元限定小説
リュカ



主人公設定:医療少女
その他設定:−−−−−



++++++


ある晴れた気持ちの良い昼下がり、思いつめたような表情で椅子に座る一人の少年・リュカが居た。
緊張の面持ちで、今にも何か叫びそうな逃げ出しそうな、緊迫した様子。
彼の前にはミコトがしゃがんでいて、彼女が何かをしようとした瞬間、
弾けたようにリュカは立ち上がり奥のカーテンの向こうへ隠れた。


「ほらリュカ君、逃げちゃダメじゃないの。お姉ちゃんが、痛くないようにしてあげるからね」
「や……やだよミコト姉ちゃん、やっぱり絶対に痛いよ……このままで……」
「だぁめ、傷口からバイ菌が入るんだから、消毒しなきゃいけないの」


外で遊んでいて派手に転んでしまったリュカ。
傷は浅いが、右足の側面を縦に10センチ程も切ってしまっていた。
ミコトの左手には消毒液、右手には綿を摘んだピンセット。
染みるから嫌だと逃げようとするリュカを何とか宥めすかして座らせて、再び傷の消毒を試みる。


「男の子でしょ、リュカ君なら我慢できるから。大丈夫大丈夫」
「うー……」


ようやく観念したのか、消毒中もぐっと我慢して震えるだけのリュカ。
すぐに終わらせガーゼを貼ってあげると、ホッと息を吐き落ち着いた。


「ありがとうミコト姉ちゃん……やっぱりちょっと痛かったけど」
「だから言ったでしょ、リュカ君は本当は強い子なんだから、我慢できるって」
「……本当に?」


強い子と言われて嬉しかったのだろう、リュカは少し顔を綻ばせ、ふんわりとした笑顔を見せる。
本当よ、と言ってあげれば照れて恥ずかしそうに頭を掻き、今度は満面の笑みを浮かべるリュカだった。



- ナノ -