A

懐かしい風景、四天宝寺中学の廊下に中学生時代の忍足くんと私が並んで歩いていた。
これは昔の記憶だろう。昔の記憶を再現した夢をこのタイミングで見るだなんて最悪だ。
そんな私の気持ちを知らず中学生時代の忍足くんと私は会話をしている。
聞くつもりなんてないのに会話はしっかりと私に届く。
やめて、聞きたくなんてない。そう思っても夢からは覚めることはなかった。

「白石に彼女が出来たらしいで」

「そう、なんだ…白石くんすごくモテるもんね」

「しかも彼女偉い美人やったし…白石羨ましいわ…」

「…そうなんだね」

「さっきから苗字顔暗いけど調子悪いんか?」

「そんなことはないよ、大丈夫」

「そうか?だいぶ顔色悪いで。部活も引退してないし早よ帰った方がええで」

「ありがとう、そうする」

心配な表情をしている忍足くんは気をつけて帰るんやでと校門まで見送ってくれた。
今思えば忍足くんには迷惑をかけたなと夢の中で思う。
昔も今も変わらず忍足くんは私に気を使ってくれている。
私にはもったいない友人だとつくづくそう思う。
一度だけ高校から全く違う学校に通っているのにどうして私のことを気にしてくれているのか聞いたことがあるが同じ部活で一緒に戦った仲間やからと照れ臭そうに言った忍足くんを今でも忘れずに覚えている。
本当に忍足くんは良い人だ。
いつか忍足くんにも素敵な彼女が出来たらいいのにと強く思っているのだが忍足くんは彼女を作る気はないようだ。
医者になる前から忙しくてそれどころじゃなさそうだったから仕方ないのかもしれない。

本当にいつか素敵な女性と出会って欲しいそう思いながら一人で涙を堪えながら帰る中学時代の私を見送った。

この後は自室で思いっきり泣いて違う学校に進学を決意するんだっけ。
秋から進学先を変えて必死で勉強したのを今でも本当に頑張ったなと思う。

白石くんへの気持ちは結局忘れきることは出来なかったけど良い選択をしたと思っている。
でないと今の私はいないから。離れたおかげで少しはマシな私になったと思いたいの。
わんわんと泣いている中学生時代の私を見つめチクリと胸が痛む。
夢とわかっていても悲しいものは悲しい。
早く夢から覚めないかなと思っていると意識が揺らぎ始めた。
早く、この夢から覚めたい。
意識が揺らいだ今がチャンスだと思い思いっきり目を開ける。

目を開けたと同時に自分の寝室の天井が見え、安堵する。
スマホで時間を確認するとまだ夜中の2時だった。
まだ起きるには早いけど寝てまたあの夢の続きを見るのではないかと不安に感じたが仕事もあるし大人しく寝ることにした。




[ 6/12 ]






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -