「裕太。俺は生きたい」

理由もなくこんな現状を作った観月に絶望していた。しかしもう2人は止まらず向かい合う。
淳くんは木刀、裕太くんは金属バット。リーチとしてはあまり差異はない己の武器を強く握りしめた。

「俺は亮の所へ帰るんだ!」

「木更津先輩…俺だって兄貴の所に行くんだ!」

声とともに裕太くんは踏み出し力いっぱい振り回す。淳くんはギリギリでそれを避ける。大振りにより開いた脇腹にむけ鋭く木刀を突き出す。体をひねり避ける。

ふむ…なかなか悪くない戦いですね。

淳くんは本能で戦い方が分かるのかうまく木刀を扱って小手先で攻撃しています。裕太くんは雑な攻撃が多いですが二度の失敗は決して犯さない。現にもう大きな降りは使っていません。
んふっ ならこの勝負…淳くんが勝つでしょうね。
バットは所詮バット。野球ゲームに使われるもの。振るうことが出来なければただの金属の塊です。


「ぐ、あ!……木更津先輩…」

ああ、勝負がついたようです。
カラン、とボコボコに変形した金属バットが観月の足元まで転がった。


「…終わりだよ裕太」
「くそぉ!どうして、どうしてこんな事に!」

「…本当だね」

木刀がヒュンと振り下ろされ
 頭蓋が砕けた



「ハッ…ハァ…あぁ……」

哀しいのか苦しいのか呻きをあげる淳くんに僕は心からの拍手を送る。
素人同士にしてはいい劇でしたしきっと美しい彼女も満足していただけたでしょう。彼女の気まぐれに貢献できただけで僕は十分です。

僕は血濡れた聖母マリアの前で笑う。


「観月…俺は本当は知ってるんだ」
「亮君がすでに死んでいる事ですか?」
「………ああ。だから俺も送ってほしい」

咎凪虎次郎がいろいろ情報を流しましたからね…一般人にも多少漏れてしまったのでしょう。
まぁそんな事はどうでもいいです。勝者には景品を――安らかな眠りをさし上げましょう。元より目的は殲滅でしたし。

「でも観月…俺は少し安心してたんだ」
「はい?」

「亮がいなくてよかった。双子で殺し合うなんて…悲しすぎるだろう?」

静かに笑い、淳くんも力無く倒れた。これでようやく全員が死んだ。
悲しい、ですかね…そんなこと何年も考えていませんでしたが。私はどうやら手を汚し過ぎたみたいですね。


こめかみに冷たいものを押し付けロックを外す
カチャン、という音が頭に響いた



「憎まれ役はお似合いでしょう?」

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