ジローを始末した零崎京識は闇口侑士とバラバラに部室を出て元仲間を探しに行った。
どこを探すかなど考える間もなく真っ直ぐコートへ向かうと…いつものように尊大で偉そうな跡部景吾がいた。仲間の死に動じず殺人鬼である零崎京識を迎える姿は下剋上を狙ってきたキングそのもの。こんな状態でも王は揺るがないのか。

「来たか日吉」
「…俺は零崎京識です」

横から飛びかかってきた樺地を終わらせ、コートに立った。

それは異様な光景だろう。死体の転がるテニスコートに何も持たぬ帝王、武器を持つ後輩。薄暗くなり始めている空模様を見つつティンぺーを握る手を強めた。

「こんな形で下剋上するのが残念ですよ」
「アーン?出来ると思ってんのか」
「これからするのはテニスじゃないので」
「…ッハ」

いいのかそれで、と言われる。
跡部さんは財閥ですからね。しかも氷帝で殺人事件なんてそれなりに面倒事は多いでしょうが構わない。上には上がいるんだ。例え跡部財閥が大きくても赤神、謂神、氏神たちには叶わない。玖渚と比べれば跡部財閥は一般人と変わらぬ存在。
≪人類最美≫は表世界を魅了させ、財力の世界を支配し、政治力の世界を堕とし、裏世界を意のままに動かす。彼女なら隠ぺい工作は完璧だ。

だけど跡部部長が言ってるのはそう言う意味じゃないだろう。あの人ならきっと…「もう俺と戦えなくなるぞ」という事だ。


「…傑作だ」

コートを蹴りティンぺーで突くと跡部景吾は横に飛ぶことでかわす。それを感心したように見、零崎京識はさらに攻撃するがことごとく避けられた。

「ハッ 息巻いたくせにそれだけか?」

お前の動きなんざ見切ってる、という笑いに零崎京識は動じない。

切れ味を確かめるように刃に指を這わせ頷く。これくらいであの人に下剋上出来るはずがない。…ウォーミングアップは終了した。零崎を始めるぞ?いいや違う。
ここは…

「 下剋上だ 」

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