「駄目だよ皆。全力で逃げなきゃ」
あっさりと先回りされた手塚、菊丸、海堂は悔しげに止まった。
零崎唯識の手にはリョーマと同じ煌びやかに装飾された剣。いつもと同じ微笑みにはとても不釣合い。
「不二ぃ!何でこんな事になってるんだよ!」
「…不二、何故こんなことをする?」
「クスッ 手塚はやっぱり冷静だね」
――もう大石とタカさん、もしかしたら乾と桃城も死んでるかもしれないのに。
その言葉にピクリと反応する。しかし剣を持ち上げられると悲しむ暇さえなく構えなければいけない。未だ騒がしく喚いている菊丸に視線を向けると顔をこわばらせて口を噤んだ。薄く開かれた瞳には狂気の沙汰が浮んでいる。
「僕らにとって彼女は絶対。だから―――」
「菊丸先輩!!」
ヒュンッと剣がなった瞬間、海堂が菊丸の前に飛び出た。
ザシュッと生々しい肉を斬る音。
「うわぁぁ!!海堂…!不二ぃ、俺達友達だろう!?」
「そうだったね」
ザシュッ!
刈り取られた菊丸の首が草の上に転がる。
それは残虐な殺し方で、最も苦しみのない優しい殺し方だった。
「マスター終わったよ」
「ああ…ちょうどだね。リョーマ」
「手塚部長はどうするんスすか」
まぁね、とニッコリ微笑み2人は手塚を見た。
「ねぇ手塚?もしよかったら……… 僕達と来ないかい? 」
「何を言っている…!」
「テニスはもう出来ないけど生きれる。悪くいない提案だと思うッスよ」
それは最悪な選択
無残に無実に理由も知らず不条理に殺されるか
共に歩んできた仲間を殺した者について行くか
零崎唯識 は 不二周助 は 闇口リョーマ は 越前リョーマ は手を差し出す
それを手塚は―――…
「ついて行こう…」
血濡れた手を取った。
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