プロンプト(BH)
「ノクト」
廊下でノクトと話していると、女の子の声がした。
振り向けばそこには隣のクラスの女の子。
「ああ」
呼ばれたノクトは軽く返事をする。
彼は王子様。彼女はそのお側付きのひとり。
「はい。これ、イグニスから渡せって頼まれたよ」
「おお。サンキュ」
用件は小さな届け物。
そしてついでの小さな談笑。
俺はその様子を、いや、彼女の事をぼんやり眺めていた。
小学校の時からしかわからないけど、彼女はずっとノクトの近くにいた。
ノクトと話す機会を伺っていた俺は、同時に彼女の事もよく目にしていた。
だけど、こんな近くで見たのは初めてかもしれない。
高校に入って何日か経ったけれど、俺は彼女と一度も話した事が無かった。
「あ、ごめんなさい。割り込んでお邪魔して」
「えっ」
その時、突然彼女の視線が俺に向いた。
俺は咄嗟に反応が出来なくて、しっかりと言葉が出てこなかった。
するとノクトが俺の肩をドンと叩いた。
「こいつ、プロンプトな。最近友達になった」
「プロンプト…」
その紹介にじっと俺を見上げる彼女。
俺の名前を呟くと、ハッとしたような顔をした。
「あっ…。雰囲気変わったね。格好良くなった」
「へっ…」
彼女の頭には昔の俺の姿が浮かんだのだろうか。
全然関わった事なんてなかったのに、俺のことを覚えていて結構驚いた。
いや、でも多分一番はきっと彼女が今くれた言葉の方で…。
格好良い…って。
小学校の時から性格にも見た目にも、これっぽっちの自信なんて無かった。
だから余計にかもしれないけど、その言葉は妙に頭に焼き付いて…。
「じゃあ、渡したから。またね、ノクト、プロンプトくん」
要件を済ませた彼女は、ひらりと手を振りその場を離れていった。
俺はその背中をしばらくの間じっと見つめてた。
ああ、やばいやばい。
俺はその時心臓が物凄い早さで動いているのを自覚した。
「プロンプト?」
「ノクト…俺、やばい」
「は?」
本当、どうしようもなく単純すぎる話。
だけどこの時、俺は君に恋をした。
END
プロンプトはじめて書いた。
記念すべき1作品目。
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