「皆こう殺されたんかの…!」

1階へと駆け下りた仁王はそうごねる。
注射器で刺された箇所に手を当てるが今は違和感程度で痛みはない。毒は嘘か誠か。しかしテニス部連中が次々と殺されてる中信じない訳にはいかなかった。
女が言うには解毒剤は透明な手の平サイズのカプセルの中。それを家の中から探し出すのは相当困難である。でもやるしかない。最初に仁王は狭い部屋からしらみつぶしに探し始めた。トイレ、脱衣所、風呂場。しかしこの選択は恐ろしいほどに間違っていた。なにせ個室に入ってる間…夜魅は死角で自由に動き回れるということだ。

「クソ!本当に解毒なんてあるんか」

数部屋ぶん探し回るがカプセルは見当たらない。
今度は場所を変えてキッチンに向かい、仁王はバチバチとおかしな音を聞いた。いやこれは油の跳ねる音でありよく聞く音だったのだが…思わずキッチンに踏み込んだ仁王は驚きで足を止めた。止めてしまった。

銃弾がフライパンで炒られていたのだ。

「っ!」

そして十分に熱された銃弾は暴発し仁王の肩を撃ち抜いた。角度の計算なんてされてないただ炒られた弾。それが当たってしまったのなら、仁王雅治はただ「運が悪い」としか言いようがなかった。

「アハハハハハッ」

そして見ていた夜魅は笑う。視界に入らなかったのがおかしいほど近い、冷蔵庫に寄りかかったまま無傷で無邪気に笑う。

「ほぅ…っ こんな使い方もあるんか…」
「面白いでしょ?ただ見てるのもヒマだし仁王くんを殺しにかかることにしたの」
「それは…分が悪いの」
「本気で殺しはしないよぉ。これはゲームなんだから」

あくまで「自らの手で」殺さないだけで、毒殺はするつもりだが。夜魅は満足そうに笑うと再び姿を消した。新たな仕掛けを施すために。仁王雅治は時間内に負傷した肩を庇い悪意のある罠を避けながら解毒剤を探さなければならなかった。

時刻は23:20。既にゲーム開始から30分が経っていたが仁王雅治は家の半分も探せていない。
家族のいる部屋は…どうしてか後回しにしていた。不自然な物音がしても起きてこない家族に嫌な予感が、いや確信があった。だが明確な答えは出さぬよう頭を振ってカプセル探しを続けた。合間合間に女からの悪意ある妨害を受け苛立ちもつのる。廊下の画鋲や取っ手の接着剤や紙の間のカミソリは命に関わるものではないにしろ、つい女の姿を探してしまった。

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