元限定小説
ユアン



主人公設定:ミルラの姉
その他設定:−−−−−



++++++



天幕を張り終え、他に何か手伝える事は無いかと駐屯地を歩くミコト。
突然、背後から慌ただしい足音が聞こえたかと思うと、誰かが思い切り背中に抱き付いて来た。
衝撃が来るが感触と勢いからして大人ではない。
振り返った背中に真っ赤な髪がくっ付いていた。


「びっくりしたー……ユアン君じゃない」
「やっほーミコトさん。ねぇねぇ、僕ちょっと変わったんだけど分かる?」
「変わった……?」


そこでようやく、ユアンの雰囲気が以前と違う事に気付けたミコト。
何と形容していいか分からないが、落ち着いたような、懐かしいような、
自分と似たような感じがして不思議な気分になる。
少し考えてから、ようやくユアンの持つ雰囲気の正体に気付いた。


「これって闇魔法の……ユアン君、闇魔法が使えるようになったの!?」
「うん、僕ね、一生懸命修行してドルイドにクラスチェンジしたんだよ」
「そうだったの、おめでとう! でも、お師匠様みたいな賢者になりたいんじゃなかったの?」
「……ちょっと思うところがあってね。でもお師匠様は応援してくれたよ。
 魔法が変わっても信念が変わらなければ、魔道の行き着く先は同じだって」


理魔法も使えるドルイドを選んでいる事だし、それならば大丈夫かと改めて祝いの言葉を口にする。
ユアンは嬉しそうに微笑んで駆けて行くが、ふと立ち止まると振り返り、少し恥ずかしそうに告げた。


「ミコトさん、これで闇魔法お揃いだね! 僕、頑張って良かった!」
「え……」


今度こそ去って行くユアンを呆然と見送り、自身の手の中にある闇の魔道書を眺めるミコト。
つまりそういう事だったのかと、どうにも照れくさくなるのだった。



- ナノ -