油断というものは、しばしば失敗を呼ぶ事がある。
盲信というものは、しばしば破滅を呼ぶ事がある。

しかし、気の置けない信頼を寄せる事の出来る相手が居ないというのも、また悲しい事である。


++++++


ここはエインシャント島と呼ばれる浮遊島。
この島に1人の少女が降り立っていた。
セルシュという名の少女は、島を警備しているロボットを避け、出会ったら仲間を呼ばれる前に蹴散らしながら島の中央より西側を進む。
とある組織に属しているセルシュは、ボスから指令を言い渡されていた。
その内容は、最近不信な動きが確認されたエインシャント島の調査。
一人ではなく、とある女性と行動を同じくするように命令されている。


「……居た。彼女ですね」


先方の森の中、一人の女性が佇んでいる。
銃を構えながら近寄ると向こうも気付いたようで銃を構えるが、セルシュだと確認すると銃を下ろした。


「セルシュか。では早速行くとしよう」

「待って下さい。あなたが本当に本人かどうか、確認させて頂きます」


本当は、スマッシュブラザーズのファイターとして登録されている彼女の確認は必要ない。
だがセルシュは念には念を入れ、すんなり信用したりする事は無かった。
スマブラファイターとは何回か交流した事があるので、初対面という訳ではないのだが。
女性は少しムッとしたように美しい顔を顰め、渋々とした様子で承諾する。
セルシュは女性から離れたまま、銃の先を女性に向け、その先から赤外線を放出して女性に当てた。


「ファイターNo.04、サムス・アラン。確かに確認致しました」

「……それは良かったな。時間を食った、行くぞ」


特に気にしていない風だが、やはり少しは気分を害してしまっただろう。
しかしセルシュは、彼女……サムスの気分を害そうが、仕事なのだから仕方ないと思っている。
そもそも仕事に私情を挟むのが間違いであり、仲間と云えど気を許すのは失敗に繋がるという考えを持っているからだ。

2人はエインシャント島の内部にあるという研究施設に侵入する為、通気口を探していた。
現在はロボットばかりのエインシャント島だが、かつては人間も住んでいた事があるとボスから聞いていたセルシュ。
地中に研究施設があるのだから、必ず通気口が幾つか存在している筈だ。


「セルシュ、あれは通気口じゃないか? 地面から出ている」

「! ……そうですね、あの大きさなら侵入出来そうです。行きましょう」


サムスが発見した通気口は、所々が錆びて壊すのに苦労は無さそうだ。
やはりロボットだらけになった今、換気を気にする必要も無い為に打ち捨てられているのだろう。
通気口を破壊したセルシュとサムスは、研究施設内へと侵入して行った。


++++++


エインシャント島の研究施設へ潜入したセルシュとサムスは、ダクトを通って倉庫へと出た。
ここまでは静かなものだったが、さすがにこの先はそうもいくまい。
敵の懐に潜入する訳だから、仕事は素早く済ませなければならない。
サムスは奪われたパワードスーツを奪い返す為、セルシュは不審な動きを見せているエインシャント島の調査の為。


「まずは管理室を探し出して、位置を把握しましょう。この辺りにあると思いますが……」

「しかしこの辺りは手薄だな。あまり重要な施設は無さそうだ」


エレベーターを使って一番下に降り、先に居たロボットを仲間を呼ばれる前に素早く蹴散らす。
そのまま奥へ進むと、壁にコンピューターが備え付けてあった。
調べてみると施設の管理用ではないようだが、近辺の地形や状況を把握するのには充分である。
どうやらここは別館に当たる建物のようで、本格的に探索するなら本館を目指した方が良さそうだ。


「道理で手薄なわけだ。しかし本館とは右の方に表示されている場所か? 道が繋がっていないようだが、一旦外に出るか」

「いえ、どうやら正しい手順を踏まないと通路が開かないようですね」


まずは先へ進み、上層・中層・下層と分かれている場所を順番に攻略する必要があるようだ。
それぞれにあるスイッチを押せば、一番上の通路の壁が無くなるらしい。


「ただの研究施設なら、そこまで厳重にする必要など無い……。随分ときな臭さのある施設だな」

「ええ。あのロボット達の主か、それとも昔に居たという人間達か」


調べてみたら機雷など、下手をすれば命に関わりそうなトラップもある。
そこまで厳重にする施設なら大体、生物兵器や人体実験など非人道的な事をやっているのが通例だ。
最短のルートを調べていたセルシュだが、ふと、この場所からそう遠くない部屋に不自然な電力エネルギーの発生を関知した。
詳しく調べてみれば補助電力の供給を行っている部屋らしいが、どうにも発電が不安定だ。
ひょっとするとここに何かがあって、それをカムフラージュしているのかもしれない。


「行ってみよう、お前か私の望む物があるかもしれない」

「パワードスーツならいいですね、サムスさんもすぐに帰れますし」

「……セルシュ。私がお前を放っておくと思うのか?」

「だって目的のパワードスーツを奪還したら、もうサムスさんが私と行動を共にする必要なんて無いでしょう? 私も一人の方が気楽ですから」


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