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白石くんに手を引かれ電車を降り駅の中を二人で歩く。
手は繋がれたままで恥ずかしいというか気まずいから白石くんに逃げないから手を離してくれないかなとお願いするが人が多いし逸れるん嫌やから少しだけ我慢して欲しいと逆にお願いされてしまった。

「苗字さんごめんな、落ち着けるとこ見つけるまでやから我慢してな」
そう言って白石くんはキョロキョロと辺りを見渡し必死にお店を探していた。

そんな白石くんの様子を見て白石くんにもこんな一面があるんだと驚いてしまった。
努力家で計画して物事を完璧にやり遂げる白石くんを部活で見ていたから慌てている白石くんがなんだか新鮮で可愛く見えてしまった。
もう少し慌てている白石くんを見ていたいけど時間も遅いしと思い白石くんに提案をする。
「白石くん、もう少し進んだ所に喫茶店があるんだけどどうかな?」

「えっ、近くに喫茶店があるん?知らんかったわ…」
どんな雰囲気なん?と白石くんに聞かれ、カウンター以外にも席があるし静かな雰囲気だよと答える。

白石くんは少し考え、ほな案内してもらってええかな?とお願いしてきたので了承し道案内をする。

駅から出てすぐ近くの建物の二階へと白石くんと一緒に向かい喫茶店へと入る。
店内に入るとまだお客さんはあまりいないようで店員さんから席はご自由にどうぞと言われた。

「席はどこでもいい?」

「どこでもええよ」
白石くんの返答を聞き、適当な席を選び二人で対面で座る。
白石くんから再度ごめんと言われ、大丈夫だから気にしないでねと伝える。
話を逸そうとこの店のコーヒーとカレーがおすすめだと教えると白石くんはほな苗字さんが教えてくれたおすすめ頼むわと言いすんなりと何を頼むか決めていた。

私は何を頼もうかとメニュー表を見る。
仕事帰りだし話もどれくらいかかるのかわからないから私も料理を頼もう。
ここのカレーは美味しいのはもちろんだけどオムライスもおいしいしデザートのフルーツタルトやワッフルもおいしそうだな。
どうしようかと悩んでいると白石くんが悩んどるん?と声をかけてきた。

「オムライスにしようと思ってるんだけどデザートのフルーツタルトやワッフルも美味しそうで悩んでて」

「ほな俺がフルーツタルト頼むから苗字さんワッフル頼み」

「えっ」

「半分ずつしたら両方食べれるやろ?」

「確かにそうだけど…」
白石くん無意識なのか彼女にもこういうことをしているのかわからないけど彼女でもない私にするのは間違っているんじゃないだろうか。
いやでも白石くんだし彼女がいるのにこんなことするとは思えない。
一体どういうつもりなのかと思っていると白石くんが気まずそうな表情をしながらごめんと謝ってきた。

「…半分ずつは気まずいわな。妹の友香里とようするからつい言うてもたわ」

「彼女じゃ…なくて妹さんと?」

「彼女はおらんよ。中学時代以降一回付き合って別れてから誰とも付き合うてないんや。妹の友香里や姉にはカフェとか連れまわされてよく半分ずつされるんよな」
白石くんはそう言い苦笑していた。

「大変だね…」

「まぁ兄妹やし小さい時から半分ずつすること多かったし苦痛ではないな。それより苗字さんの方が半分ずつ嫌やないん?彼氏とかおったら嫌と思うし…」

「いや私も今彼氏いないからそういうのは大丈夫なんだけど…」
中学時代からずっと白石くんのことが好きで忘れられずにいるところに突然電車の中で再会して喫茶店でデザートを半分ずつしようとしているのが都合の良い夢なんじゃないかと思ってしまう
しかもさらっと白石くん彼女いないって言うし。
チャンスなのかもしれないけど、頭の中がごちゃごちゃしていてどうしていいのかわからない。

「…悩ませてすまんな。ほなこうせん?」
そう言って白石くんが提案したのはまた後日に一緒にこの店に来て今日頼んだデザートと逆を頼まないかということだった。

「それなら気まずくないやろしどうや?」

「そう、だね。その方がいいかな…」

「ほな決まりやな」
店員を呼び注文をしている白石くんを見つめながら自分の頭の中や気持ちを整理する。
どうしていいかわからなくなっていた私にとって白石くんの提案は非常にありがたかった。
白石くんのこういう優しさ、本当に好きだなと思い更に白石くんへの好きの気持ちが増してしまい白石くんを諦めるのはもう無理なんじゃないかと思う。

白石くんから離れていてもダメだったんだ。
きっとこれが最後のチャンス。
想いを告げて振られたならきっと白石くんを諦められる。
中学時代から引きずっている低温火傷のような恋にようやく終止符を打つことができるはずだ。
振られるのは辛いけど今のまま諦めきれないまま白石くんを引きずっている方が嫌だ。

でも今想いを告げるのはちょっとどうかと思うから忍足くんから誘われてるテニス部の飲み会後にしよう。
そう心に決め注文をし終えた白石くんにお礼を伝えた。

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