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「忍足先輩!」
「んーなんや?」
部室を出て宍戸たちに追いついた闇口侑士はティンぺーを宍戸につき付けたまま動かない。少し離れた位置にいる鳳は迂闊に近づけず悲痛な声で叫ぶ。
「宍戸さんを放してください!」
「長太郎…早く逃げろ!」
「んー友情やなぁ」
軽く言う闇口侑士はすでに心を閉ざしていて読みづらい。無機質な瞳に宍戸は息が詰まる。それでもどちらかが動けば宍戸を殺すであろう気配がにじみ出ている。
「なぁ鳳、提案があんねん」
「提案…ですか?」
「せや。仲間になって欲しいねん。死んだぶん穴埋めせなあかんからな」
ちなみに不二、越前。そして手塚も仲間や。
その言葉に宍戸と鳳は愕然とする。
あの3人が殺しをするなんて、と言う驚きとこんな簡単に人を殺し凶器を突きつけてくる者が近くにたくさんいたことに。正確には手塚国光は減った穴埋めのぶんに抜擢されたのだが。
「入らんならどっちも殺すで?」
入ってくれるんなら宍戸は逃げしたる、という条件付き。どうや?と振り返らず聞くが脅しのように宍戸の喉にティンぺーが僅か食い込んだ。
離れた位置からでも尊敬する宍戸さんの顔はゆがみ冷や汗が流れているのが分かる。鳳は拳を握りしめた。
「俺は 絶対に入らない!!」
「…残念やわ」
その一瞬で宍戸の首は胴から離れ落ちる。鳳はその光景を見ないように反対方向を向き、逃げようとした。
しかしその先には…
「何だ、入らないのか鳳」
「ひ、よし…!」
すでに血で濡れていたティンぺーを鳳の腹に沈めた。グチャリと嫌な音を立てて引き抜くと地面に倒れる鳳。
ヒュンと空を切り血を払う。
「帰るでマスター。可愛い弟のリョーマが待っとるし」
「ああ、唯識兄さんも…だがその前に≪人類最美≫に連絡だ」
「ホンマ好きやなぁ」
「黙れ」
何事もなかったように、まるで部活帰りのように帰る2人を微かに意識が残ってる鳳が見ていた。
もう死んでしまうのかと思いながら。2人を見ているとふつふつと憎しみが沸き上がってくる。復讐したい。やり返したい。
しかし 世界は閉ざされた。
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