いっさいが静まり返る。
破壊の限りを尽くされた機械は全て停止し、折り重なった人も動かない。
元は白かっただろう壁も床も家具も全てが赤に染まっていた。
そして、部屋の中心で佇む少女も赤く染まっている。
手に握られているメスもまた赤く、手の平から滑り落ちると床にぶつかりカツンと音が響く。
「……なんで?」
血だまりに力なく膝をつくと薄汚れた服に赤が染みる。
少女には何が起きているのかわからない。いつもの部屋で目覚め運ばれてくる朝食を待っていたが誰も現れず、鍵を掛けられているはずのドアを開けて出てきた。
その時はもうこの惨状になっていた。
赤い壁に赤い床、冷たくなり積み重なった研究員たち
「う゛お゛ぉぉぉい!なんだテメェは!!」
大声に驚いた少女が振り返ると銀髪の少年が立っていた。手には剣。
「これはテメェが殺ったのかぁ!?」
「…?」
男は死体を飛び越えて少女を見下ろす。
殺戮の限りを尽くされた施設で唯一生き残った少女に、剣を片手に施設に侵入した少年。
少女は返答に迷い首を傾げると少年はニヤリと笑った。
「どっちでもいいがな。任務が楽にすんだぜぇ」
少年は剣先を少女に向ける。だが少女の反応は薄く、鈍く輝く剣先を見つめる。そして不思議そうに鋭い剣に手を伸ばすと瞬く間に指先に痛みが走った。濡れた手がさらに赤く滴る。それでも少女は痛みも血も気にすることなく剣に指を這わせる。
「――きれい」
こぼれた言葉は剣に向けられたのか。口元を綻ばせる様は恍惚としているようにも見え、少年は大きく笑みを作った。
「ハッ!いいじゃねえかテメェ!」
――これが少女と男の初めての出会い[ 2/13 ]