「──ええ、順調に進んでおります。一般人など赤子の首を捻るようなものですわ」

時刻は23:50。夜魅は細い窓枠に座りバリトンボイスに耳を傾けた。月明かりに照らされる艶やかな表情は、ほんの数十分前元クラメイトに向けた冷笑とは異なる恋する乙女のような表情。笑みからこぼれる吐息に色が付いているならきっとローズピンク。愛の色だと《人類最美》は言うだろう。
《人類最美》こと闇口夜魅が敬愛してやまない、彼女の心も身体も過去も未来も手にした男──それは《人類最高》

「それでは今宵も誠心誠意お仕え致します」

会話が終わり携帯を耳から離そうとした手が止まる。最後に囁かれた言葉に夜魅は僅かに言葉を失う。そして恍惚とした表情で自らの体を抱きしめた。虚空を見つめる先には敬愛して止まない主人が透いて見えるのだろう。

「あぁ…《人類最高》!あの方に命を捧げられるなんて、なんて幸福なんでしょう!あの方は私の理解してくださる。この余興も私のために…うふふ」

抱きしめていた携帯をポケットに滑りこませレーススカートの皺を指で伸ばす。身なりが整ったところで和室の畳をブーツで踏み歩き部屋の中央でいまだ寝入っている――真田弦一郎を蹴り飛ばした。

「ぐッ!?」
「いつまで寝てんのぉ?睡眠薬もなしにぐーすか寝続けるとかあり得ない」
「なんだ貴様…!ぐぁッ!」

不快な顔をブーツの先で蹴り黙らせる。高い枕を敷いた頭部はとても蹴りやすくこめかみにヒットした。

「その呼び方が気に食わなかったのよね。男尊女卑の考えが根底にこびり付いた老害みたい」
「なに…おい!なんだこれは!?」
「やっと気付いた。何って見れば分かるでしょう縄だよなーわ」

あぁ布団で見えなかったね、と布団を剥ぐと真田弦一郎は縄で雁字搦めに縛られていた。手首や腕、脚を荒縄で固定され動こうにもシーツを乱すだけ。
真田弦一郎が困惑しながら女を見上げるとルージュで彩られた唇が高らかに宣言した。

「さぁ復讐劇を再開しましょう」

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