元限定小説
サザ



主人公設定:アイクの姉
その他設定:蒼炎



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ベグニオンへと辿り着いてから、数日を暇に過ごす事になったアイク達。
ミコトも例外は無く、華やかな回廊を歩きながら暇を持て余していた。
ふと眼前の美しい庭、噴水の縁に緑髪の少年が座っているのを見つけ、そっと近寄ってみる。
確か船に密航して来たサザとかいう少年で、大事な人を探しているとか。


「何か用か?」
「ううん、別に。ここ暫く暇してたのよ」
「だからってオレに構う必要ないだろ」
「他に誰も居ない所に君が居たから。弟に用があったんだけど、剣の鍛錬に行っちゃってね……」


他には誰も見つからないし。と愚痴を続けると、サザは少々複雑そうな視線を投げかけて来た。
だがミコトはそれに気付かず言葉を続ける。


「アイクったら、前に神使様に無礼な口利いちゃって心配したのよ。
 その埋め合わせを要求したかったんだけど、鍛錬じゃあしょうがないもんね」
「……あんた、もしかしてアイク団長の姉……?」
「ん? そうよ。お父さんもお母さんも死んで、ミストも合わせてたった3人の兄弟だもん。
 もしアイクが罪人にされたらどうしようって泣きそうになっちゃった」


だがサザは、ミコトの話をあまり聞いている様子が見られない。
どこか不安そうにしながら躊躇いつつ、彼女へと言葉を投げかけてみる。


「やっぱり、弟の事って心配なんだ」
「当たり前でしょ。サザは兄弟居ないの?」
「……姉が一人」
「居るんだ。戦争あってるし、きっとお姉さんもサザの事心配してる。絶対無事に帰らなきゃね」


ミコトが諭すように言うと、サザは無言で立ち上がり去って行く。
特に追わなかったが、サザは途中で立ち止まり、振り返って告げた。


「あんたも、無茶とかするなよ。弟だって姉の事を心配するんだからな」
「……肝に銘じます」


半ば冗談混じりにミコトが敬礼をすると、サザは少しだけ微笑んで立ち去った。



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