短編夢小説
white ray



主人公設定:−−−−−
その他設定:スマブラ



++++++



ある冬の日、前日まで降り続いた雪のために、スマブラファイター達が暮らすピーチ城は一面の銀世界になっていた。
晴れ渡った青空の下、防寒したちびっ子たちが雪遊びに興じている。
それを微笑ましく見ていたのはファイター有数の戦い手、ミコト。
本当は自分も交ざりたいのだが、ちょっと恥ずかしくて遠巻きに眺める事しか出来ない。


「あー……。雪合戦してる。久し振りに雪だるまとか作りたいなぁ」


風がないので体感温度はさして低くない。
雪合戦したい、雪だるま作りたい、雪に思いっ切り倒れ込みたい。
あー……と小さく唸りつつ、まだちびっ子達を羨ましげに見守るミコト。
そのうち雪合戦に飽きたちびっ子達が、何かを一心に作り始めた。

おや、とミコトは一歩身を乗り出す。
これはちびっ子達に交ざるチャンスかも……!
ミコトは思い切って近寄り声をかける。


「おーい、ちびっ子達、何をやってんのー?」
「あ、ミコト!」
「今ね、かまくら作ろうかと思ってたんだよ」


ピカチュウとネスの返答に眼前の物体を見ると、確かに空洞のある物を作ろうとしているようだ。


「ね、私も協力しようか。おっきいかまくら作ろ!」
「ほんと? ミコト姉ちゃん……」
「よし、じゃあ決まりっ!おっきいの作るぞ!」


リュカが控え目に微笑み、トゥーンリンクが元気よく雪を積み上げる。
ミコトも彼らを手伝って雪を積み上げ、本やテレビで見るようなかまくらの形になるよう作っていく……のだが……。
中が空洞になるように雪を積み上げても、すぐに脆く崩れてしまう。
ポポやナナもかまくらは作った事がないらしく、上手くできなかった。

何度積み上げても崩れ、いい加減イヤになる。
遂にちびっ子達は飽き始めてしまった様子。
カービィが雪の上に倒れ込み、ぐずりだした。


「すぐ崩れちゃうよー、これじゃできないっ! ねぇねぇミコトー、もっといい方法ないのー?」
「う、うーん、私もかまくらは作った事なくて……」


ミコトもすっかり困り顔で、崩れたかまくら……になる予定だったものをジッと見つめる。
やがてネスが「もう飽きたから帰ろー」と言い出し、ちびっ子達は城へ戻る。
だがミコトは崩れた雪の残骸を見て動かない。
ミコトの負けず嫌いな元来の性格が、こんな時に出てしまったらしい……。
まるで乱闘する時のような厳しい目つきで、再び雪を積み上げ始めた。


「こんな事で負けてちゃたまんないわよ! 絶対にかまくら作ってやる!」


積み上げる、積み上げる……崩れる。
また積み上げる、また積み上げる……また崩れる。
また積み上げる、積み上げる、崩れる。
積み上げる、積み上げる、積み上げる、崩れる……。


「あー…。なんでぇー? ねぇ神様私が何をしたの」


相手が相手だからか、いつものように負けず嫌いな心は長続きしなかった。
ミコトは真っ白い雪の上に倒れ込み、真っ青な空をぼんやり見上げる。
ここで完成させてちびっ子達に喜んで欲しいのに、これでは無理だ。

どうしよっかなぁ、なんて考えていると、ふと雪を踏み締める音がした。
誰かと思えば、倒れ込むミコトを不思議そうな目で見ているリンク。


「ミコト……お前こんな所で何やってるんだよ」
「あぁ……リンク。かまくら作ってたんだけど、上手く出来なくて途方に暮れてる真っ最中だよ」


ミコトは立ち上がり、こうやって雪を積み上げたけど出来ない……とリンクにやり方を説明する。
だがリンクはそれを見て怪訝な表情を浮かべた。


「ミコト、あのさ。いきなり完成形を作ろうとするんじゃなくて、一度雪を山盛りにしてから穴を掘った方が良いような気もするんだけど……」
「…………あ」


言われてみれば。
それもそうだ。

そう言えば雪像などはいきなり完成形を作らず、まず雪を盛り、それから作りたい形に削って行くというような作り方をする……と聞いた事がある。


「それならシャベルか何か取って来なくちゃ。これでかまくらが作れる!」
「じゃあ良かったら俺も手伝おうか? シャベル持って来るよ」


ミコトの返答を待たずにリンクは駆けて行き、やがてシャベルを二本手にして戻って来た。
かくして、ミコトとリンクは共同作業にてかまくらを作り始めた。
初めに大人が数人入ってもまだ余りそうなほど大きな物を作ってしまう。
そうすると気持ちにも自信と余裕が出て、やがて少し小さめのかまくらも二つ作ってしまった。
ピーチ城の庭にかまくらが三つも出来てすっかりご満悦のミコト。


「かーんせーい! もうリンク本当に有難う、これでちびっ子達も喜ぶよ!」
「そんなこと言いつつ、実はミコトが一番喜んでたりして」
「だあれが……! うん……そうかもしれないねー」


何だかんだ言いつつ雪遊びしたかったのは本当なので素直に言う。
かまくらは初めてで、実物を前に早速中に入りたい願望が湧いて来た。


「ねえリンク、おっきいのはちびっ子達のために取っといて、他のちょっと小さめのに入らない?」
「お、いいな。じゃあ入り心地チェックって事で」


ミコトとリンクは一番小さなかまくらに入る。
中は狭く、あと一人か二人入ればぎゅうぎゅうになってしまう程度だ。
でもこの狭さがいい。何だか秘密基地みたいで、小さな頃を思い出すようにワクワクしてしまう。

それに一般に伝え聞くように、かまくらの中は外に比べて寒くない。
こうなると出たくなくなってしまうのが人の性というものだったりして。


「わー、予想以上にいいじゃないの! ちびっ子達、きっと大喜びするよ!」
「お、おいミコト、けっこう普通に狭いんだから暴れ……うわっ!」


ミコトがハシャいで体を揺らした瞬間、リンクに衝突し、更に彼がかまくらの壁に衝突した。
一番小さいのは最後に作ったのだが、慣れて逆に油断してしまったのか、ぶつかった部分からヒビが入り始めてしまう。
それは天井や周りの壁にゆっくりと広がり……。


「ミコト、ヤバいぞ多分崩れる!」
「え、えーっと、じゃあ、埋もれるっ!」


何を思ったか、ミコトは逃げ出すどころか仰向けに寝転がってしまった。
おいおい大丈夫か? と呆れたリンクだが、ミコトの楽しそうな様子が伝染したのか、俺もやってみようと仰向けに寝転ぶ。
一応、腕で顔を庇い、隙間から天井を見た。

かまくらにヒビが入って行き、一色の天井に空の青が割り込んだ瞬間。
真っ白い光線が降り注ぐかのように、ミコトとリンクを覆い尽くした。


「……」
「……」
「……」
「……」
「ぶはっ!!」


暫く雪に埋もれた後、同じタイミングで出る二人。
少しの間だけ黙って顔を見合わせ笑い始めた。


「ミコトお前なにやってるんだよ!」
「リンクこそっ!」


降り注いだ純白光線のカケラにまみれ、二人の楽しげな笑いは暫く止まらなかった。



壊れてしまった1つを改めて作り直し、完成する頃には日が暮れた。
すっかり寒くなってしまったので今日は切り上げ、明日ちびっ子達に教えてあげる事にする。

そして翌日、朝食を取ったちびっ子達を庭に誘い出したミコトとリンク。
かまくらが三つも完成しているのを見て、ちびっ子達はもう大喜びだ。


「うわーっ、これミコトとリンクが作ったの!?」
「すごーい!」


はしゃぎ回って、かまくらで遊ぶちびっ子達。
それを微笑ましく見守りながら、ミコトとリンクも満足げにしている。
昨日は雪で遊べたし、こうして喜んでくれるのなら作った甲斐があるというもの。


「はー、今日も辺り一面真っ白だよねえ。また何か作っちゃおうかリンク」
「そうだな、かまくらでも作るか」
「またですか!」
「俺とミコト専用の」


急にリンクがそんな事を言い出すものだから、止まってしまうミコト。
何だかすごく恥ずかしくなって、照れ隠しに大げさなリアクションをする。


「ま、またまたー。そんな恥ずかしいこと言うと蹴るぞコラァ」
「ん? 別に俺恥ずかしい事なんて言ってないけど、何想像したんだよ」
「う、うるさいニヤニヤ笑うなああああ!!」


どこまでも真っ白な世界で、赤くなったミコトの顔がよく映える。
雪が太陽を反射し、辺りは光線のようにきらきらと輝いていた。





*END*



戻る
- ナノ -