「ふぅん……」

時計が示す時間は10:25 。
コレを始めてからもう5分は経過したがコレはまだ元気に動き回っている。血反吐を吐きながら流血をしたたらせながら血管をはり切れんばかりに浮かせながら目を血走らせながら。生にしがみつくのではなく復讐にしがみつくように。

「……しぶといなぁ」

丸井ブン太が私を追う。

「とゆーかしつこい?」


右腕も左腕も右脚も左脚も斬り落とされてるのに。
二歩下がっては這って進み、一歩下がっては噛みつこうと歯を剥き出し、一歩下がっては飛び付こうとするから切断面を蹴る。激痛に悶えてるうちに一歩下がれば再び距離を詰めようと動き始める。
なんか動きすらグロテスク極まりないんだけど手を叩いて称賛してあげたい。だって"復讐"という感情だけでここまで出来るんだよ?普通はさすがに死んでるって。人間って強いんだねぇ。

「て、あらっ?」

丸井くんが止まった?腕が痙攣するだけで前に進もうとしない丸井クンに「とうとう死んだか?」とちょっと近づいてみる。

体がくの字に曲がった。

「ーーー!」
「ぅわ!キモ!」

油断させるためかそれとも本当に一瞬意識が飛んだのか、私が近寄ると渾身の力で飛びかかってきた。その姿に全身の毛が総立ち。キモいなにこれ同じ生物じゃないエイリアンだ。ってなわけで思わず頭を踏みつける。めしゃり。

「うわ…あーやっちゃった!」

嘆いてももう遅い。丸井くんの頭は私のピンヒールによってひしゃげ中身が見えてしまった。しぶとくてしつこい丸井くんも流石にこれは駄目だったみたいで完全に事切れてる。

「まぁ…十分かな」

部屋を改めて見るとセンスよく天井に吊り下げられた手足のオブジェ。床は両親の肉塊を散りばめようと思ってたけど丸井くんの絵の具でアートに彩られている。…素敵。タイトルは「食肉工場」ってとこかしら。
次にこの部屋に入る人の表情と感想を聞きたいところだね。カメラでも取り付けて置こう。


「くっ…フフフ…! あーこれからが超楽しみ。次は…誰にしよっかなぁ?」


手についた血をベロリと舐め、これからを思案しながら息耐えた丸井家から去った。



【立海大附属高校】
死者:丸井ブン太
原因:出血死

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