シーサイド・ジョニー
ジョニーに案内され、奴のホテルに向かうことになったあたしたち。
歩いて歩いて、辿り着いたのは街の外れの方。
「みなさ〜ん!俺の城、シーサイド・ジョニー!」
ジョニーは高らかにそう言った。
見上げた、目の前の建物。
それは木造で、藁の屋根で…って、まあそれはいいんだけど。
…ぼ、ボロボロ…。
あ、どうしよう、褒めるところが見つからない…。
そんな感じの、建物だった。
「そっか…。うん、いいね…」
「だろ、だろ?」
優しいティファは当たり障りなく褒める。
いやでも何がいいか言わないあたり…。
ま、まあ…雰囲気がある、といえば…ある、のか…?
流石にあたしも茶化しはしない…。
だって、相場の半額とはいえ、大金は叩いてるんだろうし…。
うん…あたしは何も言わなかった。
「シーサイドのわりにはシーが見えねえぞ」
「見るんじゃなくて、ほら。きたきた、潮の香り!!」
バレットの突っ込み。
確かに振り返っても海は見えない…。
でもジョニーはどこまでも前向きだ。
見るんじゃなくて、嗅げと…。
「さあ、どうぞ!」
ジョニーは中にあたしたちを招く。
まあ…宿があるだけ、マシ…なのかなあ?
とりあえず案内されるまま、あたしたちは上がらせてもらうことにした。
「ようこそ、シーサイド・ジョニーへ!お部屋は、ティファが101、エアリスが102、ひとつ飛んでナマエが104で、野郎のみなさんはまとめて103号室てことで」
部屋割りは、女性陣には個室を用意してくれるらしい。
それはまあ…有難いとは思うけど。
「料金は?」
ティファが聞く。
するとジョニーはニッと笑い…。
「ティファのためなら、大サービス!今日は…」
いくらだ、と思ったら、ジョニーのポケットから電子音が鳴った。
それを聞いたジョニーはハッとした顔をする。
「…っと、すいません。俺、カポノ市長に呼ばれてて…。今日はみなさんの貸し切りなんで、適当にくつろいどいて下さい。あ!ビーチへ行くならちゃんと着替えてくださいね!その物騒なのも持ち込み禁止ですから!」
クラウドやバレットを見てそう注意するジョニー。
ビーチに武器は持ち込み禁止ですか。
って、ことは…あたしの剣もダメかな。
あたしはそっと、腰に差している自分の剣に触れた。
「くう〜…ティファのリゾートウェア、この目で見たかったぜ!」
カポノ市長に呼ばれてるというジョニーは、最後にそう言い残してその場を離れていった。
うーん、結局料金いくらなんだろう。
まあ顔見知りだし、そうふっかけた値段は言われないだろうから、いいのかな。
「シャワー、行く?」
「うん、そうだね」
「だねー」
一段落したところで、エアリスが声を掛けてくれる。
ティファとあたしは頷き、とりあえずここで一時解散…ということに。
「じゃあ、のちほど」
「のちほどっていつだよ?」
「まあ、こういうところですから、ゆるゆると」
ティファとバレットのやり取り。
うん、ゆるゆるだ。
ここらでバレットも「負けた負けた」と折れていた。
まあ、ここまで来たらもう、でしょ。
あたし、ティファ、エアリスは「あとでねー」と手を振り、それぞれの部屋へと向かう。
えーっと、あたしは104号室だっけ。
また一番奥ですかーっと、ちょっとだけアンダージュノンを思い出して笑う。
そんなことを思いながら、あたしは104号室の扉を開いた。
「んっと…ひとまずシャワーかな…」
剣を置き、レイも外してベッドに腰を下ろす。
…ギシッとちょっと嫌な音がした。
大丈夫か…。底抜けないよね、これ…?
そんな不安を覚えつつも、立ち上がってシャワーに向かおうとする。
その時、壁の向こうから声が聞こえた。
「悪いな、留守番だ」
クラウドの声だった。
そういや、男性陣は103号室だっけ。
つまりは隣の部屋。
まあこの感じなら、隣の声くらい聞こえるかも。
「クラウド?」
気付いてくれるかな?
そう思い声を掛けてみると、返事は返ってきた。
「ナマエか?」
「あ、聞こえた!ふふふー、正解でーす!」
さっきより声が近づいた。
どうやら壁際まで来てくれたらしい。
あたしも、壁に背中を寄せている。
顔は見えないけど、すぐ近くにいるのがわかった。
「留守番って言ってた?誰がお留守番なの?」
「剣だ。あんたも同じだろ?」
「ああ、なるほど。うん、相棒さんにも、たまには休息を、だね」
ふたりとも、剣はしばしお留守番。
なるほどなあ〜、とあたしは笑った。
「シーサイド・ジョニー…あはは、まあ予想通り、だったかなあ」
「…そうだな」
「ま、今日のところはお世話になりますかー。…でもジョニー、大丈夫なのかな…。借金してるし…カポノ市長に呼ばれてるって…もしかしていいように使われてる?」
「かもな。もしかしたら市長は曲者なのかもしれない」
「うーん…なんかヤバそう…」
「気になるか?」
「まあ…知らない奴じゃないしね」
ジョニーはカポノ市長に感謝してるっぽかったけど、正直引っかかるよね。
この物件を売りつけ、借金を負わせる。
さっき呼ばれてたのも…なんとなく。
まあ、あんまり気にしすぎてもしょうがないんだけど…。
本当のところはよくわからないし。
「そういえばクラウド、今ひとりなの?」
「ああ。バレットは水兵の格好に着替えて出ていった。レッドは…部屋の外でくつろいでたな。風が気持ちいい良い宿だって言ってたぞ」
「まじか…。ていうかバレット…あのセーラー服、相当気に入ってるね」
「だな。連絡船の中でもしばらくは着たままだったしな」
交わすのは、いつものなんでもないやり取り。
クラウドと話すのは、あたしはいつだって楽しくてたまらない。
でも今の、この壁越しの会話はまたちょっと…いつもと少しだけ違った、不思議な気分。
「クラウドもコスタ観光行くんでしょ?」
「まあな。ナマエも、もう行くのか?」
「んー、あたしはとりあえずシャワー浴びてからかな」
「そうか。じゃあ、先に行ってる」
「うん!あとでね!」
「ああ」
こうしてあたしは壁から離れ、シャワーに向かった。
シャワーは…ちょっと出が悪かった。
いや、浴びられないことはないから、大丈夫だったけど。
でも、この辺もなんとかしないと…集客は難しいんじゃないかなあ。
そういうのにもお金色々掛かりそうだけど…。
そうしてさっぱりしたところで、あたしは部屋を出る。
クラウドとバレットは、もう街に行ってるんだよね。
レッドXIIIは、どうしたんだろう?
ティファとエアリスは、たぶんまだいるよね。
シャワー浴びるって言ってたし。
それなら、ふたりに声をかけて遊びに繰り出そうか!
そう考えた時、ガチャ…と、男子部屋の扉が開いた。
「あれ?ナマエ!」
「えっ、エアリス!?あ、レッドも…。って何故そこから…?」
中から出てきたのは、ひらひら手を振るエアリスと、その後ろに続くレッドXIII。
さっきクラウドはレッドいないって言ってたけど、どうやらまだ出掛けてはいなかったらしい。
いやそれはいいとして、何故にエアリスが男子部屋?レッドと何か話してたのかな?
そう不思議に思っていると、エアリスは苦笑いしながら教えてくれた。
「私の部屋、シャワー、壊れちゃって…。だからレッドに見張りしてもらって、こっちのシャワー借りてたんだ」
「え!壊れたの!?まじか…」
「ナマエの方は、大丈夫だった?」
「んー…あたしの方もちょっと出は悪かったけど…浴びるには問題なかったかなぁ…」
まさかのぶっ壊れ…。
ジョニー…これはまずいぞ、ジョニー。
奴の行く末が更に心配になる…。
まあひとまず、エアリスは準備完了らしい。
「ま、じゃあ…ティファも誘って皆で街行ってみる?」
「うん!私達、そのつもりで部屋出てきたんだ。ね、レッド」
「単独行動はやめた方がいい。出掛けるならナマエやティファを誘えと私が言ったんだ」
「そっか」
と言うわけで、まだひとり出てきていないティファの部屋の前に向かう。
エアリスがコンコンとノックして、あたしたちはティファを呼んだ。
「ティファー」
「外、行く?準備、どうかな?」
「うん、もうちょっと!」
中から返事が聞こえた。
そして扉の前で待つことしばらく、ティファが中から出てきた。
「おまたせ。街で素敵な服、見つけなくちゃね」
「それから、ビーチ!」
「へへへ!お待ちかねだねー!」
全員揃った。
これで出掛ける準備は万端。
「「「しゅっぱ〜つ!」」」
3人で声を揃える。
こうして女性陣とレッドXIIIもコスタの街へ繰り出したのでした。
「コスタ〜!お姉さんたちは、これからビーチへ?」
街に出ると、すぐにフラダンサーさんの姉さんたちに声を掛けられた。
今更だけど、この街の挨拶は「コスタ〜」らしい。
「リゾートウェアをお探しなら、コスタでアモールに参加してみない?」
どうやらリゾートウェアじゃないのを見て声を掛けてくれた様子。
コスタでアモール。
なんでも今、コスタでは思い出づくりを後押しするゲームイベントが開催されており、そのゲームをクリアするとウェアのチケットが貰えるのだとか。
普通に面白そうだし、こうなりゃ参加するしかない!
というわけで、あたしたちは貰ったイベントチケットを手に、いくつかのゲームにチャレンジした。
「で、無事にウェアのチケットを手に入れたわけですが…」
「ほらほら、ナマエ!選ぼ選ぼ!」
無事にゲットできたウェアのチケットを眺めていたら、ぐいっとエアリスに背中を押された。
ビーチに行くためにはドレスコードがあり、リゾートウェアじゃないと入れない。
選べるウェアはたくさんあるらしい。
…これは、どちゃくそ悩むやつじゃないですか…。
とりあえずいくつか候補を選びながら、順々に見ていく。
そんな中ひとつ、パッと目に留まったウェアがあった。
「これ…」
あ、可愛い…。
一目見て、そう思ったリゾートウェア。
手に持って眺めていると、ひょこっと両サイドから覗かれた。
「あ、ナマエ決めた?わ、それにするの?可愛い!」
「うんうん、色も綺麗!それに、ふふ、ナマエ好きそう」
ティファには趣味がバレてる模様。
ティファはあたしの手からそのウェアを取り、そしてあたしの体に合わせてくる。
「うん、良い感じ。似合ってるよ。ね、エアリス」
「うん!すっごくいい!」
「そ、そう?」
いいねいいねと勧めてくるエアリスとティファ。
そんなふたりの言葉に乗せられて、あたしはそのままそのウェアを手に更衣室への入っていた。
「うーん…」
着て見て、鏡で確認。
改めて見ても好みだなあ、可愛いなあ、と思う。
うん、いい感じ。
そういうのを着ると、やっぱりテンションは上がるものだ。
…うん、我ながらいいのが見つけられた気がする!
ティファとエアリスはどんなの選んだだろう?
あたしが一番に決めちゃったから、ふたりの水着は見られてない。
うーん、ティファとか凄そうよな…。
なんたってあのグラマラスバデー!!…だし。
エアリスもほっそりしてるしさあ!?
それに比べてあたしと言えば…。
いやね、この旅をはじめてから…こう、色々、行く先々で買い食いしてるよなぁ…と。
いや実際、最近食べ過ぎ…?とかここに来て急に過る不安…!
だってそのエリア限定とか言われたら気になるじゃん!!
水着はツーピースタイプ。
まあ…お腹とかの露出は、そこそこしてる…。
いや…ま、平気っしょ。
増えてない増えてない。
「…大丈夫大丈夫大丈夫」
まるで呪文。
いやうん、やめた。
大丈夫大丈夫!
だって戦って動いてるし!!
そうだよ、旅はじめてから運動量は確実に増えてるもん!
めっちゃ動いてるよあたし!?
うんうん、変なこと考えるのはやめましょう!!
「…ふん…っ」
でもとりあえずちょっとだけ、お腹は引っ込めてみたりした。
To be continued
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