並んだ肩 究極召喚を消し去った今、次の策を講じねばならなくなった一行はキマリの提案によりべベルへと飛空艇をつけた。 べベルでは当然、反逆者であるユウナには罵声が待っているであろうと予想が出来た。 実際に、そうして当たってくる僧兵もいた。 しかし、その情報はアルベド族が流したデマだとマイカが言っているとの話もあった。 恐らくエボン側ももうユウナに頼るしかない部分があるのだろう。 あれだけ手のひらを返した癖によく言うが。 ともかく、べベルでも寺院全体がごたついて酷い有様であることが伺えた。 「はっきり言って寺院はかなり混乱してます。もう、酷いんです!僧達が皆で責任を押し付けあってるんですよ。ああもう…エボンはどうなってしまうのでしょう…」 そう言いべベルの情報を話してくれたのは道中何度か顔を見たシェリンダという巡回僧だ。 奴はつい先日に門衛の監督を命じられたのだと言う。 そんな彼女にティーダはマイカに会う事が出来ないかと尋ねた。 「それよっかさ、マイカ総老師に会いたいんだけど…できる?」 「はい!大丈夫だと思います。裁判の間でお待ちくださーい!」 運よく話はスムーズに進んだ。 一先ず、これでマイカを問い詰める準備は整ったか。 しかし、そんな中でエボンの虫のよいやり方にこいつらも随分と呆れ返っているようだった。 「でも、虫が良いにも程があるわね」 「うんうん。死刑宣告までしといて何だよって感じ」 「んじゃ、説教してやるッスよ」 「うん、行こう」 最後にそう頷いたユウナだ。 ユウナも今は未来を見据えることが出来ている。 それは、純粋に喜ばしい事だと思った。 そうして皆、マイカと顔を合わすであろう裁判の間へと向かっていく。 しかしそんな中でひとり、ぼんやりとその場に立ちつくしている奴がいる。 俺は足を止め、そいつに振り向いた。 「ナマエ。何をしている。早く来い」 「ん、ごめんごめん」 声を掛ければすぐにナマエは駆け寄ってきた。 隣まで来くると、追いついたナマエに俺は尋ねた。 「どうかしたのか」 「うん?いや、そんな大したことじゃないんだけど。んー、アーロンの背中見てた」 「俺?」 「うん」 聞き返せばナマエは頷いた。 俺の背…。 聞き返したところで意味はわからない。 ナマエも伝わってないことを理解しているのだろう。 だからすぐにその理由を話してくれた。 「えーっとさ、今までアーロンってやっぱりあたしたちよりだいぶ前の方歩いてたと思うんだよね。ひとりだけ色んなこと知ってたわけじゃない?」 「そうだな」 「うん。でも今はさ、やっと同じとこ立てたわけだよね。同じもの見て、隣歩けてるって言うの?それがちょっと嬉しいなって」 「……。」 へへっと、ナマエは少し照れたようにそう言って笑った。 確かに、俺はこいつらより先の道を歩いていただろう。 俺だけは、究極召喚の真実を知っていた。 究極召喚ではシンはどうあっても消し去れない事。 シンを倒した究極召喚がシンに成り代わる事を。 過去の失敗者である俺の目的は、こいつらに死の螺旋を存続させるかを決めさせる事だった。 ユウナレスカに真実を聞かされ、受け入れれば螺旋は続く。その是非を判断させるだけの考えと力を身に着けさせるために、多くを語らずにただ…導いた。 そして、こいつらが俺たちと違う道を歩きだし…俺の導き手としての役目は終わった。 …そうだな。 今は、同じものを見て共に道を歩めているのだろう。 「ああ。そうだな」 「うん!」 俺が頷けば、ナマエもまた大きく頷いた。 フッ…随分と嬉しそうな顔をしてくれる。 なんとも気の抜けた話ではあるが、そんな姿を可愛らしく思う。 するとナマエは俺を追い越す様にトンっ…と軽く駆け出した。 しかしすぐにくるりと服を翻す様に軽快に振り返り、俺に笑顔を見せた。 「行こ!アーロン」 「ああ」 俺が歩き出せば、ナマエはそれを待つ。 そして肩が並んだ。 肩を並べ、共に歩き出す。 「ふっふっふ、マイカ総老師サマどうしてくれようかしら」 「何をしでかす気だお前は」 「べっつに〜。でも、一言くらいはあたしも何か言いたいな」 「ああ、言えばいいさ」 「うん」 そんな会話を交わしながら、俺たちは聖べベル宮の中へと入る。 その足は、まっすぐに裁判の間へと向かった。 To be continued prev next top ×
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