きみへの想い | ナノ

▽ 土のスカルミリョーネ


セシルをパラディンにするため、また究極の黒魔法メテオを求めて山頂を目指した試練の山。

あたしたちは遂に、その山頂に辿り着きました。





「わお、これはなかなか絶景ですなあ!」

「なんか言い方年寄りくさくね?ナマエねーちゃん」

「パロム、うるさいよ」





流石は山頂。
そこから見える景色はなかなかのもので、きゃー!と感動してたら、おちびに何か言われた。

ぴちぴちの女の子に向かってなんたる言い草!
じろっ、と睨んだら、逆の方からくいくいっと服の裾を引かれた。





「ん?どうしたの、ポロム?」





見下ろせば、服を引いていたのはポロム。

まあそりゃポロムしかいないよな、と思いつつ首を傾げる。
するとポロムはどこか用心するような声色でこう告げてきた。





「…今、何か声みたいなものが聞こえませんでしたか?」

「え…、声?」





特に心当たりは無かった。
でもそんなこと言われると気になる。

きょろきょろ、と辺りを見渡してみるものの、特に何も無い。
しいていうなら、セシルとテラさんがしっかり山頂を調べてる。

…うん、景色に感動するのも程々にしないとね。





《フシュルルル…》





……!

手掛かりを探すの、ちゃんと手伝わなきゃ。
その足を動かそうとしたその時、ぞわっ、と物凄い嫌な気配がした。





「あ、また…!」

「ポロム、これ?」

「はい!」

「何だ今の?!」





不気味な声と嫌な気配。
ポロムが感じたのはコレらしい。

今回はあたしとパロムも察知出来た。





「セシル!」

「ああ!僕にも聞こえたよ!」





なんかゾクゾクする。
これ、なんかヤバい感じかも…。

そう思ったあたしはすぐにセシルに呼びかけた。

するとセシルやテラさんも気がついていたらしい。
ふたりともこっちに戻って来てくれて、背を守るように5人で固まった。





「邪悪な気配が!?」





テラさんが杖を手に目を凝らした。
意識を尖らせて嫌な気配を追っていく。





「嬉しい…嬉しいぞ…お前らを葬る事が出来て…」





すると、そこに見つけたのは茶色のローブを纏った何か。
顔は…ローブでよく見えない。

嫌な気配の正体はアレみたいだ。

…ていうか、葬るって…すっごい物騒な単語聞こえたんですけど。





「何者だ!?」





セシルが前に出て剣を構えながら叫ぶ。
すると奴はクツクツ笑いながらその問いに答えた。





「我は…死の水先案内人…。…ゴルベーザ様の四天王…土のスカルミリョーネ」





ぴくり。
その場にいる全員が反応した。

それは、今奴が名乗った名前にある。




「ゴルベーザ…」





あたしは考える様に呟いた。

こいつ、ゴルベーザって言った。
ゴルベーザ四天王…。

つまり、敵…!





「セシル!伏せて!」

「!」





敵なら先手必勝!
それに越したことはない。

あたしは庇う様に前に出てくれていたセシルに声を張り上げ、そして放った。





「ファイガ!!」





魔力は温存して来た。

ゴルベーザの名前を出された時点で此処が使いどころに決まってる!
ていうか他にこれ以上の使いどころない!

だから思いっきり魔力を込めて炎を放った。





「グッ…!!」





先手必勝は効果あり。
放ったファイガは見事そいつに命中した。





「ううっ!躯が崩れていくううっ!!」





ざらざら…、
バサリ、とローブを揺らし膝をついたスカルミリョーネはいとも簡単にその姿を消した。





「…え、なんだよ、もう終わり?」





少しの沈黙の後、スカルミリョーネの消えた場所を見ながらパロムが呆気にとられた様に口を開いた。





「ナマエ、君、いつのまにそんな強く…?」

「え!さ、さあ…?」





セシルに聞かれてこっちが焦った。

え、いや、だって…思いっきりファイガぶっ放しといて何だけど、確かにちょっと呆気なさすぎというか…。

あれ、あたし…自分でも気づいてないくらい目茶苦茶強くなってたの?





「気配は…消えたかのう…」





テラさんが髭を撫でながら、また辺りを見渡す。

うーん…。
確かに超呆気なかったけど…気配も感じられない…。

やっぱ…あたしの魔力、天才的!…みたいなこと?

おおおお!
そうだったらカイン褒めてくれるかな!

我ながらオメデタイ頭だと思ったけど、うん、いいじゃないか。
カインが戻ってきたら褒めてもらおーっと。





「とりあえず気配は消えたみたいだから…また、手掛かり探してみようか。向こうに気になる碑石があるんだ」

「あ、うん」





セシルが指さした先、そこには白い碑石が立っていた。

この山頂、他には特に目立つモノも無い、か。

ゴルベーザが手下を用意してたって事は、此処ってやっぱり何かあんのかな?
まあ…それがものすごーく弱っちかったとしても…。





「じゃあアレ、調べてみよっか?」





碑石の方に歩きだすセシルの背中にあたしはついて行った。
でもそうして足を踏み出した瞬間、背後からまたゾクッとした感覚が走った。





「…フシュルルル…」

「っ!」





バッと振り返った。

でもそこにいたのは、さっきのローブの奴じゃなかった。
いや、気配は似てるから…その言い方はちょっとおかしいのかもしれない。

でも、違った。
ものすごーく、嫌な方向で…。




「い、生き返ったのかぁ!?」





パロムがドン引きしたように叫んだ。
でも気持ちは超わかる。

フシュルルル…の声に、完全な確信を得た。
確実に目の前にいるのはさっきのスカルミリョーネだ。

でも、ローブは纏って無い。
そしてさっきの何倍もゾクゾクする。

て言うか…説明するのも恐ろしいというか、そんなおどろおどろしい…嫌な姿をしてるっていうか。

まさにアンデッド。超アンデッド。ていうかアンデッド!!!





「小娘…よくぞ私を殺してくれた」

「ほわい!?」





わあお!小娘ってあたしだよね!
何か名指しされた!むしろ褒められた!?

いやでも殺してくれたって…。
よくぞってアンタ…ちょっと…。





「死して尚恐ろしい土のスカルミリョーネの強さ…ゆっくり味わいながら死ねえ! 正体を見た者は生かしてはおけぬ。崖から突き落としてくれるわっ!」

「うわちょ、うわああ!?」

「ナマエ!!」





奴はなんか変な息を吐いてきた。
明らかに超毒々しいヤバそうなやつ。

いきなりすぎて足がついて行かなかった。

ちょ、やばいやばいやばあああい!?!?

そう思ってたらグイッと腕を引かれた。
パッと見れば、そこには暗黒の仮面。





「せ、セシルぅぅうう!!」






腕を引いて助けてくれたのはセシルだった。

さすがセシル!
さすがは赤い翼の隊長!
さすがはカインの親友にして最高のライバル!

ここでも引き合いにカインを出すあたしは相当きてるけど、まあ今はそれどころじゃない。





「パロムよ!わしと共に炎を放つぞ!詠唱を始めい!」

「わかったぜ!」

「ポロム!おぬしは回復魔法を放て!奴には恐らく効果があるはずじゃ!」

「わかりましたわ、テラ様!」





テラさんの指示で、パロムとポロムは魔法の詠唱を始めていた。

よくぞ殺してくれた。
その言葉と、この嫌な感じから察するに…たぶんこれが本当のスカルミリョーネの姿なのかもしれない。





「ナマエ、お礼なら後で聞かせて貰うよ!とにかく今は!」

「うん!わかってる!」





セシルは剣を握って走り出した。
あたしはそれを援護するようにテラさんとパロムに合わせてファイガの用意をする。

山の頂点。
こんなところから落っことされたらひとたまりもないっつの!

とにかく気を許したら負け、…そんな場面。

あたしたちは全力を掛け、土のスカルミリョーネと対峙をした。










「おのれ…この私が貴様らごときに…、グ……パァー!!!」





しばらく続いた攻防の末…、最後の一撃は3人で放った炎だった。

セシルとポロムが作ってくれた隙に叩きこんだ炎。
その一撃が決めてとなり、スカルミリョーネの体は崩れ、そのまま崖の下に落ちていった。

……しん、としてる。
よし。今度こそちゃんと倒したみたい。





「ゴルベーザ四天王…土のスカルミリョーネ、か」





セシルはそう呟き、スカルミリョーネが落ちていった先を見つめていた。



To be continued

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