短編夢小説
お菓子を買いに



主人公設定:強気少女
その他設定:スマブラ



++++++



「あーっ! なんで勝手に食べちゃうんだよー!!」


スマブラファイター達が過ごすピーチ城の広間の前を通りかかったミコト。
突如響いたネスの大声に慌てて広間へ入る。
見れば口の周りにチョコレートを付けたカービィを怒鳴るネスの姿。
考えなくとも、カービィがネスのおやつを食べてしまった事が分かる。


「こら、なにやってるのよカービィ! 勝手に人のものを食べちゃダメ!」
「ご、ごめんなさい……」


お腹が空いてつい、テーブルに置いてあったチョコビスケットに手を出してしまったらしい。
まぁカービィが居る場所に放置したネスもネスなのだが、確実に悪いのは勝手に食べたカービィである。


「楽しみに取っておいたのに……バカバカ、カービィのバカっ!」
「ネス、ほら、取りあえず落ち着いて」


怒りっぱなしのネスに寄り添い、ミコトは彼を宥めて落ち着かせる。
軽く背中を叩いて撫でてやると幾らか落ち着いたようだ。
カービィの下には破り捨てられたままのビスケットの個包装と、食い散らかしたカスやチョコ。


「カービィは、それを片付けなさい。その間に、私が買ってくるから」


ちょうど街まで行く用事があったから良かった。
ミコトとしては、ついで気分なのだが……。
微妙に勘違いしたらしいネスが、また怒り出す。


「ほらぁ、カービィが食べちゃうから、ミコトがわざわざ買いに行く事になるんじゃないか!」
「違うのよネス、街に用事があるから……」
「ミコトは優しいから、こんな場面に出くわしたら買いに行ってくれるに決まってるじゃん!」


……そこまで善人ではないつもりなのだが、そう言われると引っ込む訳にもいかない。
とにかく、買いに行くから片付けておきなさいと告げて歩き出すと、何故か彼女の後からネスがついて来た。
どうしたのか訊ねると一緒に行きたいと言う。
残っていると、またカービィに文句を言いそうだからと。
しょうがないなあと呆れ気味のミコトだが、ネスの言う事にも一理ある。
割と賢明な判断に、ミコトは彼と一緒に行く事にした。

ピーチ城からそう遠くないバス停でバスに乗り、遠くにある、海の上に建てられた街へ向かう。
城からかなり離れた場所にある長い橋を渡って行くあの街までは、バスでおおよそ1時間程度だ。


「カービィには、もっとちゃんと言わないとね。あの子、あんまり空腹を我慢できないから」


バスの中、景色を眺めながら隣に座るネスへ語りかけるミコト。
ネスはようやく怒りが収まったのか、むしろ以前よりご機嫌のようだ。


「んー、もういいよ。カービィなら食べるかもって分かってて、その辺に放置してた僕も悪いんだし」
「お……大人になったねぇネスっ……!」


大げさに泣き真似をしつつネスを褒めるミコト。
こんなに落ち着いた意見を言うちびっ子は、大体ピカチュウぐらいのものだったので嬉しい。
何だか母親的思考になってしまっているが、保護者に変わりはないから別に構わない。


「よしよし、お姉ちゃんがネスにお菓子買ってあげようね、感動した!」
「ミコト大げさすぎ。それに、そんな子供扱いしなくていいから」


笑いながら言うネスに、ごめんごめんとミコトも笑いながら謝る。
やがてバスは、陸と海上の街を結ぶ橋を渡る。
深蒼の海に囲まれた真っ白な橋、遥か下方の海面を眺めて長い橋を渡り続け、いい気分のドライブも終わりが近付いた頃。
突然、大きくバスが揺れて止まってしまった。
他の乗客も不安そうに辺りを見回しているとアナウンスが流れ……。

どうやら、バスが故障してしまったようである。
臨時のバスが来るまで待つ事になったのだが。
ミコトとネスは散歩も兼ねて歩く事にした。
残りは1km程、大した距離ではない。


「まぁいいよね、散歩がてら行こう」
「さんせーい!」


天気は良好、潮風も爽やかで良い陽気だ。
街を前方に見据えつつ並び歩くミコトとネス。
ふと彼がクスクス笑いながら口を開く。


「へへ、今日、2回もラッキーが起きちゃった」
「なに、どうしたの」
「ないしょー」


自分から言っておいて、内緒は無いだろう……。
ネスはニコニコと機嫌が良くて、この分では、もうカービィの事を怒っていないハズだ。
それをネスに伝えると案の定……以上の事になる。


「今じゃあ、カービィにも感謝だよっ! だって、お陰でミコトと一緒にお出かけ出来るから」
「内緒じゃなかったの」
「いいんだよ」


何だか言う事が滅茶苦茶な気がするが、ネスが満足そうだからOKだ。
幸運の2回目は、バスが故障した事だろう。
一緒に居られる時間が増えてラッキーとか。


「ねぇミコト、もっとノンビリ行こうよ」
「はいはい」


言いながら歩み寄り手を握るネスに、ミコトも微笑ましい気持ちになる。
こんな穏やかな時間が心地よくて歩調を緩めた。
嬉しそうに手を握るネスを見ると、何だかとても可愛い弟が出来たような気分。


「いいねぇ、私、弟か妹が欲しかったんだ。ネスと一緒に居ると、弟が出来たみたいで楽しいよ」
「僕もさ、お兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しかった」
「じゃあ今日から私が、ネスのお姉ちゃんね」


ミコトの言葉に、ネスはますます嬉しそうに微笑んで寄り添って来る。
スマブラメンバーの皆とは家族のようなものなのだが、これでネスと更に深い絆が出来た気がした。

やがて橋が終わり街へ入る2人。
手を繋いだまま目的の場所へ向かう……が。


「お菓子を買いに行かなきゃね」
「あれ、ミコト、何か用事があるんじゃ?」
「……。……え?」


どうやらネスの用事に気を取られ、自分の目的を忘れてしまったようだ……。

結局ネスの用事を済ませただけで帰って来た2人。
メンバーの皆の分のお菓子も買ったので、もういいやなんて気持ちになる。


「ってミコトいいの、ホントにお菓子買っただけで帰って来たけど!?」
「あー……。うん、まぁ別にいいさ、大した用事じゃなかったと思うし」
「大丈夫かなぁ……」


もし本当は大事な用事だったら……と焦るネス。
彼とは対照的に楽観しているミコトは、ピーチ城広間の扉を開けてカービィに声を掛けた。


「カービィ、ちゃんと掃除した?」
「うん、ちゃんとしたよ。ごめんねネス」
「もういいよ、お菓子、カービィの分も買ったから」


思いがけない土産に大喜びするカービィ、すっかり仲直りして安心だ。
また平和が訪れたピーチ城の夕暮れ時、乱闘に行ったり出掛けたりしている皆の帰りをゆっくり待つ事にした。


「ミコト、また一緒にお出かけしようね!」
「OKネス、またね」
「そういえば、ねえミコト」


ネスと次の約束をしていると、カービィがキョトンとした感じに声を掛けてきた。
何事かと続きを待つと、彼が話したのは……。


「ロイとマルスとリンクと、おかいものするって、……言ってなかったっけ?」
「…………あ」





*(三剣士が)ご愁傷様END*



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