「エース!一緒にチョコボ見に行きませんか?」





運命の出会いの翌日。
あたしは早速、0組の教室に突入した。

そして、エースに笑いかけた。





「ナマエ…、チョコボ…?」

「うん。チョコボだよ。実はね、あたしが世話してたタマゴがそろそろ孵りそうなんだ。だからエースもどうかなって」





これでも、結構誘う口実は色々考えていた。

リフレに誘うだとか、テラスに誘うだとか。

でもそこで気がついた。
そうだ、出会いが牧場だったのなら、エースもチョコボ好きなんじゃないかって。

そこまで来たらチョコボ好きの暴走だ。
エースと羽化が見られるなんて最高じゃないか!

そう思って勢いのまま来ちゃったけど。





「あ…そんなにチョコボ好きじゃないかな?」





たまたま来てただけで、そんなに好きじゃないと言うケースに此処で気がついた。

本当、悪い癖だ。
もう少し周りを見てから行動しないと…。

改めて、自分の欠点を思い知らされた。





「好きか…嫌いかなら、好きだと思う…」

「え!」





だけどそんな時、エースの優しい一声。
その言葉で、あたしの気持ちは浮かび上がった。





「ほ、ほんと?」

「ああ。今日、孵るのか?」

「う、うん!その予定!」

「そうか…見て見たいな」

「じゃ、じゃあ!一緒に行こうよ!」





ぱあっと表情が明るくなったのが自分でもよくわかった。
ええ、まあ、現金なのは百も承知ですけどね!





「なあ、でもナマエ…」

「ん?」

「多分、見世物になってる」

「え?」





そう言われ、そこでハッと気がついた。

そうだ。ここは0組の教室。
0組中の皆が、目を見開いてあたしとエースに注目していた。





「ねね、あんた誰なの?エースと知り合いなわけ?」

「シンクちゃんも知りたいなぁ〜」





あたしが気がついた機を逃がすかと言わんばかりに話しかけてきてくれたのは茶色い髪をくるんと外ハネにした女の子と栗色の髪をツイストした女の子。

その他にも、なんかけんかっ早そうな男の子とか、眼鏡を掛けた頭の良さそうな女の子、笛を持った女の子に、髪をバックにしたのほほんとした男の子とか、髪の短い男の子と頭の良さそうな金髪の男の子も。





「てめえ誰だコラァ!ああん?」

「…ナイン。それでは脅しです」





なんか若干怖いけど…。
でも、きっと悪い人たちではない気がする。





「ご、ごめんなさい。急にお邪魔して。でも私たち、貴女の事が気になってしまって」

「そうそう。エースと仲良しみたいだし〜。こーんな風に0組の教室まで声を掛けに来る子は珍しいしね〜」





首都開放作戦を成功させた0組は、他の候補生からは一目置かれているのはわかってる。
あたしもそっちサイドだから、その気持ちは凄くわかる。

同じように0組から見れば他の候補生っもやっぱり気になるものなのかな?

折角話掛けてくれたのだ。
あたしは皆に向き直り、ぺこっと頭を下げた。





「あたし、ナマエって言います。えーっとエースとはお友達…になってくれたんだよね?」





流石に、恋しちゃったんです!とかこの人数の前で言うのは恥ずかしい。

友達から少しずつ頑張って行くって決めたのだ。
でもなんか勢いに任せてエースに無理矢理頷かせてしまったような気がしないでもない。

だから答えながらも…恐る恐る、彼に確認をしてみた。





「…なんで確認するんだ?そのつもり、だったけど」

「!」




エースは、首を傾げてそう答えてくれた。

あ…。なんか…凄くうれしいかも…しれない。





「そっか!はい!あたし、エースの友達です!」





なんの宣言だ、とも思われなくない勢い。
でもね、やっぱり嬉しかったから。

たぶん満面の笑み。

するとどうだろう。
外ハネの髪の女の子に、ぎゅっと手を握られた。





「ねえ!じゃあさ、じゃあさ、あたしらとも友達にならない?」

「えっ?」

「ケイトに賛成〜!ていうか僕も言おうとしてたんだよ〜!僕、ジャックって言うんだ〜」

「ケイトに、ジャック?」

「うん!」

「そうだよ〜」

「あー!シンクちゃんもナマエと友達になりたいなぁ〜」

「あ、わ、私も!私、デュースって言います!」

「ナインだ!いいか、しっかり覚えろよ!」

「私はクイーンと申します」

「俺はエイトだ」

「私はトレイです。そもそも0組とは、幻の赤マントなどと呼ばれている…」

「あー!うるさいうるさい!んな事はいいの!」

「え、ええとっ、シンク、デュース、ナイン、クイーン、エイト、トレイ…っと」





怒涛の自己紹介ラッシュと、トレイって人の言葉を遮ったケイトにちょっと困惑。
でも何とか頑張って名前を覚えようと努力する。





「おい、皆。そんないっぺんに覚えられるわけないだろ?」





するとそこに助け舟。
銀色の髪のお姉さんが声を掛けてくれた。

彼女はあたしの傍に来ると、少し申し訳なさそうに肩を叩いてくれた。





「悪いな。でも、ゆっくりでいいから覚えてくれるか?」

「あ、はい!勿論!えっと…貴女は?」

「私はセブンだ」

「セブンですね!えーっと、じゃあ他の方も」





ここまで覚えたなら全員覚えちゃいたい。
そう思って未だ席についたふたりを見れば、結構快く答えてくれた。





「俺はキングだ。うるさくてすまなかったな」

「いいえ、全然!にぎやかで楽しそうです」

「…サイス。ま、一応よろしくって言っとくよ」

「うん!よろしくね」





よし!おお、何か一気に友達が増えたぞ!

というか0組って、一目置く代わりに、どっかとっつきにくそうってイメージがあったように思う。でも本当は全然そんなことない。なんだか皆よりその事に早く気がつけて得した気分だ。

これもエースのおかげだなあ…なんて。
そんなことを思いながら彼の方を見ると、エースは目を丸くしていた。





「エース?」

「あ、いや…なんか悪かったな」

「ううん、むしろ嬉しいよ?って、あ!チョコボ!」

「あ…」

「それじゃあ皆!エース、ちょっとお借りします!行こ、エース!」

「あ、ああ」





エースと0組と。
ああ、あたし、今凄くわくわくしてる。

そんな気がした。



To be continued
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