石くん…?と言うと彼は嬉しそうにそうやでと笑った。

「ほんまに久しぶりやな、元気にしとった?中学の卒業以来ぶりやけん苗字さんかわからんかったわ」

「久しぶり、まさか電車で再会するなんて思わなかったよ」

「俺も会えるんは謙也が企画してる飲み会やと思っとたから驚いたわ」
仕事終わるんが遅いからもしかしたら苗字さんに会えんかもしれんと思ってたからほんま嬉しいわと言われ心の中で私は会いたくなかったよと思う。
私が心の中で何を思っているか知らず白石くんは笑顔で今どんな仕事しよん?とか大学はどこ進学したん等と色々と話題を振ってくる。
それに対し私も答えを返したり逆に質問したりして普通の会話をしているように心がけているけど白石くんとの会話が苦しくてたまらない。

私が逃げただけで白石くんは何も悪くない。
いつまでも白石くんへの気持ちが捨てられない私が悪いんだ。
いっそ中学の時、白石くんが好きだったんだよって伝えて白石くんに振られてしまえばこの低温火傷したような恋心も消えてしまうんじゃないかと思った。

白石くんを見つめ少し考える。
振られるのは怖いし辛い、でもこのままずっと白石くんに想いを告げずにこれから生きるのはもっと辛い。

これを機に自分の恋心に決着をつけてちゃんと前を向いて進まないといけないのに、なぁ。

「…苗字さん?どしたん?」

「ごめん、少し考え事してた。久しぶりに会ったのに他のこと考えてごめんね」

「何か悩みごとあるなら話聞くで?ちょうど次の駅降りた所に落ち着いたバーがあるけん苗字さんが良かったら一緒にどうや?」

「えっ、それは流石に申し訳ないよ。大したことじゃないし」

「大したことなくてもええよ。俺が苗字さんの力になりたいだけやけん」

「ありがとう、白石くんは本当に優しいね」
昔から部長で忙しいのに部活でも助けてくれたり他の部員のフォローもして白石くんが優しいのが変わらないのがわかり尚更好きだなと感じてしまってチクリと胸が痛む。

「…苗字さん無理しとるやろ?昔から変わらんなその癖」

「えっ、何…癖?」

「苗字さん無理しとる時、下に目線を向ける癖あるなって思っとったけど…苗字さん気づかんかったん?」

「…そんなこと初めて言われたよ」
友達にもそんなこと言われたことないと白石くんに伝えると白石くんはずっと部活で苗字さんのこと見とったからなと恥ずかしそうにそう言った。

その言葉と表情に私はドキッと胸をときめかせてしまいそれはどういう意味かと聞こうとしたがタイミング悪く電車のアナウンスが流れ白石くんに無理矢理ですまんけどもう少し俺に付き合ってと手を引かれそのまま電車を降りることになってしまった。

白石くんってこんなにも強引だったっけと疑問に思ったがもう少し苗字さんとゆっくり喋りたいんや、ほんまごめんと申し訳なさそうな表情をするから余計に白石くんがわからなくなった。


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