我が家に帰ると



「悪霊退散!悪霊退さぁぁぁん!」
「うふふ、ふふ。舞織ちゃんは可愛いなぁ!でもせっかくやるなら巫女服を着てしてもらいたいところだよ。境内で庭掃きをしてる姿なんて可愛いだろうなぁ素敵だなぁ」
「気持ち悪いですよぉ!」
「おっと危ないな」
「避けないでください!!」
「避けないと危ないじゃないか」

「……………」

どったんばったん。
暴れるようなこの音はマンションのある一室…というか私の部屋から聞こえてきた。念のためもう一度部屋番号を確認するとプレートに【204 左紀 幸織】と書かれている。私の部屋だ。
…まぁ誰の声なんかはわかっているけど。

「ただい、カンッ!

ドアを開けた瞬間左頬スレスレに料理包丁が飛んできた。
私を通り過ぎた包丁はそのまま背後の壁に突き刺さりビィンと震える。

「……………」

無言で迅速にそれを引っこ抜いて他の住民さんに見られる前にドアを閉めて鍵もかける。ここはいいマンションだから防音なってるけど念のため念のため。
…中は予想していた光景、フォークやらナイフやらお玉やらが乱雑にも転がっていた。ちょっとこれは荒らしすぎかな…片付けるのは誰なんだろう。


「………2人とも」

台所でぎゃいぎゃい声をあげている二人。
私の兄・零崎双識。
私の姉・零崎舞織。

「2人とも、うるさいよ」

包丁を片付けようと引き出しの前にいる二人に近付いたら聞こえたようでピタリと会話が途絶えた。ぎこちなく私の方を向く。
双識兄さんは「あっ」と顔を青ざめさせて舞織姉さんは泣きながら「幸織ちゃん!」と抱きついてきた。

「包丁を投げるべきはこいつですよぉ!」
「ええ!?いや物を投げ始めたのは舞織ちゃんだよ!」
「いーえ!そもそもの原因は双識さんが引き出しを物色してたからです!」
「えっ」

引き出しを物色って…と顔を引きつらせると舞織姉さんが場所を教えてくれた。舞織姉さんが不法侵入した時にはもう双識兄さんは不法侵入していて、クローゼットの下から2段目を開けていたらしい。え、そこって下着入れてるとこ…

「………」
「サイッテーですね」

さすがに双識兄さんにドン引きだった。え、いや本当に兄さんに下着チェックされたの?見られたの?ショックだ…

「つい出来心で!制服姿はよく見かけるし可愛いんだけど私服はどうなんだろうなー!って!出来ればサイズチェックして服(メイド服とか)をプレゼントしようかと…開けたら下着だったけど。いや下着でもサイズ見てプレゼン…」
「遺言はそこまででいいですか?」

ガッチャンと瞬時に銃を組み立てて銃口を向けた。家中に部品を仕込んでるからどんなものでも用意できるだよね。2人が荒らしてくれたおかげで弾とかも転がってるし。
M870を本気で構えたらさすがに双識兄さんは慌てだした。

「わー!本当に偶然開いちゃったんだ!ごめんよ!!」
「やっちゃえ幸織ちゃーん」
「こ、今度また好きなとこ連れて行ってあげるから!」
「M870って近距離向きなんですよ」
「ごめん!ごめんって!許して幸織ちゃん!!」


どったんばったん。


…と、ひとしきり騒いでから散らかった台所を片付けて、私と舞織姉さんはお茶を飲んで落ち着いた。やっと静かになった…。
ちなみに双識兄さんは舞織姉さんに「出て行くか隅で一言も喋らず大人しくするか」と迫られ玄関の狭い靴を脱ぐスペースで体育座りをしている。時々しくしくと泣き声が聞こえるけど…もう放っておこう。

あの後私はレミントンのM870を至近距離で一発ぽんと撃ってみた。もちろん試してみたでは済まされない大事だけど相手は零崎一賊長男の双識兄さん。世界中の警察や特殊部隊で使われる屈指の散弾銃であり私もカスタマイズしたこのM870を《自殺志願マインドレンデル》で両断してしまった。ショットガンも物ともしない。


「本気で幸織ちゃんが撃つとは私も思いませんでしたけど…」

呆れたようなに舞織姉さんも言う。
でも双識兄さんなら大丈夫って思ったんです。至近距離からでも。

「でもこれで双識さんも懲りますね!」
「そうだといいですね…」


私たちは双識兄さんを放ったままほのぼのとしてお茶を楽しんだ。


我が家に帰ると
 (いつもの静けさは皆無)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -