短編夢小説
肝試しちゃう?



主人公設定:−−−−−
その他設定:学生パロディ



++++++



まぁ人それぞれではあるんだけれど、修学旅行と言えば楽しみの一つ。
何よりつまんない授業よりはずっと楽しいし、修学旅行の夜と言えば消灯無視して話したりゲームしたり……なんだけど。


「ごっめーんミコト、彼んとこ行って来る」
「私もー」
「留守番ヨロシク!」
「えっ、ちょっ……」


同室のクラスメイトは全員カレシの所に行ってしまって、あたしは一人部屋に残されてしまう。
いや、別にいいよ? 先生の言いつけ破ってカレシとお出かけなんて青春だよねイェー。
あー寂しい。ていうか旅館の部屋に一人って微妙に怖い。


「なんつって怖くない怖くない怖くわぎゃっ!?」


扉の前で物音がして、焦ったあたしは飛び上がる程に驚いてしまう。
趣味悪い趣味悪い、人を脅かして遊ぶなんて超絶悪趣味だぞー、とか考えながら、思い切って扉の所まで行ってみた。
すると、扉の外から聞こえて来たのは、あたしがとても良く知る声だった。


「ミコト起きてるか?」
「……リンク?」
「遊びに来ちゃった」
「星がすげぇ綺麗なんだけど、ちょっと外 出ねぇ?」
「マルスとロイも!」


扉を開けると、幼なじみでクラスメイトな三人が。
そりゃ退屈してた所だったから快諾したよ。
先生と鉢合わせないよう願いつつ旅館を出ると、頭上は満点の星空。


「うわー、凄く綺麗! 町中じゃ見られないね」
「ミコトの方が綺麗だよ……なんつって!」
「はいロイ君、減点」
「何を!?」


ちょっとテンションが上がってハシャぐ。
旅館は市街地から少し離れた山の中だから星が良く見えて綺麗だ。
……だってのに、あたしが浸っていたのをリンクが邪魔してくれやがった。


「おいおいミコト、舗装されてても山の中ではあるんだから、折角のチャンスを逃すなよ」
「……何のチャンス?」
「肝試し」


ついに耳が遠くなりましたかあたしは。
今リンクさんの口から余計な一言が聞こえた気がしたんですけれどもね。
肝試しと聞こえたのはあたしだけではないらしく……。

ロイは、いいなー! と盛り上がり、マルスは黙っているが拒否はしない。
そして三人の視線はあたしに集中した。
いいよ、肝試しなんて楽しそうだから受けて立ってやろうじゃんか!


「肝試しね、決まり!」


あたしと三人は、旅館から離れて山道を歩く。
山道とは言え車が普通に通る道路だからアスファルトで舗装されてて、街灯もあるから思ってたような真っ暗さは無かった。
まぁ明かりは街灯しか無いから薄暗いし、静まり返ってて不気味だけど。
と言うか、先生にバレたら滅茶苦茶に叱られるね。


「今のところ、肝試しより説教の方が恐怖だよな」
「そうだなー。なあミコト、何か出たらどうする?」
「ちょっとロイ、女の子を怖がらせるなよ」
「気ィ使わないでいいよマルス、ちょっとぐらい怖くなってくれた方があたし的にも面白……」


そこまで言いかけて、何の気無しに巡らせた視線が何かを捉えた。
本能的に確認しちゃいけない気がして、気付かなかったフリをする。
いやいやいやいや、悪い冗談はよしてマジで。
途中で言葉を切ったあたしを心配したマルスが気遣ってくれるけど、大丈夫だと明るく振る舞う。

そのまま歩いて、舗装されたアスファルトの脇、くたびれた鳥居のある寂れた神社に辿り着いた。
無人なのはリンクが調査済みのようで、この奥にあるやしろへ行き、おみくじを持ち帰るのがルール。


「やしろまでの距離はせいぜい50mくらいだから。二人で行って、おみくじを持ち帰ったら終わりな」
「つかリンク、いつの間にそんな事調べてんの」
「俺は楽しそうな事は見逃さないタチなんだよ!」


さいですか。
と言う事は旅館に着いてから君は一度抜け出しちゃってたっつー事ですか。
いくら何でもバスの中からは確認不能だろうし。

ジャンケンをして二人ずつに分かれる事にした。
結果は、あたしとリンク、ロイとマルスだ。
まずはロイとマルスが先に行く……けどさ、ライトまで用意してるなんて周到すぎますぜダンナ、もといリンクさん。
ロイとマルスが出発してから、あたしはリンクとちょこちょこ会話する。


「リンクさぁ、そんなに肝試ししたかった?」
「楽しめる事は何でもやらなきゃ駄目だろ、ミコトだって楽しい事好きなクセに」
「楽しい事が嫌いな人は居ないっしょ、何が楽しいかは人それぞれだけど」


でも、自分が楽しいって感じる事を見つけて、それを楽しむ為に力を注げて、素直に楽しめるって意外に凄い事だと思うよ。
リンクのそういう所、あたし好きなんだよね。

やがてロイとマルスが帰って来て、次はあたしとリンクの番になる。
道路の脇から鳥居を潜って暗い参道に足を踏み入れた訳だけど、あー、なんかドキドキして来た!
リンクがライトを持ってくれてて、あたしは何の心配も無く隣に並ぶ。
ワクワクしてるあたしを見たリンクは、呆れたように、でもどこか楽しそうに言って来た。


「お前さ、ちょっとぐらい怖がって俺の腕にしがみ付くとか特典ないワケ?」
「はははは冗談。リンクはしっかりライトで先を照らしてちょうだ……」


そこまで言いかけて、何の気無しに巡らせた視線が何かを捉えた。
本能的に確認しちゃいけない気がして、気付かなかったフリをする。
って、さっき全く同じ事があった気がする……。

気にしないフリを続けて、やしろへと辿り着いた。
入り口の脇にある、100円を入れたらおみくじが一枚出て来る赤い箱。
リンクが用意していた百円玉を入れて出て来たおみくじを取ろうとした瞬間、やしろの脇にある草むらが揺れ、何かが飛び出して来た…!


「えっ、やだ、なになになになに!?」
「ミコト、来い!」


ビックリしてリンクに近寄ったら引き寄せられたあたしは、片腕で抱き締められて思いっ切り密着してる状態になる。
リンクの肩辺りに押し付けられたあたしの頭。
何ですかこのシチュエーション何のフラグ立ってんの、ちょっと待ってヤバいってこれリンクの心音聴こえるんですけど!
あたしは急に抱き締められて心音バクバクになってしまい、リンクにも聴かれるんじゃないかと冷や汗ものだ。

で、あたしをビビらせてくれた、草むらからの招かれざる訪問者は一体全体なんだったのでございましょ。
リンクが全然なにも言わないから不安だったんだけど、ライトが照らす先にちらりと視線を向けたら、そこに居たのは。


「うり坊だ。早い話が子供のイノシシだな」
「いかにも説明っぽい説明をありがとう。って言うかマジで可愛い!」


初めて見たイノシシの子供はめっちゃ可愛い!
思わず近寄ろうとしたあたしを引き戻し、リンクは来た道を駆け戻る。


「馬鹿お前、どっかに親が居たら攻撃して来るぞ。さっさと帰ろう」
「あー残念。でも、おみくじはしっかりゲットしといたぜよ」


参道を駆け戻り、道路に戻って来たあたし達。
待ってたロイとマルスにおみくじを見せた時に初めて中を見たけど、あたしのは大吉だった。


「大吉じゃないか。おめでとうミコト」
「ありがとマルス、人生初の大吉だよー! まぁおみくじなんて滅多にやらないんだけどねー」


さっきリンクに思いっ切り抱き締められたのは大吉の影響かな……って、自分で言っておきながら寒い事を想像しちゃった。

いい加減 先生にも怒られるだろうし、来た道を旅館目指して三人で戻る。
その途中リンクが、何やら楽しげに話し掛けて来た。


「ミコトって、いきなり出て来るのに弱い系? さっき草むらからうり坊が出た時、かなりビビってたけど」
「う、うっさいなー。誰だっていきなり何か出て来たら怖いじゃん。ねぇロイ、マルス……」


同意を求めて視線と一緒に声を送ると、ロイとマルスは先に帰ったのか居なくなってて、リンクと二人で残されてた。
何で先に帰るかなーと軽く愚痴りながら旅館に帰り着き、落ち着いた明るさにホッとしていたら、マルスとロイが寄って来る。


「ミコト、リンク、二人でどこに行ってたんだ? 居なくなったから心配したよ……」
「えっ。なに言ってんのマルス、肝試しに……」
「リンクと二人で肝試しに行ってたのか! なんだよミコト、だったらオレ達も誘えよー!」
「えっ、いやロイ、誘うも何も二人も一緒に……」
「オレとマルスはずっと旅館で、リンクとミコトを探してたけど。先生にバレないよう、ごまかすの大変だったんだぞ」



…………。



あたしとリンクは顔を見合わせて唖然とした後、乾いた笑いで青ざめた顔をごまかしていた。



……うん、なんか、肝試し怖かったねリンク!





*END*



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