▼ 2017 12.15「あなたの安寧」

You only have to be honest to yourself and your own fate."
(あなたは、あなた自身とその運命に対し、素直になりさえすればよいのです)



I世の直系で]世候補でありながら幸福な、裏社会の足音を聞かずに生きた沢田綱吉。
彼を守るために生まれ、そして人知れず消えた少女の物語。


ルシア・イレックス

沢田綱吉が生まれて間もない頃、マフィア界有数のボンゴレには複数の後継者がいた。
その中で最も10代目に相応しいと言われていたのが、ルシアというまだ十代のうら若き娘だった。9代目や上層部からの信頼もあつく、類まれなる才気で9代目直属の部下としてボンゴレを動かしていた。

ある日ルシアは各地の剣士を次々に倒していくという銀髪の少年剣士に目をつけ、自らの護衛として依頼する。
少年剣士・スクアーロは権力が苦手だったため嫌々だったが、好きな時に剣士を招集し戦える条件を飲みルシアの護衛となった。スクアーロはルシアの計らいによってスクールに通い知識や教養を深めながら剣の腕を磨く。最初は性格が合わないことからぶつかりがちだったが次第に互いの良いところを見つけ、ルシアはボンゴレのボスとして、スクアーロは剣帝になるため互いの道を進みだす。
やがて、成長したスクアーロはヴァリアーの目にかかり、ルシアは剣帝テュールとの対戦を取り付け、スクアーロの道を支える。

無名であったスクアーロ将来性を見込み、道を開かせた影の立役者。
そんな「表」のお話。

ルシアとの契約を切り、ヴァリアーに入隊して5年。スクアーロは契約を切った直後にルシアが殺されたことを知る。彼女がどんな最期を迎えたのかはだれも知らない物語。


10代目候補として懸命にボンゴレに尽くした少女の末路はとても悲惨で、救いのないものだった。
9代目はルシアを継がせる気などなく、正当なる血統を守るための場繋ぎとして洗脳に近い形で動かしていた。またルシアもただの踏み台であることを理解した上で、名前も顔も知らない正当な後継者が現れるのを待っていた。これは仮初の玉座に座らされた少女の奮闘記。)

眩しいほど未来を見据え、生命力に溢れた同い年の彼の「先」を見たいと思い、手助けをしながら自らの人生を許される範疇で謳歌していた。
暗殺されかけることなど後継者として慣れている。時期がくるまで9代目に助けられスクアーロの救われながら玉座を守りつけが、ある日不運が起こり、ルシアは敵対組織に捕まる。
言葉にすることも恐ろしい非道の数々。それでもルシアは屈しない。ここで死んでしまえば、誰かがこの座につく。罪のない誰かが同じ目にある。だから死ぬ訳にはいかない。助けにきたはずのスクアーロは同様に捕まってしまい、共々九死に一生を得るが、ぎりぎりにボンゴレの救助で助かる。助かるがルシアは心に大きな傷を負う。スクアーロが知らない空白の時間に負った傷は理解されず、やがて二人の間に溝ができる。

だがルシアはスクアーロを輝かしい道へ押し上げると決めていた。ヴァリアーへ推薦し対戦の場を作り、明るい先へ歩いていく彼の背を見送る。

そして同時期、後継者ザンザスの勢力が強まったという。
そして同時期、何故か9代目は日本へ渡ったという。

誰によって屠られたのか誰も知らない。知ったとしてもなんの意味もない。彼女は決して本心を語ることなく傀儡として役目を守った。炎の弾丸が心の臓を貫くその瞬間まで。
決して救われることはないが不幸でもない人生だった。



時は流れ、ボンゴレ10代目に沢田綱吉という心優しい日本人が就いたという。
9代目の死後も正統にボンゴレのボスを担ったという。
彼はある日、アジトの地下深くで、心を失ったどこかI世にも似た女性と出会ったという。

物語が終わるまで、あとほんの少し。
救いは与えない。


「私の命が正しく貴方へ繋がるのならそれでいい。彼が誰よりも強く気高く生きられるのならそれでいい。…それでいい」

modoru
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