「ちょ、ちょっとレッド君、リュカ君!」

「どうしたのセルシュさん」

「今、今リザードンの体から、例の紫色したぼわぼわの珠が出て来た! これっ!」


セルシュの指差す先を見れば、レッドが見た戦艦から落とされ、亜空軍を形作った正体不明の謎の珠。
それはセルシュ達から離れようとするように、どこかへと去って行った。


「まさか、あれがリザードンを暴走させてたのか?」

「かもしれない。数が少なかったから、完全に支配できなかった……とか、かな」


何にせよリザードンは元に戻ってくれたし、深追いはせず先へ進む事に。
あんな物があるのではネスや、どうしているかは分からないが他のファイター達も心配だ。
残るネスを探して遺跡を進むが、リザードンを取り戻したすぐ先で行き止まりのよう。
そこは広大な円形の部屋で、上は見えないくらい高い。
辺りをキョロキョロ見回しながら、リュカが呆けた声を出す。


「うわぁ……広い。でも何にもなさそうだよ。どうする、戻って遺跡から出る?」

「そうね、見た所ネス君も居なさそうだし……」


戻ろうか、とセルシュが言いかけた、その時。
パラパラと砂利や小石のような物が彼らの頭上に降って来た。
反射的に上を見た瞬間、光の筋が暗闇に走り、高すぎて真っ暗だった天井が崩れて辺りがにわかに明るくなる。
同時に落下して来る巨大な物体と、多数の瓦礫。
その瓦礫の一つが、レッドの頭上目掛けて落ちて来る。
まずい、このままでは潰されてしまう……!


「うわあぁぁぁっ!!」

「レッド君!」

「PKサンダー!!」


リュカが一際大きな瓦礫に向かってPKサンダーを放つ。
ひび割れて複数になった瓦礫の元へ飛び立ったリザードンが、思い切り振り払って瓦礫を壁に叩き付けた。
危なかった。リュカが瓦礫を崩していなかったら、レッドはリザードンもろとも瓦礫に潰されていただろう。
しかし今は礼より、気にしなければならない事がある。
瓦礫と共に降って来た巨大な物体……それはロボット。
レッドがすぐ図鑑を向け、機械の音声が説明を始める。


『【ガレオム】亜空軍の大型ロボット兵器。戦車形態による高速移動が可能。ミサイル等も搭載しているが、何よりその巨体を存分に活かした攻撃は注意が必要』

「亜空軍……! こいつも敵だ、応戦しようリュカ!」

「うん!」


セルシュを下がらせ、ガレオムに対峙する二人。
……既に割と壊れており、あちこちから火花が散っているが、落下の衝撃だろうか?
レッドはそのままリザードンを指示してガレオムに立ち向かい、リュカは少し離れた所からリザードンを援護する。
セルシュはそれを、円形の部屋に繋がる通路の入り口から遠巻きに見ていた。
彼らは戦いの中で負傷しているが、さすがに入り込む隙が無い。
今 無理をして回復の為に出て行けば、あっと言う間にやられてしまう。


「頑張って、みんな!」


応援しか出来ないが、ふとこちらを見た二人がニッと微笑んでくれた。
届いている。
それだけで、不安を抱えながら見ているだけしか出来ないセルシュの心が落ち着いて行った。
彼らならきっと、あんな壊れかけロボットなんてすぐに倒してくれる!


「とどめだリザードン、“いわくだき”!」


リュカが作り出した隙を見逃さず、レッドがリザードンに指示を出す。
落ちて来た瓦礫を利用して渾身の“いわくだき”をヒットさせると、ガレオムは小規模な爆発を起こし、遂に動かなくなった。
それを見たセルシュはすぐに駆け寄り、リュカとリザードンの傷を癒し始める。


「お疲れ様みんな! すごい、こんな大きな敵まで倒しちゃうなんて!」

「ちょっとは強くなれたかな……ネス兄ちゃんみたいに」

「うん、なれてる。今のリュカ君を見たら、ネス君きっとビックリするよ!」


掛け値なしに褒められ、照れ臭そうに笑うリュカ。

セルシュは動かなくなったガレオムに近寄り、亜空軍の脅威を感じていた。
こんな敵が他の仲間達も襲っているかもしれない。
もし傷付いているなら癒やしてあげたいのに、彼らの状況が分からないのでは……。


「セルシュさん、リュカ!」


突如響いたレッドの声。
え? とセルシュ達が振り向いたのも束の間、二人纏めて何かに掴まれる。
何か、ではない。
この巨大な手は間違いなく。


「ガレオム……!?」


ガレオムだ。まだ壊れ切っていなかったらしい。
しかも奴の頭が開き、そこにあったのは何やら不気味な紫色のエネルギー球が収められたカプセルと、時間のような数字をカウントダウンしているディスプレイ。
正体は不明だが良い物でない事ぐらいは分かる。


「は、放してっ!」


セルシュの悲鳴も虚しくガレオムは、二人を掴んだまま自身が落下して来た穴から外へ飛び立った。
カウントもどんどん減っている……!
一刻も早く離れなければ、と思ったらしいリュカが、自分達を掴むガレオムの腕をPKサンダーで破壊する。
切り離された腕から放り出され、二人は地面へ真っ逆さま。


「きゃあぁぁっ!!」

「っ、セルシュ姉ッ!!」


リュカは必死でセルシュの腕を掴むと、
更に手を伸ばしてセルシュの頭を包み込むように抱き締める。


「ぼくが、セルシュ姉ちゃんを守るから……!」

「リュカ君……!」


以前とは比べ物にならない程の勇気と男気に感動してしまうセルシュだったが、それで彼らが浮く訳でも、衝撃が和らぐ訳でもない。
これから来るであろう衝撃に身構える二人……だが。

不意に落下の重力とは無関係な方向へ引っ張られる。
何事かと気付いた時には、カービィのような体型の(ただしカービィより割と大きい)、仮面を付けた者が両手に二人を掴み、背中に翼を出して飛んでいた。
あっと言う間に遺跡から離れた崖の上に連れて来られ……そこには仲間の姿。


「え! アイク、マルス!」

「リュカもセルシュも無事そうだな、良かった」


確か二人で物見遊山の旅に出ていたアイクとマルス。
そこへリザードンに乗ったレッドも追い付いて来て、彼らを見て驚いた。


「二人とも大丈夫……えっ、アイクさんとマルスさん!? それにそっちの……カービィ? みたいなヒトは一体……」

「私はメタナイト。お前達の知るカービィとは同郷でな。お前達もファイターだろう? 丁度良い、我々に協力して貰えないだろうか」


メタナイト、と名乗った仮面のヒトの申し出に、疑問符を浮かべて顔を見合わせるセルシュ達。
どうやら彼はまだ仲間達に顔を出していないものの、既にファイターに登録されている戦士らしい。

そこで彼に聞いたのは、邪魔なファイター達をフィギュア化させ、世界を亜空間に飲み込まんとする亜空軍の存在と、それを率いるタブーという者の存在。
亜空軍……レッドの図鑑が喋っていた名前と同じだ。
メタナイトは戦艦ハルバードを奪われそれを追っていて、アイクとマルスは亜空軍を止める為に、メタナイトに協力しているとか。

間違いない。ネスをフィギュアにしたワリオも亜空軍に加担しているのだろう。
彼らと一緒に亜空軍を追えばネスに近付けるかもしれないし、何よりそんな危険な奴らを放っておけない。


「そんな野望 許せない、あいつらを止めなくちゃ! わたしの回復魔法が役に立つなら存分に使ってね」
「セルシュの回復魔法は助かるよ。リュカとレッドも宜しく。一緒に戦おう」



マルスの言葉に笑顔で頷くリュカとレッド。
そんな彼らの背後では、亜空間を広げる爆弾を積んでいたガレオムの爆発により、遺跡の一帯が亜空間に飲み込まれてしまっていた。


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