「ああ〜…ホント何なのさあれ、折角兄さんの試合を応援しようと思ったのに、空中スタジアムが無くなって訳の分からないものが浮いてるなんて……遅刻してる間に何が……コワイヨー」

「どうやら寝坊でもしちゃったみたいだね。亜空軍とは会ってないのかな」

「恐らくそうだろ。じゃあフィギュアにさせて貰うとするか。ワドルディ」


控えさせていたワドルディに命じ、道を歩いてルイージを追い掛けさせる。
その存在に気付いたルイージは短い悲鳴を上げて飛び退くが、必死に(腰の引けた)ファイティングポーズを取るのが微笑ましいやら情けないやら。
……本当に大丈夫か、と呆れた視線を向けて来るデデデにセルシュは、いいから早くルイージに近付いてと急かした。
自分がルイージを推したのだから役立たずなんて認める訳にはいかない、だから良い言い訳が浮かばないなら、ルイージに関する質問には答えられないのだ!

デデデは二匹目のワドルディがルイージに近付いている間に後ろへ回り込む。
ルイージは一体何が怖いのか、つぶらな瞳で見つめるワドルディに怯えて更に引いた所を、デデデハンマーの一撃に襲われた。
空の彼方へ飛んで行き、落ちて来る頃には情けないポーズのフィギュアになっていましたとさ。
器用にハンマーの側面でキャッチし、振り上げて後ろの地面に着地させるデデデ。
情けないポーズのルイージに、今度は視線ではなく口を出して突っ込んだ。


「……おいセルシュ、本当にこいつで大丈夫か」

「……」

「口笛を吹いとらんで質問に答えんかコラ」


今更不安になって来たなんて言える訳がない。
まあ何にしても手近なファイターをGETするのはデデデも賛成だった。
たまたまそれがルイージだったので、何やかんやと言っているだけに過ぎない。
……好き放題に言われて本当にルイージが気の毒だと、ワドルディ達が哀れみの視線を向けるがフィギュア化した彼は気付かない。
取り敢えずワドルディ達に運ばせようと集合させると、見張りから報告が。
亜空軍に加担してファイター達をフィギュア化させているワリオが、フィギュアのピーチとネスを乗せた乗り物でこちらへ向かっているらしい。


「向かってるって、私達に気付いたってこと?」

「いいえ、たぶん、偶然通り掛かるだけかと!」

「しめたぞセルシュ、そのフィギュアを奪ってやろう。亜空軍に加担しているなら、フィギュアのルイージを放っておけずに止まる筈だ!」


何それ完全に悪役じゃーん、なんて言おうかと思ったがやめておいた。
悪役どんと来いだ、それくらいやらないと完全な敗北を防ぐなんて出来ない。
セルシュとデデデはフィギュア化したルイージを放置し、あちこちにワドルディを潜ませ自分達も隠れて様子を窺った。

やがてやって来たワリオは、前方に操縦する為のレバーがあり、その後ろに物を掴む為であろう大きなアーム、更にその後ろに広い荷台がある乗り物に乗りやって来た。
カーゴというその乗り物の荷台には、フィギュア化されたピーチとネス。


「お? あれはルイージか。まあいい、念には念を入れるとするかな」


……ワリオからもそんな扱いである。
今度はワドルディだけでなくセルシュとデデデまでルイージが哀れに思え、事件が解決した暁には優しくしてやろうと心に決めてみたり……。
ワリオがカーゴから降り、ルイージに近付く。
笑いながら抱え上げた、その瞬間。


「行けぇワドルディ!!」

「おおぉぉ!?」


デデデの号令におびただしい数のワドルディがワリオを取り囲み、ぽかぽかと攻撃を加え始めた。
武器も無いワドルディの攻撃力なんてたかが知れているものの、数の暴力というやつで身動きが出来ない。
そのうち耐え切れなくなったワリオがルイージのフィギュアを離し、それはワドルディの波に押されて騒ぎの中心から出てしまう。
デデデはカーゴに近付いて乗り込み、少しだけ操作を確認してからセルシュに声を掛けた。


「よし、大丈夫だ! セルシュ、ルイージを!」

「へいおやびん、ガッテン承知でヤンス!」


どこの下っぱだと言いたくなる妙な口調で応え、ルイージを担ぎ上げたセルシュはそのままカーゴの荷台へダイブ。
カーゴを浮かせたデデデは最高速度を出し、ワリオのよく聞こえない叫び声をBGMにその場から離れた。


「あっはっは! 気分爽快だねえ、悪い事する人の気持ちが分かるかも!」

「……突っ込みたい、が、ワシも人の事は言えんからなあ」

「プププランド中の食べ物を根こそぎ奪っちゃった事あるんでしょ、知ってる」

「な、なぜそれを!」

「カービィから聞いた」

「カァーービィーー!!」

「あはは、今度私にも何かご馳走盗って来てよ」

「……取得の取る、な。盗むの盗る、はせんぞ」


呆れた声で答えながらデデデは、セルシュがそれほど気落ちしていない事に内心ホッとしていた。
大切な仲間を裏切らせてしまい、彼女が辛い思いをしているのではと心配だった。
楽しそうで何よりだ。

やがて再びデデデの部下から、誰かは確認できていないが東にファイターが居ると報告を受けた二人。
比較的近かった為、そのファイター達を次の標的に定めてカーゴを走らせた。


*back × next#


戻る
- ナノ -