花の溢れる家
「フフフ…まだ捜してるね」
教会の屋根の上。
屋根に開いた穴から見事外に脱出できたあたしたち。
今だにエアリスを捜す神羅の面々に、エアリスは悪戯っぽく笑った。
そんなエアリスに、クラウドは腕を組みながら尋ねた。
「初めてじゃないな? 奴らが襲ってきたのは?」
「…まあ、ね」
エアリスは否定しない。
クラウドはそれを見て話を続ける。
「タークスだよ、あいつらは。タークスは神羅の組織。ソルジャーの人材を見つけ出しスカウトするのが役目だ」
「こんなに乱暴なやり方で?まるで人さらいみたい」
「それに裏じゃ汚い事をやっている。スパイ、殺し屋…いろいろだ」
「うっひゃ〜。神羅コワッ」
思わず苦い顔をしてしまった。
でも、そこで浮かぶ疑問。だって、エアリスは見たところ普通のお嬢さんって感じだし。
「ね、なんでエアリスがあんなのに追っかけ回されてるの?」
「…そうだな。何故あんたが狙われる?何かわけがあるんだろ?」
そうクラウドと聞いてみると、エアリスは可愛らしく首を捻って笑った。
「う〜ん…別に。あ、私ソルジャーの気質があるのかも!」
「そうかもな。なりたいのか?」
「どうかな〜?」
「ええ、何かやだなーエアリスが剣持ってズバズバ戦うのー…。お花の方が似合ってる!」
「ふふっ、そう?でも、あんな奴らに捕まるのは嫌ね」
「それじゃ、行くぞ」
クラウドは屋根を伝い、器用に飛び降りていく。
おお、お兄さん運動神経いいですなあ。
あたしもそれを追いかけるように、ぴょん!と跳んだ。
スイスイと進んでいくクラウドを追いかける。でも、ふと気づいた。
「クラウドー!ストップ!」
「なんだ?」
「あれ」
あたしの呼び止めに足を止めて振り返るクラウド。
あたしはピッと後ろを指差した。そこには、慎重に慎重にゆっくりと屋根を伝うエアリスの姿。
しばらく足を止め、エアリスが追いつくのを待つ。
やっと追いついたエアリスは酷く息を切らしていた。
「はあっ…はあっ…」
「…だいじょぶ?エアリス」
「ふたりで…先に…行っちゃうんだもん」
「おかしいな…ソルジャーの素質があるんじゃなかったか?」
「もう!意地悪!」
クラウドの言葉にエアリスは拗ねる様に頬を膨らませた。
そんなやり取りに、思わず噴き出して皆で笑ってしまった。
はー。なんか和むなあ、この雰囲気。
あたしがそんな風にのほほーんとしていると、エアリスはクラウドの瞳を見つめていた。
「ねえ…クラウド。あなた、もしかして…ソルジャー?」
エアリスの質問にクラウドは目を丸くする。
でも隠す事も無いと言うように頷いた。
「…元ソルジャーだ」
「あれ?エアリス、何でわかったの?」
「…あなたの目。その不思議な輝き…」
目の輝き。クラウドの目は空のように深い深い綺麗な色をしてる。
確かこれがソルジャーの証だ、ってクラウドから聞いたっけ。
そこで何となく劣等感。思わずクラウドに聞いてみる。
「…もしかして、ソルジャーが青い目って実は有名?知ってて当たり前?知らなきゃ世間知らずみたいな?」
「そんなことはない。知ってるほうが珍しいさ」
「あ、本当?良かったー」
それを聞いて安心。だってコイツそんな事も知らないのかよ、見たいな事をクラウドに思われてたりしたら嫌だもんね。安心安心。
「ん?じゃあどうしてエアリスは知ってたの?」
「…ちょっと、ね」
「ちょっと?」
「そ、ちょっと!ね、早く行きましょ!ボディーガードさんたち!」
エアリスはニコッと笑うと、また慎重に足場を気にしながら歩き始めた。
そんなエアリスの様子に、思わずクラウドの顔を見て意見を求めてみる。でもクラウドも肩をすくめるだけだった。
まあいっか。大して気にもせず、あたしはエアリスを追いかけた。
「よ、と!こっからの〜…サンダー!」
ザン!とソードで斬り付けた後、トドメにぴしゃーん!と子気味のよい音を響かせて小さな雷がターゲットに降り注いだ。
「腕に多少自信がある…か。まあ、自分で言うだけの事はあるみたいだな」
「お?やった!元ソルジャーさんに褒められちゃった!」
エアリスの家に向かう途中に対峙したモンスター。
いつもの調子でショートソードを振るうと、クラウドからお褒めのお言葉をいただきました。
名誉だよねえ、これ。
「でも、ナマエ、本当に強いね」
「わーい!」
「それに、なんだかクラウドとの息もぴったりみたい」
エアリスは笑いながらそう言った。
クラウドとの息。実は、それはちょっと自分でも思った。
息って言うか、凄く動きやすいっていうか。そんな感じがした。
「ボスー。あたしたちナイスコンビではございませんー?」
「ボスって言うな。…まあ、動きやすいのは認めるけどな」
「あ、本当?」
どうやらクラウドも同じように感じていたらしい。
そりゃ光栄な事で。だって元でも戦闘のスペシャリストだよ?スペシャリスト!
大剣振り回してさ、やっぱティファやバレットが頼りにしてた理由わかったもん。
「さ。私の家、こっちよ!」
エアリスの依頼を遂行すべく、案内されるまま、あたしたちはスラムの集落を抜けた。
そして、その抜けた先。
そこにはあたたかい雰囲気の、周りに花がたくさん咲いた一軒家があった。
To be continued
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