バッツ
「なんだか凄いところまで来ちゃったよね」
目の前に広がる景色を眺め、私はそう呟く。
今いる場所は、普通とは違う。
次元の狭間…。
すべての決着をつける、エクスデスとの決戦の舞台だ。
先には共に旅をしてきた仲間たちの背が映る。
地図の無い場所。行先を確認するレナ、ファリス、クルルが話をしている。
そして私の小さな声に、彼が足を止め振り向いた。
「凄いところ?」
振り向いた彼は首を傾げた。
私はくすっと笑い、うん、と一つ頷いた。
「うん。だって最初は、二人と一羽。当てのない旅をしてただけだったからね」
「ああ、そうだな、最初はそうだった」
私の言葉を聞いた彼、バッツも懐かしむように笑った。
この旅をする前、私はバッツとボコと旅をしていた。
出会いは小さな村。バッツも私もあてのない旅をしていて、そこから意気投合して。
次に目指そうとしている場所も同じだったから、そこでしばらく道中を共にして…気づけばずるずると一緒に旅をしていた。
クリスタルと二つの世界。
あの時は、こんなにも長くて壮大な旅に繋がるなんて思いもしていなかった。
「なあ」
「うん?」
すると、改まる様に声を掛けられた。
私は何かと彼を見上げる。
「死ぬなよ」
「へ?」
すると突然の真面目なトーンでそう言われた。
思わずきょとんとする。
そんな私にバッツは少しご不満の様子だった。
「おいおい、間の抜けた返事だなあ」
「失礼な。だっていきなり真面目な顔するんだもん」
「真面目に言ってるからな」
「あっそ…。死ぬなよって…」
言葉を繰り返して、まあ真面目に言う言葉ではあるか…とは思う。
でもこうちょっと懐かしいな、感慨深いな、って色々思い出してたところだったからさ。
「いきなりすぎない?」
「ん?そうか?だって色々思い出したら真っ先に思ったんだ。生きて一緒に帰りたいってさ」
「…バッツ」
するとバッツが手を伸ばしてきた。
指先がそっと頬の端を撫でて、そこにあった髪を耳に掛けてくれる。
それが許される距離。
そう。生きて欲しいと、心の底から望むことの出来る人。
「返事は?」
「…うん。当たり前。死んでたまるもんか」
私はそう答えた。
するとバッツは「よし!」と今度は満足そうに笑った。
こうして見せてくれる無邪気な表情が、私はすごく好きだと思う。
どうかこの先の未来、この顔を見ていられるように。
私はバッツを見上げ、彼にも同じように言った。
「バッツもだよ。死なないで。生きてね。それで、一緒に帰ろう」
「よしきた!」
彼は明るく、応えてくれた。
END
バッツは最初本当にただ旅してただけですからね。
運命、といえばそうなんでしょうけどひょんなきっかけひとつで凄いところまでいったなって思うんじゃないかなって。
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