クラウド

灰色。
光を遮る、雲り空。

首を上げ、そんな空を見ながら彼女は言った。





「クラウドってさ、正にぴったりな名前だよね」





グサッ…。
今何かがそんな音を立てて俺の胸に突き刺さった気がした。

…曇り、か…。

確かに、お世辞にも明るいと言う性格はしていない。
そんなことは自分でも百も承知だ。

ああ、自覚はしてる。

だけど、面と向かってそう言われると…。しかもあんたに…。
これは…なかなか痛いものがあった。





「曇りっていいよね〜」

「は…?」





俺が少なからずそんなショックを受けている事を知ってか知らずか、空を見上げたまま、あんたは笑った。
そんな様に、俺はぽかん…としていた。





「涼しくて気持ちいし。雨はうざいし、晴れは眩しいし。あたし、陽の光苦手」

「………。」

「ん?なにか言いたそうだね?」

「いや…何でもない」

「そう?ならいいけど」





あんたはヴァンパイアか、そう突っ込みそうになった。

でもそんなこと言ったら何だか色々言われそうな気もする。
だから喉の辺りで留めておいた。





「まーそれにさ、クラウドの名前だからもっと好きになったよ」

「え…?」





さらっと言われた。
俺は目を見開くものの、あんたは何も気にていないかのように涼しい風を受け、気持ちよさそうに顔をほころばせている。





「…そう、か…」

「うん!」





さっきのショックなんて、どこへやら。
俺はあんたの一言で、簡単に浮き沈みしてしまう。





「明日も曇りだといーねー。ね、クラウド」

「…そうだな」





今は…自分の名前が特別な響きを帯びて聞こえて仕方ない。




END


曇り好きなのは私。(聞いてない)


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