「困ったね越前」
「しょうがないですよ不二先輩」

ココは東京都青春学園のテニス部の部室。
レギュラーである不二周助と越前リョーマは休憩中に届いたメールの内容を見て小さく溜め息を吐いた。珍しく眉を寄せている不二に桃城や菊丸が反応しどうしたどうしたとからかい、越前の頭を叩いた。
不二はメールを即座に削除。

2人が覗き込んだときには画面はもう変えられていた。


「2人共どーしたんだよ」
「越前が溜め息なんてらしくねーな、らしくねーよ」

越前と不二はまた顔を見合わせ、溜め息。
どこか諦めたような困ったような表情を浮かべながら立ち上がる動作に戸惑いはなくスッと立ち上がった。その妙にちぐはぐな雰囲気に他のメンバーが首を傾げていると、不二周助が笑う。
いつものように 自然に 優しく 爽やかで 月のようで 安心するように だけど微かに氷のような冷たさを瞳に浮かばせながら



「すごく悪いんだけど―――僕、皆を殺さないと



「へ?」
「何言って…」
「不二?」

何の冗談かと笑い飛ばそうと思考するなかで視界に映ったのは当たり前のように構えられていた両刃剣。
不二の普段とは違う笑みが深くなる。


零 崎 を 始 め よ う か



「越前!離れるんだ!!」

一瞬のうちに異質な空気に包まれた部室で最初に動いたのは大石秀一郎だった。大きく一歩踏み出すようにして越前の腕をぐいと引っ張る。

一歩。
部活仲間とは言え冗談ではなさそうな凶器を持つ者へ一歩近付いた。大石が越前を庇うように前に出る。普通ならば良くやったと賞賛されるはずだろう。普通ならば…

突然ドスリと“後ろ”からナニかに刺された

庇うように立った大石
後ろから


「え、ちぜん…?」
「マスター俺は何をすればいい?」

「おい越前!?」

大石がよろめいたのは一瞬で、すぐに短剣を引き抜き越前に構えた。河村も隣に並ぶ。


「手塚…皆を連れて逃げてくれ」
「…何を言っている」
「ここは俺たちに任せて。足止めしかできないけど」
「…分かった。すまない大石、河村」


手塚、菊丸、桃城、海堂、乾はいっせいに部室から駆け出る。
残ったのは不二と越前、大石と河村。

否、

「やっぱり抵抗するとは思ってたよ 薄野秀一郎」

「楽に死ねたんスけどね…天吹隆先輩」

「でも俺は正義を執行するよ 不二…零崎唯識」

「皆を守るためにね 闇口リョーマ」


まだ瞳は困惑に揺れていたが、殺意の含んだ目で睨まれれば気配は裏世界の人間のものへと変わり覚悟を決めたように睨み返す。
彼らはもう学生でも仲間でもない。

自身のエモノを持ったプレイヤー己の信念のために 動いた。

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