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「んだよージャッカル何してんだ?」
携帯から聞こえるのは呼び出し音。
いつもなら風呂も上がりに無駄話をしている時間だが今日は一向に電話に出ない。丸井ブン太はつまらなくなり携帯をベッドに放り投げた。おやつのアルフォート(抹茶)もなくなり暇な上に口寂しい。
何気なく自分の腹をつまむとむにりと脂肪を掴める。最近はろくにテニスもできず食べて寝てを繰り返しているため体重がちゃくちゃくと増えている気がするが、まぁ殺人犯が捕まればすぐ日常に戻れるだろぃと笑いブン太はベッドに寝転んだ。
時刻は22:00過ぎ。
「明日は何すっかんなー」
闇口夜魅が動き出す
「弟たちと遊ぶかな…」
彼女の動向を見逃すな
「ーーーーーん?」
ブン太がベッドでまどろみもう少しで夢の中に落ちる…というところで音が聞こえた。気配がした。それは2人の弟か両親の誰かがいるのだろうと思ったのだが…
変な音がした。
引きずるような音。
「………?」
まるで水を吸ったぬいぐるみを引きずっているような…気持ち悪い音。場所は部屋を出てすぐの廊下だ。
ガッガッガッ!
「な、なんだ!?」
今度は階段にぶつかる音。そして下まで滑り落ちる音が聞こえた。静寂が戻る。
ブン太は外に向かって呼びかけてきたが反応はなかった。この時はまだ弟がイタズラでもしてるんだろぃ、と思ってドアを開けたが……あったのは異様に静かに横たわる闇と廊下に引かれた赤い線。赤い液体。
「なんだこれ?」
触れてみると液体はぬるりとする。
さっき引きずられていた正体ーーー?
赤い液体が血のように見えて背筋がゾワリと逆立った。
「おい!誰かいるのか!?」
嫌な感じがする。赤い線を追って階段をかけ降りると……真っ赤になった弟が倒れていた。頭から、服の下から、どこからか血が流れて血だまりをつくっている。
「え……は?」
死んでいる。
それは離れていても暗くても不思議とわかった。心臓が動いていない。筋肉が固まっている。
「な……どうしたんだ…?」
恐る恐る近寄って動かない弟に触れる。生ぬるい体温と血が不快に感じる。不快?弟だろぃ? 頬が引きつる。不快だと思ってしまうのは…死んでると分かっているから。
でもどうしたんだよ。なんでこんな事に。まさか階段から落ちて…? 階段を見上げて頭を振る。落ちたならあんな赤色がつくわけない。そうだ、救急車だ。電話しなければ。いや先に父さんに言ったほうがいいのか?
痺れる頭でふらつく足で親の寝室へと向ける。寝室は一階の居間の近くで父さん母さんは一緒に寝ているんだ。
「父さん、母さ……」
グチョリ。
父さんが眠る布団をさすろうとして、するはずがない感触がした。薄い毛布を通して下が濡れているのを感じた。嫌な汗がブワリと吹き出す。耳の裏からドクドクと心臓が暴れる音がする。
嫌だ。分かりたくねえよ。そう思いながらも毛布をめくると…両親は真っ赤になっていた。身体中が切り刻まれ、首も腹に大きな一文字の痕がある。頭が痺れて真っ白になって何が起きてるのかがわからない。分かりたくもない。
「電話…そうだ、救急車。いや…ハハ…警察か?」
寝室にも電話の子機がある。一瞬迷った末に救急車の番号を押したのだが…繋がらない。機会音すらしない。…電話線が切られていた。
「…なんなんだ。一体どうしたってんだよ!何で電話線なんか切られてんだ!?」
子機をぶん投げ寝室を飛び出す。自分の携帯は部屋に置きっ放しだ。足音を荒立たせて二階の自室に行こうとして、はたと立ち止まる。……階段下の弟がいない。
「嘘だろ…」
苛立ちが急速に冷え、混乱していた頭が落ち着きを取り戻した。そして階段に伸びていた赤い線が2本になっているのに気がついた。まるで、再び引きづられていったみたいに。線を辿って階段を上がると俺の隣の部屋…2人の弟の部屋へと繋がっている。
そうだ。倒れていたのは1人で、一番下の弟はここで寝ているはず…。冷たいドアノブに触れ、ゆっくり押し開いた。
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