短編夢小説
wolf girl



主人公設定:強気少女
その他設定:スマブラ。ヒロイン攻め



++++++



「マルスいっただっきまぁぁぁぁっす!!」
「うわあぁぁ!?」


廊下を歩いていたマルスに飛びかかったのは、“近寄ると食べられる”と有名なミコトだった。
あまりの勢いにマルスが床に倒れ、ミコトはその上にのし掛かって、「穫ったどー!」なんて言いながら片手を上げ満面の笑みを浮かべる。
色々な意味で衝撃を受けて呆然と脱力しているマルスは、どうにも今の状況が理解できない。
倒れた自分の背中に跨っているミコトへ少し顔を向け、問うてみた。


「あ、あのねミコト、これは一体どういう事かな」
「まさに今、無防備で美味しい王子様をゲットしたってワケなのよ。さ、チャンスを逃さないうちに最適の調理法で食べちゃおっかなぁ!」
「調理法って何なんだ、君は一体僕をどういう意味で食べたいんだ!?」
「うーん、どっちかと言うと食事じゃない意味の方になるかな」
「……」


どっちかと、とは……。
まさか彼女は自分を本当に食事の意味で食べる気だったのかと想像し、マルスは思わず身震いした。
裏じゃあるまいしそんな残酷でグロテスクな展開は全力で遠慮したい。

ミコトは倒れているマルスを起こし、すぐに抱き付いて頬ずりする。
その感触にゾワリと体を震わせるマルスは、振り払う事も出来ずにされるがままの状態……。


「いやーん、お肌スベスベじゃないのー。この白い肌にサラサラの髪、細い体がたまんないわー」
「……オヤジか、君は。とにかく女性がやたら男と触れ合うものじゃないよ」
「いやーん可愛いーっ! 照れてんの? 照れてんでしょマルスーっ!」


意思が伝わらない。
何だか外国人と会話している気分だ。
いや、確かにミコトはマルスにとって外国人と言うか異世界人と言うか。
がっちり抱き付いて離れようとしないミコト。

相手は女性だし振り払う事は簡単に出来る。
だが勢い余って怪我をさせないか心配だし、やはり女性を乱暴に扱うのは気が引けて実行不能。
とにかく言葉で遠ざけようとしてみた。


「ほら、僕にばっかり構ってても飽きるだろ。他の人の所に行きなよ」
「飽きない! 大体、他に誰の所があるの?」
「……ロイとか……ピットとか……リンクとかアイクとか」
「ロイみたいなやんちゃ坊主は嫌! ピットは可愛いけど抱きしめる時に羽根が邪魔だし、リンクやアイクは背が高くて筋肉質だから抱き心地悪い。加えてアイクは、見るからに恐いからヤダ」
「……」


この錚々たるメンバーが駄目ならば他の仲間も駄目なのだろう。
マルスは溜め息をつき実力行使を決意した。
心配ない、ミコトなら多少乱暴に扱っても大丈夫に決まってる。
そう自分に言い聞かせ、マルスはミコトを振り払う行動に出た。


「ミコト、いい加減に僕から離れ……っ!?」
「なにー?」


思い切り体を動かし彼女を振り払ったハズが、何故かミコトはビクともせずマルスにしっかりと抱き付いていた。

……あれ? おかしいな。
僕は確かに全力で彼女を振り払ったハズなのにな。

ミコトの身長は平均的で、くっ付かれた感覚から察するに体重も大した重さでは無いだろう。
それなのにマルスは彼女を振り払えない。
何だか嫌な予感がしたマルスは、顔をサッと青ざめさせると必死にミコトから逃げようとした。


「待っ……ちょっと、放してくれミコトっ!」
「嫌ぁよ。せっかく手に入れた獲物を放したりなんかするもんですか!」
「と言うかキミ、何でこんなに力があるんだ! ただ僕が細いだけとは言わせないからな!」
「あ、先に言われた。じゃあ何て言おうかな」


うーん、と考え込み始めたミコトは、片手でマルスの服を掴み逃がさないようにしている。
当然マルスは必死で逃げようとしているが、何故かミコトに片手で掴まれているだけで体がビクともしない。
やがてミコトは満面の笑みで告げた。


「まさかマルス、本当は私から逃げたくないんじゃないの? 体は正直だね、このツンデレ!」
「はぁ!?」
「だって私、そんなに力ないもーん。素直じゃないマルスも可愛いけど、やっぱ私的には素直なマルスも見たいなぁ。ってなワケで、マルスが素直になるまで調教…………お話ターイム!」
「今なんて言った!? どうせ話だけで済むワケなんて無いんだろ! と言うか僕をドコに連れて行くつもりなんだ!」


ミコトにズルズルと引きずられながら連れて行かれるマルス。
これから自分の身に何が起こるのか、想像するだけで泣けて来る。
それからと言うものすっかりミコトに勝てなくなったマルスは、仲間達から憐憫の表情で見られる事になる……。


「でもあんまり嫌そうじゃないよね、マルス」
「……もう好きにしてくれ」
「いいの!? やった!」
「……」


狼少女に食べられて。
これはこれで、彼らの幸せの形なのかもしれない。


「勝手に決めるなっ!」
「いい加減、往生際が悪いよマルスー」


…………多分。





*END*



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