「16時31分7秒。8、9、10……」


ピロリーン ピロリーン
メールの無機質な音を止めるように携帯を開くと≪人類最美≫からだった。
彼は内容を見ずにそれを削除し深い深い溜め息をつく。

「やっぱり、来ちゃったか」


千葉県六角高校テニス部。

部室裏に佇む佐伯虎次郎は再び息を吐き壁に寄りかかる。彼にとって≪人類最美≫ のメール内容は見ずとも分かるものだった。いまだ玖渚によって情報がストップされているが、それでも彼には分かっていた。

「部員を皆殺しにし私と最も気高き我が主≪人類最高≫を楽しませろ。≪人類最美≫が命ず……か」


分かっていた。佐伯虎次郎は…いや、咎凪虎次郎は“予言”していた。
だからずっと前から彼は皆、大切な仲間を皆殺しにする未来を変えようと考えていた。

決意を決め咎凪虎次郎は頭にたたき込まれていた数字を携帯に打ち込む。


「もしもし…咎凪虎次郎です」
≪ん、どうしたの?早く殺して見せてよ≫
「俺は出来ません」
≪どうして?≫
「皆は俺の大切な仲間だからです」
≪ふぅん…へえ、そっか≫


プツン、と電話が終わる。

……諦めたのか?
けど≪人類最美≫がそれくらいで諦めるような簡単な人ではないと知っている。

「サエさーん!どこにいるんですかー!?」
「あ、今行くよー!」

…大丈夫。
流れる冷や汗を振り払うように咎凪虎次郎は仲間の元へ走っていった。

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