始まりはある男からの呼び掛けからだった。

「私の可愛い奴隷 夜魅」
「はい ≪人類最高≫」

ロイヤリティホテル最上階。かつて大戦争を引き起こした最悪と邪悪が訪れた一室で男はワイングラスを傾けた。声に応えた和とも洋ともつかぬ衣装の女は姿を現す。男は指で足元を示すと夜魅は偉大なる御方の足元に跪き、顎を掴まれ上を向かされた。多少強引な仕草ではあるが女は唇に笑みを浮かべている。

「いかがなさいましたか?」
「時は満ちた。あの日の誓いを果たせ」

男は表情を変えず短く告げる。その途端女は歓喜に瞳を輝かせた。

「あぁ――!ようやくきたのですね運命の時が!約束の時が!お任せ下さい我が主。貴方様の下僕が≪最高≫の時を紡ぎましょう!」
「期待している ≪人類最美≫」

うふふと少女は笑う。溢れんばかりの歓喜と狂気が、美しく残忍に唇いっぱいに広がる。

「全ては我が主のために」


闇夜に溶けていった少女の背中を見届け、≪人類最高≫は天を仰ぎ見た。先の大戦――否、小戦によって裏世界は混乱に陥ったが、再び、今度は彼女の手によって裏世界は狂わされるだろう。
だが、それもいいと≪人類最高≫は嗤う。零崎が事実上壊滅し殺し名の均衡が崩れたことで裏世界は随分変わってしまった。面白くなくなった。なら壊すしかないだろう。愛らしい奴隷もそれを望んでいる。

「――命ある限り私を楽しませてみろ 夜魅」

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