震えが止まらない。
俺だけが逃げてきたと気付いたのは部室に入った時で橘さんと鉄はどこにもいない。ここに来る気配はない。どうしていいかわからず物陰に隠れているけど多分時間の問題だ。そもそも何で俺は部室に来ちまったんだよ!職員室とか事務室とか、せめて校舎内に入ればよかったのに。何故か走り出した瞬間部室しか考えられなかった。

いや、そもそも最初に逃げた時だって校舎内に入ればこんな事にならなかった。鉄たちもだ!俺も皆も馬鹿すぎる!
どれだけ考えようと手遅れでここから出られない。深司が来てしまう。

「くそ…どうして、深司!」

風が横ぎり辰徳の首が飛んだのを思い出し身震いする。もし、あの時俺を狙っていたら…

「雅也も、深司がやったんだよな」
「そうだけど」
「うわああ!?」

雅也の死体を確認しようと身を乗り出した瞬間、目の前に鎌が降り下された。棚を抉った黒と青のチェック柄の大鎌が血に濡れて赤い。でもこれは俺の血じゃなくて…

「…神尾だけ逃げたから思わず橘さんと鉄殺したよ。本当は嫌だったのにな。ったく…」
「何でだよ深司!!」
「…お前らのせいだからな」

深司の言ってることが分からない。もとからよくわからないような奴だったけど、本当に分からない!

「殺したのは確かに俺だけど、命令したのは彼女なんだよなー。それに彼女は復讐のためであって実際悪い奴は他だし」
「か、彼女って誰だよ」
「…≪人類最美≫闇口夜魅」

名前を言われてもピンとこない。会った事もない奴だろう。それが深司にも伝わったのかため息をつきながら鎌を肩に乗せた。
今すぐ殺される訳ではないとわかって、敵が目の前でも少しホッとする。

「やっぱり覚えてるのは俺だけか」
「覚えて…?」
「夜魅と俺たちが会った事」

記憶をフル回転させて思い出しているけどわからない。会ったことがある?いや、名前も顔も分からねえよ深司。深司はまぁいいやと呟いて鎌を俺に向けた。今まで感じたことのない冷たい視線に体が動かなくなる。

「夜魅に言われたから殺す」
「ま、待てよ…」
「俺の名前は石凪深司。死神」
「殺さないでくれ!」

「 生 き て い る べ き で な い 者 を 殺 す 」



ザシュッ

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