星の危機に現れる守護者



「こっち!こっち〜!」





道を進み、続いていた階段を上る。
すると階段の上で、大きく両手を振るユフィの姿を見つけた。





「あ、ユフィ!」





それを見たあたしは先頭を歩いていたクラウドも抜かし、階段を駆け上る。

そして「いえーい!」とユフィとハイタッチすると、傍にはティファとバレットの姿もあった。
ティファも「ふふっ」と笑いながら手を出してくれたから、ティファともパンッ!と綺麗にハイタッチ。





「おまたせ!」





ラストスパート。
エアリスも最後は駆け足で階段を上がり、やっと全員合流することが出来た。





「偵察はどうだった?」

「異常ナシ!ついでにマテリアも…ナシ」





クラウドが尋ねると、ユフィはそう答えてくれた。
最後はガッカリ気味だったけど。

そんな様子にバレットが軽く笑う。





「魔晄炉につく前にとっ捕まえたからな」

「ああ、まだ魔晄炉は行ってないんだ?」

「そーなのー!ねえ、早く魔晄炉行こう!黒マントたちはもう魔晄炉に行っちゃってるよ!」





魔晄炉へはユフィたちもまだ行ってないらしい。
それを聞くとユフィに腕を掴まれて、ぶんぶんと振り回された。

どうやらこの先がすぐ魔晄炉とのこと。

あたしたちは道を進み、全員で魔晄炉を目指す。
すると本当にすぐ、あの独特な色が道の先に見えてきた。





「わお〜!」

「おお…」





驚くユフィの声と、あたしの声が重なった。

見えた魔晄だまり。
建物の中にあるわけじゃなく、まるでダムのようにむき出しになっている魔晄。





「あれが…」

「コレル魔晄炉だ…」





クラウドの声に続くように答えたバレット。
バレットのその声は、やっぱりどこか重たそうな印象を受ける。

でも、これがコレル魔晄炉なんだ…。

はじめてみる景色。
あたしの中では、ちょっとした興味深さみたいな感情が湧いていた。





「ねえ、あの黒マントの人って、なんなの?」





魔晄炉内にも、黒マントの人たちの姿があった。
それを目にしたユフィは聞いてくる。

答えたのはバレットだった。





「神羅の犠牲者だ」

「へえ…じゃあ、アタシたち、ウータイと一緒だ」

「どういうこと?」





ティファが聞き返す。

ウータイ…。
神羅と戦争していた、遠い遠い…異国の地。

今は、停戦中…だよね。

正直あたしには、それくらいの知識しかない。





「ウータイはね、神羅にあちこち爆撃されて、街もみんなもボロボロにされて、その上、インチキな条約を押し付けられたんだ」





淡々と語るユフィ。
でもその端々からは、神羅への嫌悪を感じる。





「停戦はウータイも歓迎したんだろ?」





バレットが聞く。
するとその言葉に、ユフィはフンと小さく鼻で笑った。





「ジジイたちが勝手に受け入れたんだ。昔から国のこと全部決めてて、みんな大人しく従ってきたけど、こればっかりは不満爆発!そんな怒った国民が期待したのが、グレン大佐とその仲間たち。元ソルジャーで、脱走兵の三羽ガラス」

「初耳だ」





その話にはクラウドも驚いたようだった。

あたしは、そういう情勢の話って…正直感心薄く生きてきてしまったと思う。
ただでさえそうなのに、子供の頃は神羅の恩恵を受けて生きていたから、神羅にとって都合の悪い話は余計に耳に入りにくい生活を送ってただろう。

でも今は、それじゃダメだなって、ちょっと考え、改まってきてる気がする。

だからユフィのこの話も、ちゃんと聞こうって思った。





「錆びついた足枷みたいなしきたりをぶっ壊して、ウータイを元気にしてくれたんだ。そこに、大佐たちが信頼するスフール総督って人が合流して、革命が起きたってわけ。で、暫定政府が誕生したの」

「革命か。やるじゃねえか!」

「へへへー!」





バレットに褒められると、ユフィはちょっと照れたように笑う。

バレットはこういう、神羅に立ち向かうための勢力みたいな話、好きなんだろうなって思う。
多分どこか、アバランチにも通ずる部分があるんだろうし…。





「どうして、暫定政府なの?」





エアリスが不思議そうに尋ねる。

暫定政府。
確かに、どうして仮にしておく必要があるのか。





「本当の政府が、神羅との戦いが終わってから、国民全員で選ぶものだからって。だからね、アタシたちは暫定が取れるように、頑張ってるわけ。燃えるっしょ?」





そう言ってユフィは笑う。

今まで、ハチャメチャな印象が強かったユフィ。
でもここにきて、そんな彼女の中にある想いみたいなの、少し触れられた気がした。

いや、ユフィって普通に凄く強いし、何か目的があって動いてるのはわかってたけど。





「どーしたの、置いてくよ!」





タタッと先を駆け出して、くるりと振り返り手を振るユフィ。

あっけらかんとしてる。
でもきっとそれは、それがユフィにとって当たり前で、今始まったことじゃない話だからなのだろう。

こうしてあたしたちはコレル魔晄炉を進んだ。





「ほら、来て来て!」





一番に進み、手招きしたユフィ。

コレル魔晄炉は壊れている。
道のいたるところが崩れており、そこから覗くと魔晄だまりがよく見える。

…落ちたら一巻の終わり、かもしれない。





「ねえねえ、これ、全部魔晄なの?」

「ああ」

「じゃあ、ここにはすんごいマテリアがあるんじゃない?どっひゃ〜ってびっくりするようなマテリア!」





この青いすべてが魔晄。
頷いたクラウドに、ユフィはひとりはしゃぎだす。

どっひゃー…ねえ。

でもその時、魔晄の中からなにかブクブクと泡が出てきた。





「なになに!」





ユフィは身を引いて、クラウドの腕にしがみつく。

あ、ちょっと羨ましい。
って、そんなお馬鹿なこと考えてる場合じゃないのはわかってます、はい。

いやでも本当何…?
魔晄の中に、なにかいる…?

あたしたちはその泡をじっと見つめる。
それはどんどん大きくなって…。

するとその瞬間、バシャッ!!!と、とんでもなく巨大な生物が魔晄の中から飛び出してきた。





「っ…!」





あたしは思わず息を飲んだ。

見たことのない、大きな…モンスター…?

それは空中で体を捩じると、また再び魔晄の中にバシャンッ!!!と戻っていく。
大きな魔晄のしぶき。

うっ…かかる…!

あたしは目を細め、そのしぶきを防ぐように顔を腕で隠した。





「どっひゃ〜!!」

「今のなんだ!」






驚くユフィの声と、この地に詳しいバレットも動揺したように言う。
どっひゃ〜言うたね…。

するとその疑問に答えてくれた声がひとつ。





「ウェポンだ」





レッドXIIIの声。
その声は、ユフィやバレット達とは違う驚きの色が滲んでいた。

まるで驚きを隠せないような、そんな感じの声。





「星の守護者…。星に危機が訪れると出現すると言われている。宝条の憧れのひとつだ」





ウェポン…。
星の、守護者…?

じゃあ、あれは…モンスターとは違うの?

宝条博士の憧れって…それつまり、相当珍しいものってことだよね?

あたしは再び魔晄に目を向ける。
でももう、その姿は確認出来ない。





「ねえねえ、見た?体の中に、すんごくでっかいマテリアあったよね!」





そんな中、ユフィはまたひとりはしゃいでいた。

すんごいでっかいマテリア…。

確かに体を捩じった時、お腹の部分に何か大きな球体が見えた。
あれ、マテリア…?確かに言われたら、そうなのかも。





「なんとかして捕まえらんないかな〜?」

「星の守護者を捕まえる?」





また魔晄だまりギリギリに近づき、覗き込むユフィ。
そんな姿を見たレッドXIIIはまるで信じられないものを見るかのような目を向ける。

でもユフィは「え?」と不思議そうにしていた。





「あんなおっきなマテリア、欲しくない?あれ、ぜーんぶアタシのものだよ!」

「いや、いつから君のもの…」





相変わらず物欲スゲエな…。
思わず突っ込んでしまう。

今もどこかなどこかなとウェポンを探すユフィ。





「じゃあここでゆっくり考えろ。俺たちは先に行く。ナマエ、行くぞ」

「え」

「その言い方!!」





クラウドはそう言い残して先を歩いて行く。

あたしは突っ込んだ時、ユフィの近くにいたから…。
ユフィはくるっと振り返り、クラウドの背中を指さしてムキ―っと怒ってた。

そしてユフィは最後に再び魔晄に向かって呼び掛ける。





「また来るよ、ウェポンちゃん。それまで元気でね!くふふー!」

「ウェポンちゃんて…。ほら、ユフィ、本当に置いてかれるよ。早く行こ」

「はいはーいと」





あたしはそんなユフィを少し待ち、そして駆け足で皆を追いかけた。





「ウェポンってのが現れるほど、神羅が星を追い込んだってことだよな。つまり、アバランチの主張は正しかったってわけだ。なあ、そうだろ?」





追いつくと、バレットはそう口にしていた。

確かにレッドXIIIの話だと、星の危機に現れるものだって言ってたから…。
でも…。





「それだけ、なのかな…」





あたしはそう零していた。

すると、予想以上に皆の視線が集まる。
ちょっと「う…」となった。

いやでも、だって多分…クラウドの話を聞いてると…。





「ああ。危機の原因は、それだけじゃない」

「セフィロス、だね」





クラウドとティファはそう返してくれた。
そしてその言葉にエアリスも「うん」と頷く。

神羅ビルでエアリスは言っていた。

切っ掛けは神羅。
でも、星の本当の敵は…他にいる。





「行こう、星を助けないと」





エアリスはまっすぐ前を見つめ、歩き出す。
バレットも駆け足で進む。

あたしたちは詳しいバレットの案内を受け、更に魔晄炉の奥へと進んだのだった。



To be continued


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