辿りついた真実 俺は過去の自分を斬りつけた。 幻は消え、下ろした太刀に虚しさが残る。 「俺たちが変えてやる」 その時、ティーダがそう言う声がした。 俺は振り向き、その姿に目を向けた。 「どうやって!作戦なんて何もねえんだろ?」 「誰かが祈り子になる必要があるなら…私、いいよ」 「俺もだ、ユウナ!」 スピラに生きる者は、シンの脅威を嫌と言うほど思い知っている。 究極召喚が最後の希望であり、それ以外の方法は何一つないと。 「それじゃあ親父達と一緒だろ!ナギ節作って…そんだけだ!」 螺旋から抜け出せない。 ティーダはそれを止めるように話を遮った。 しかしやはり、諦めの空気を拭いきるのは難しい。 「あのな…シンを倒してユウナも死なせねえ。そんでシンの復活も止めたいってか?全部叶えば最高だけどよ!」 「欲張りすぎたら…全部失敗するわ」 再び、繰り返されるか…。 そんな空気になったその時だった。 「あーーーーっ!!!」 突然、重い空気を飛ばすかのように上げられた大声。 その場の全員がビクリと反応し、その声の主へと視線が集まる。 俺も、少し驚いた。 「よし!気合入った!」 声を上げたのはナマエだった。 ナマエは整えるように小さな息を吐き、両拳を握り締めてそう言い放つ。 そして、集めた視線にニッと笑顔を返して見せた。 「欲張って何が悪いの?全部叶えば最高、ならいいじゃん!そう思うなら足掻こうよ」 目を、見開いた。 明るい声で、真っ直ぐにそう言ってのけるナマエの姿があまりに眩しくて。 打開策など思いつかない。無謀な事を言っているのかもしれない。 ナマエ自身、勿論それはわかっているはずだ。 しかし、だからと言って素直に受け入れる気はない。 まだ終わっていないのなら、足掻けるだけ足掻く。 邪魔になる重いものは吹き飛ばそうと、そう笑って見せるその姿…。 ああ、お前は…そうやって、叫んでくれるんだな。 胸にじわりと沁みるものがある。 俺はきっと、お前に再会出来た時から頭のどこかでずっと考えていた。 お前がこの真実に辿りついた時、何を思うのか…と。 「ナマエ……ああ、そうだよな!大人ぶって格好つけてさ、言いたいこと言えないなんて絶対嫌だ!そんなんじゃ何も変えられない!10年前のアーロンが言ってた事…俺も信じるっス」 頷いて、同調するのはティーダだった。 何かを押し込めるなんて御免だと。 10年前の俺が言っていた言葉…それは。 「無限の…可能性?」 リュックが小さな声で尋ねた。 すると、ナマエがコクンと頷く。 「うん!無限の可能性。あたしも信じるよ」 「俺、行ってくる。ユウナレスカに話聞く」 ティーダはそう言ってユウナレスカがいる奥の間の扉を見上げた。 まだ不安の空気は拭いきれていない。 用意されていた答えの決まっていた一本道。 信じていた真実を諦め、あるかわからぬ別の道を探す勇気を抱くのは簡単な事では無い。 だが、ナマエとティーダは諦めない。 こいつらは折れない。最後まで。確かめるまで。 「聞いたら、なんとかなるのかなあ?」 「さあな。わかんないけど…」 「なんとかならないかも知れない…。でも、なんとかなるかも知れない。そう信じなきゃ、可能性だって消えちゃうよ?」 「俺の物語…くだらない物語だったら、ここで終わらせてやる」 ナマエが希望を口にし、そしてティーダが決意を見せる。 するとその時、その場に凛と響いた声があった。 「…待って」 そう口を開いたのはユウナだった。 全員が、ユウナのその声に耳を貸した。 「ねえ…私にとっては、私の物語なんだよ。振り回されてちゃ、駄目。ゆらゆら揺れて、流されちゃ駄目。どんな結末だってきっと後悔する。そんなの…嫌だ。私…決める。自分で決める!」 ユウナも決意をした。 その声には芯の強さが感じられる。 そして、そんなユウナに伸ばされた一つの掌。 「行こう、ユウナ。答え、探そう」 「…うん…!」 手を伸ばしたのはナマエ。 ユウナはその手を取り、ナマエの目を見て強く頷く。 共に歩き出す、ユウナとナマエ。 その様子を見守るように、他の者も歩き出した。 To be continued prev next top ×
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