「…ナマエは…僕のどこを好きになってくれたんだ?」 そう尋ねた僕の言葉に、ナマエは驚いた様に目を見開いた。 何で僕は、こんな事を聞いたのだろう。 …いや、本当は…ずっと前から、気になっていたような気がする。 ナマエが…僕のどこを、好きと言ってくれているのか…。 「どこが好き、か?」 「…ナマエは、初めて会った時に…僕に好きだって言ってくれた。でも、それって…僕の事、前から知ってたのか?」 出会った時のナマエの言葉。 僕がナマエを初めて見た時、その時、ナマエは言ってくれた。 《あたし、ナマエって言います!あなたのことが好きです!!》 凄くびっくりした。 正直なところ、意味が理解出来なかった。 だけど、あまりに真っ直ぐだから…その気持ちに、ちゃんと答えを探したいと思った。 そう思ったけど…でも、だからこそ…ナマエが僕のどこを見てくれているのか、知りたかった。 僕は彼女をじっと見つめる。 すると、ナマエは少し照れたように教えてくれた。 「あたしも…エースと一緒だよ。あの時初めて、エースの事を見つけたの」 「え…じゃあ、」 「だから…一目惚れ、かな」 「一目惚れ…」 一目惚れ…。それを聞いて、僕はますますよくわからなくなった。 そもそも、一目惚れというものがよくわからない。 一目だけで…どうして人を好きになれるのか。 ……みんなとは、少しずつ仲良くなってる。 少しずつ人柄を知って、そうやって。 勿論僕も、ナマエの人柄はわかってきたつもりだ。 ナマエも…僕の事、知ってきてくれてると思う。 チョコボが好きな事の他に、昼寝を良くしてしまう事、マザーがどんなに大切かまで。 ナマエは少し眉を下げて笑った。 「うーん…一目惚れって、説明難しいね。ごめんね、上手く説明出来るかわからないけど…」 だけどナマエは、僕にどう伝えるべきか、一生懸命考えてくれた。 「エースともよく話すけどさ、チョコボ牧場にわざわざチョコボを見に来る人って稀でしょ?」 「ああ…」 「だから、チョコボ牧場に見慣れない誰かがいるって時点で凄く気になった。それで、近づいたらさ、優しくチョコボを撫でてたエースがそこにいた。チョコボ相手に、優しく笑う男の子。本当に本当に優しく笑うから…一目見て気になった。表情とか仕草とか、色んな事が目を惹いた。勿論、実際話して見て、それが間違いじゃないって確信した」 「………。」 「実は、自分でもビックリ。でも…本当、なんだよね」 「…ナマエ…」 「エースにとって、これは恋として…成立しないかな?」 ナマエの教えてくれた、一目惚れの意味。 実際…一目惚れを本気と取るか、偽と取るか、それはきっと…その人次第なのかもしれない。 だからこそナマエは、僕に成立しないかと尋ねてきたんだろう。 …僕は、どう思う…? 「僕は…」 「エース…?」 僕だって、ナマエの事は…確かにビックリしたけど、最初からそんなに嫌な印象は受けなかった。 僕は、ナマエと一緒にいると…楽しいって思う。 別れの時間が近づくと、もっと一緒にいたいのにな…なんて感じる。 その感情を否定されたら…少し、寂しいかな…。 「…ナマエの気持ちは、ナマエのものだ。だから…ナマエが恋だって思うなら、きっとそれは…恋なんだと思う」 「エース…」 そう…きっと、自分が思った心が…自分にとっての本物。 少しだけ…自分に言ってるみたいだった。 僕は、ナマエに好きだと思って貰えると嬉しくてたまらない。 僕以外の誰かと笑っている姿を見ると、少し…寂しい。 でも、また、僕を好きだと言ってくれたなら…すぐに心が満たされる。 「ナマエ…。僕は、ナマエといる時、凄く楽しいと思う」 「えっ?」 「もっと一緒にいたいと思うし、たくさん話したい。ナマエが好きだと言ってくれるたび、凄く嬉しいと思う。ナマエが0組と仲良くなってくれるのは嬉しいけど、少し寂しいな、なんて感じる事もある。僕の事…一番好きでいて欲しいな、なんて…思ったりする」 「エース…」 恋って感情…やっぱりよく、わからない。 僕には遠い言葉のような気がして。 意味を考えようとした事もなかった。 …ナマエに会うまでは。 「これは…恋なのかな?」 胸に手を触れて、ナマエに聞いてみる。 ああ、心臓の音が聞こえてくる。 ナマエは、答えてくれた。 「エースが、そう思うのなら」 「……そうか」 うん…そうだな。 ああ、こういう事を言うのか…。 溢れてくるようだった。 隣に立つナマエを見ると、胸の奥が溢れて苦しくなる。 でも…苦しいけど、嫌じゃなかった。 …僕は、ナマエの望む答え、見つけられたかな。 「ナマエ」 「はい」 「僕は、ナマエのことが好きだ」 いつか交わした約束。 これが…その答え。 僕の言葉を聞いたナマエは、ふわっと顔を綻ばせた。 「…ありがとう」 少し、頬を赤らめて…優しく微笑む君の姿。 …僕はナマエのその顔を、可愛いと思った。 END prev next top |