街まであと少し



はじまったばかりの旅。
カームを目指すにあたり、設けた休息の時間。

クラウドは瓦礫に背を預け、バレットはパイプに腰を下ろす。
レッドXIIIは寝そべり、眠るかのように目を閉じていた。





「エアリスー。もちょっと腕上げた方がいいんじゃない?ね、ティファ」

「うーん、そうだね…。そうそう、そんな感じ」

「うん!」





その一方。
あたし、ティファ、エアリスは道路に出て見やすいポーズを考えていた。

ポーズとは、腰に手を当てて、もう片方の腕は伸ばして親指を立てる。

つまり、あわよくば車を捕まえられないかな、と。
休息の間、ヒッチハイクを試してみることにしていた。





「エアリスエアリス、腕落ちてきてる」

「え!嘘!」





あたしはポーズを決めるエアリスの傍にしゃがみ、その姿を眺める。
エアリスは腕の高さの試行錯誤を繰り返していた。

でも、今のところここまで車って一回も見てないんだけど…通るのかな。

ヒッチハイクは車が通ってくれないことには話にならない。





「ん…?あっ」





でもその時、遠くを見つめていたティファが何かに気が付いた。





「うそ、来た!」





その声にあたしたちはピクリと反応する。

見れば確かに自動車の音。
あたしたちはパアッと顔を合わせると、並んで立って3人でポーズを取った。

お願い!見て!止まってくれー!

心の中で祈る。

その瞬間…。





「うらああああああ!!!」





急にバレットが前に飛び出してきて、両手を上げて車を無理矢理止めてしまった。

ち、力技…。

突然の大男の登場に、車は急ブレーキで止まる。

な、なんか…ごめんなさい…。
まだ見ぬ運転手さんに、同情と申し訳ない気持ちでいっぱいになった。





クエー、クエー。





チョコボの鳴き声が響く。

通りかかったその車は、荷台にチョコボを乗せたトラックだった。
運転手は、グリンという名前のおじいさん。

ちょっと狭いけど、3人ならいけそうだとティファ、エアリス、あたしは座席に座らせてもらえた。
男性陣はチョコボと一緒に荷台の上。





「あっ、すみません…」

「いやあ、ついてるねえ」





ガタンと揺れて、ティファがおじいさんの肩にぶつかってしまう。
でもおじいさんは御機嫌だ。

バレットは荷台でチョコボに突かれキレていた。

クラウドとレッドXIIIは非常に静か。
レッドXIIIとかもしかしたら寝てるのかもしれない。

あたしは揺られながら、なんでも屋の手帳を取り出した。

なんでも屋の仕事、ミッドガルの外でもするのかな。
外でも依頼、あるかな。

ちらっと荷台に通じる小窓に視線を向ける。
つんつんの金髪の先だけ見えた。





「ありがとうございましたー!!」





おじいさんの行き先はカームじゃない。
途中まで乗せてもらって、分かれ道で下ろしてもらう。

あたしは去って行くトラックに大きく手を振った。

でも、ちょっとタイミングが悪い。
降りた矢先、空模様は悪く、ぱらぱらと雨が降り始めた。





「雨!屋根、ないね」

「平気なのか?」

「うーん。あれ?急に不安」





クラウドがエアリスを気遣い、話す声がする。
あたしはそれを聞きながら、フードを頭に被った。





「そりゃ、腹が減ったせいだ。急ぐぞ」





バレットは先を歩き出す。

多分これはしばらく止みそうにないかも。
ゴロゴロと雷まで鳴り出した。

皆、バレットを追って歩き出す。





「珍しいな、フード」

「ん?ま、一応ね」





クラウドに声を掛けられた。

どうやら被ったフードが目に留まった様子。
あたしはすっぽりしたそれを少しずらし、小さく笑った。





「へへへ、似合う?」

「ああ」

「えっ」

「悪くない。雰囲気、結構変わるんだな」





ふざけて言った。
でもクラウドが普通に頷くから、ちょっと面を喰らってしまった。





「そ、そっか」





フードの両脇を押さえる。
すっぽり、ちょっと顔を隠すように。

あたしは話題を探す。





「もし、旅のはじめから風邪ひいたりとかしたらシャレにならないよね」

「ああ。笑えないな」

「でもだいぶショートカット出来たよね」

「ふっ…歩き通しにならなくてよかったな」

「切実だね」





歩くと、ぱしゃっと水が跳ねる。

どんどん強くなる。
これは本当に急がないとね。

カームまで、あと少し。

あたしたちの旅は、まだはじまったばかりだ。



END


元のマイヒーロー(原作の方)ではフードある設定にしてたなぁと思って。(笑)
みんなに引っ張られて首絞まる!!って言うのをやりたかっただけのやつなんですが、折角なのでいれてみました。


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