東京都 聖ルドルフ学院高校。

男テニス部レギュラーは珍しく、校地内にひっそりたたずむ教会へと呼ばれていた。クリスマスやイースターには眩く飾られる教会も今はなにもなく白く静か。まるで無人を思わせる雰囲気があったが呼んだのは観月はじめだ。時間に遅れるわけがない彼はここにいるはず。

「どこにいるんだ観月?」
「出てくるんだーね」
「ここですよ。7分の遅刻ですね皆さん」
「クス 細かいね」

祭壇より現れた観月はじめは癖で髪をくるりといじる。いくつもあるランプは灯いていなかったが、かわりにさまざまな色のステンドグラスが輝いている。普段なら美しいと思うはずのそれは不思議で妖しい色をしている。

「観月さん、何をするんですか?」
「部活はしないだーね?」

「ええ、少々待ってください」

みんなを祭壇の前に集まると観月はわきに行き木の箱を持ってきた。何やらいろいろ入っている重そうな木箱を皆の前にドスンと置く。


「観月…これは何だ?」

中に入っているのは金属バット、ハンマー、木刀、スタンガンやハサミ。統一感のない中身は作業に使うものではないとすぐ分かる。まして木刀やスタンガンは護身用などで使われるモノだ。何故観月が用意したのか。
不思議そうに道具を見ている部員を観月は笑った。


「んふっ 皆さんには…殺し合いをしてもらいます」


木の箱を蹴ると道具が床にバラバラと転がる。いや、道具ではない。これより殺し合いに使われるこれらはハサミでさえも立派な武器だ。

誰もが状況を理解出来ず冗談だろうと頬を弛めた中、ただ1人淳は木刀を掴んだ。


「淳!?」
「木更津さん!!」

「違う…体が、勝手に…!?」

「んーっ 久々でしたがちゃんとかかりますね――“繰想術”」


髪をいじりながら―― 観月はじめ 時宮始刻 は言った。

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