仲間になってあげる



コスタで迎えた朝。
バカンスは終わり、また旅が始まる。

あたしたちは旅立つ前に、ジョニーと少し話していた。





「世話になった」

「そんな、俺の方こそ。アニキたちは、これからどうするんですか?」

「黒マントを追いかける」

「あいつらなら今朝、コレル山の方に行っちまいましたよ。怪我してる奴もいたんで、止めようとしたんですけど」





クラウドから今後の予定を聞いたジョニーは、黒マントたちが街から出たことを教えてくれた。
そしてその行き先を聞くと、バレットの表情が少し曇る。





「コレル山…」





その呟きは、どこか気重そうな。

コレルって、何かあったっけ…?
ん?そういえば、バレットの故郷がコレルだって聞いた事あるような…。





「俺たちも行こう」





クラウドが言う。
まあ、なんにせよ黒マントたちは追い掛けなくちゃならない。





「お気をつけて行ってらっしゃいませ、お客様!どうぞ、よい旅を」





ジョニーに見送られる。
こうしてあたしたちはシーサイド・ジョニーを発つことになった。





「みなさ〜ん!アタシを忘れちゃいませんか?」





ホテルを出て街の方に向かおうとした時、上の方から女の子の声が聞こえてきた。

え、なに、どこ。
見上げると高い岩の上。

こちらを見下ろしているユフィの姿。

…あの子、あんなとこで一体なにしてらっしゃるの…?





「いよ〜…はっ!!」





ユフィはその場に煙玉を投げつける。
煙に隠れて姿は見えなくなったけど、騒がしい声だけは聞こえていた。





「ある時は、凄腕マテリアハンター!ある時は、華麗なる暗殺者!ある時は、お助け美少女忍者!はたして、その正体は…みんな大好き、ユフィちゃんだよ!!」





晴れた煙と共に、ポーズを決めて目の前に現れたユフィ。

おー、これも忍術?すごいすごい。

あたしはそう思ったけど、対するクラウドの反応は物凄く冷めていた。





「行くぞ」

「ちょっと待て〜い!!」





無視して先を行くクラウド。
ユフィはそんなクラウドを慌てて追いかけ…いや、むしろ追い越して目の前に立った。





「そこのツンツン頭、アタシと勝負しろ!」





ビシッと指さし、戦いを申し込んでくる。
でも別に勝負がしたいわけじゃなくて、その理由は別のところにあるらしい。





「アタシが勝ったら、アタシの手下になれ!その代わり、万が一あんたが勝ったらこのアタシが仲間になってあげる!どうだ!」





朝から元気だなあ…。
あたしはちょっと欠伸が出た。

まあでも、ユフィ、アタシを仲間にしない?って言ってたもんね…。

どうやらここに来て直談判に来たらしい。
いやなんかすんごい回りくどい言い方してるけどね。





「やめておく」





クラウドは短くそう返した。
その答えにユフィはちょっとむっとする。





「ム、逃げる気〜?勝負しろ!しろったらしろ!シュシュシュッ、どうしたどうした?アタシの強さにビビってんだろ!」

「まあな」

「やっぱりそうか〜!まあ、アタシの実力を知ってれば当然か」





ちょっと気を良くしたユフィ。

ユフィ…それ、クラウド面倒くさがってるだけだよ…。

でも、そんなこと気にしちゃいない。
ユフィは気を良くしたまま、更に話を進める。





「ここで、みなさんに朗報で〜す!そんなビューティー忍者であるアタシが、仲間になってあげます!どう、嬉しいでしょ?」

「別に」





クラウドの返事がさっきからとんでもなく適当である。
一方でユフィはテンション高いからなんとも対象的というか。





「あっそ、フーンだ!勝手にしろ!」





別にと言われたユフィは拗ねた様にその場から去って行く。

あれ?諦めた?
と思ったのも束の間、またすぐに戻ってきた。





「やっぱり、ちょっと待った〜!ねえ、ほんとに、ほんっとにアタシを仲間に誘わなくていいの?」

「誘わない」

「なんでだ〜!!」





バタバタ暴れる。

ああ、本当に朝から元気だ。
あたしは2度目の欠伸。

そろそろレッドXIIIに「昨日何時に寝たんだ…」と突っ込まれた。
いやそんなに夜更かししたつもりもないだけどね…。

昨日もちょーっとクラウドとクイーンズ・ブラッドやったけど、そのあとわりとすぐ寝たもん。





「いいもん!そういうことならほんとに行っちゃうからね?ほんとの、ほんとだよ!」





どうしてもこっちから仲間になってくださいユフィちゃん!って言わせたいらしい。
でもその作戦、クラウドにはどう考えても逆効果だと思うんだよなあ…。





「ご自由に」





現にクラウドはさらっとそう返した。
流石のユフィもここでこのままじゃあかんと察したらしい。





「冗談!ジョーダンだって!ねえ!仲間にしてよお〜!」





手を合わせて、遂にお願いしてきた。

まあでも、クラウドもユフィの戦闘能力は認めてると思う。
ルーファウス襲撃時の的確さ、宝条博士の機械を潰した忍術。

ただ多分、このテンションが…合わないだけ?

…あ、あたしも気を付けよう。
クラウドに面倒臭いと思われたくは無い…。

クラウドは「はあ…」と息をついた。





「ついて来たいなら勝手にしろ」

「ほんと?やった〜!」





やっと出たお許しにユフィは万歳ー!と喜ぶ。
その嬉しそうな顔にティファはくすっと笑った。





「よろしくね、ユフィ」

「えへへ!」





いつもながら、ティファは優しいのである。

でもユフィはきっと星の命とかは今のところ関心ないだろうし、そうするときっとユフィはユフィの目的があるわけで。
バレットはギミックアームを見せながら軽く脅す。





「少しでもおかしな真似したら、ジュノンの大砲に詰め込んで、ウータイ目掛けてぶっ放してやる」

「こわ!でも、りょ〜かい!ユフィ・キサラギ!目一杯がんばりま〜す!」





こうして何かと縁のあったユフィが、ここに来て遂に仲間になった。

クラウドやバレットはちょっと面倒くさそうだけど、あたしは結構嬉しいかな。
わりとここまで話してて楽しいし。

仲間であると同時に、いいお友達が出来ました、みたいな?





「ユフィ、昨日、助けてくれてありがと。忍術凄いじゃん。あんな大技、ちょっとびっくりしたよ」

「へへへー!ま、アタシに掛かればあんなもんよ!ナマエ、結構律儀じゃん!」

「うん、また次に会えたらちゃんとお礼言おうって思ってたからね」





あたしはユフィに昨日のお礼を改めて伝えた。

いや本当、次に言おう言おうって思ってたしね。

ユフィ、終わったらすぐ煙玉で消えちゃったから、ちゃんと言えてなくてもぞもぞしてたし。
うん、これであたしもすっきりした!

まあそんなこんなで、新たな仲間を加え、あたしたちはコレル山を目指したのだった。





「あっ、山の入り口、あれかな?」





目を凝らして先を見る。
コスタ・デル・ソルを出て歩くことしばらく、コレル山の登山口が見えてきた。





「動いていないようだ」





レッドXIIIが脇にあるロープウェイ乗り場に目を向ける。
でもどうやらそれは動いていないと。

となれば、足を使って登っていくしかない。





「登れるかな」

「よゆ〜!よゆ〜!景色を楽しめばいいんだよ!」





山を見上げ不安そうにしたエアリスに、気楽に返すユフィ。





「なんにもねえよ」





そのやり取りに、どこか冷めたようにバレットは言う。





「あるのは、ぶっ壊れた魔晄炉だけだ」





ぶっ壊れた魔晄炉…。
コレル、魔晄炉?

コレルにも魔晄炉ってあったんだっけ。





「あっ、そっか。バレットはこのあたりに詳しいんだよね」





コレルが故郷だと聞いたことのあるティファが反応する。

でも、地元だってのにバレットは何も語らない。
ただ大きく息をついて、憂鬱そうな顔をするだけ。





「行こうぜ」





バレットはクラウドを促す。

…バレット、故郷でなんかあったのかな…。

もしそうだとして、流石に今聞くことではないだろうと思うからとりあえず聞かないけど。
でもなーんかちょっと気になる感じだ。

クラウドは軽く頷き歩き出す。
するとそこにテテッとユフィが駆け寄った。





「ねね、マテリアは、魔晄が固まったものだって知ってる?」

「ああ」

「つまり、魔晄炉があるってことはマテリアも…ムフフッ!」





変な笑い方をするユフィ。

マテリア…。
なんかユフィって、マテリア大好きだよなあ…?

もう目がありませんっていうイメージ。





「よっしゃ!張り切っていこー!」





テンションが上がったユフィはクラウドを前に突き飛ばす。
クラウドがよろけるほどの勢い。

お、おおう…。





「クラウド、だいじょぶ?」

「ああ…」





なんか本当、結構な勢いだったから声を掛ける。
クラウドは別に平気だと頷いた。

まあとりあえず、ここからはコレル登山というわけで。

あたしたちは入り口をくぐり、コレル山に登り始めた。



To be continued


一番好感度上がる選択肢選びコレじゃないんですけどクラウドの「ご自由に」が好きすぎて。(笑)


prev next top



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -