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と、そこで壊れていたデュオンがボロボロと無数の黒い粒になって消え、後には一体のフィギュアが残された。
不思議なほど薄っぺらい真っ黒な体……。
一応 デフォルメされたような人の形はしているものの、本当に真っ黒で顔すら無い。
「こいつも亜空軍の手下って訳か……」
言いながらブラスターを構えるフォックス。
そんな彼の前にセルシュが立ちはだかる。
「す、少し待って下さいフォックスさん。フィギュア化したという事はファイターでは……」
「だけど亜空軍に加担していたのは間違いない。放っておいたら後で足許を掬われるかもしれないぞ」
「ですが……」
「まあまあ、お待ちになって2人とも」
言い合うセルシュとフォックスの隣を、のんびりした声と優雅な足取りで通過するピーチ。
止める間も無く黒い人のフィギュア化を解除したかと思うと、言葉が通じるかどうかも怪しい相手へ、小さな子供に言い聞かせるような説教を始める。
「んもう駄目じゃないの、あなたがしていたのは悪い事なのよ」
それに対し、まさに電子音なピコピコとした声(?)で答える黒い人。
セルシュは銃の先を向け、その先から赤外線を放出して黒い人に当てた。
「あ、やっぱりあの人もファイターです。Mr.ゲーム&ウォッチさん」
「ああ、もう大丈夫そうだ……って言うかアレ、ひょっとして悪い事してるつもり無かった感じか?」
フォックスが微妙な顔をして言う。
Mr.ゲーム&ウォッチはピーチからパラソルを貸して貰い、楽しそうに歩き回っていた。
その様子はまるで、善悪の判断もつかないような小さな子供を連想させる。
誰か……そこは亜空軍ボスのタブーだろうが……に騙されていたのかもしれない。
ふとブリッジを見上げるとメタナイトが居た。
そう言えば元々はこのハルバードに乗せて貰う為に、フォックス&ファルコと待ち合わせして彼の元へ向かっていたのだった。
そこからこんな戦いが始まって……。
セルシュの提案により彼女と一緒にブリッジへ向かうフォックスとファルコ。
そこは何があったのか前面の窓が全て無残に割れていた。
セルシュは舵輪の前に佇んでいるメタナイトに声を掛ける。
「メタナイトさん」
「ん……セルシュ。フォックスとファルコも一緒か。今回はすまなかったな」
「いいって。お前のせいじゃないんだから」
「亜空軍の事はセルシュから聞いたが、お前は知ってんのか?」
「ああ。以前にマスターハンドから聞いた事があってな。この船も元々は彼に依頼されて建造していたんだ」
「そうだったんですか……!」
ひょっとしたらマスターハンドは、こんな事が起きると予測していたのかもしれない。
メタナイトがファイターに登録されながらも顔を出していなかったのは、ハルバード建造に集中する為なのだろう。
ファイター達の様子は、マスターハンドが用意した乱闘の中継などで知っているそうだ。
「ああしてモニターを通してでも見ていると、会った事も無いスマブラファイター達に愛着が湧く。彼らを守る為ならと建造にも気合が入ったものだが……まさか悪用されるとは」
落ち込む様子のメタナイトに、セルシュは掛ける言葉が無い。
彼の話では、元の世界で悪用しようとしてカービィに倒され意思を改めたらしい。
今度こそは良い事の為に使ってやろうと意気込んでいたようだが……。
メタナイトは一旦マルスやアイクと行動を共にしていたようで、彼らの元へ戻る事に。
ハルバードを覆っていた赤い雲を抜けて氷山ふもとの渓谷へ向かっている最中、遥か水平線の方で大きな爆発と共に巨大な亜空間が広がるのが見えた。
「フォックスさん、ファルコさん! あれは……!」
「おいおい……本格的に攻めて来やがったのか」
この距離であの大きさとは……今までとは比べ物にならない大きさの亜空間だろう。
きっとあそこに亜空軍のボス・タブーが居る筈だ。
渓谷に着く頃、海の方からキャプテンファルコンのファルコンフライヤーがやって来る。
ハルバードから降りるとそこには複数のファイター達。
ファルコンフライヤーからもファイター達が降りて来て、これで亜空軍に加担していないファイターが勢揃いしたようだ。
セルシュはファルコンフライヤーからディディーが出て来たのを見て駆け寄った。
「ディディー君、ご無事でしたか!」
「あ、セルシュー!」
ディディーが思いっ切り飛び付いて来て、セルシュはよろけながら抱き留める。
嬉しそうに満面の笑みで頬を摺り寄せて来るのが微笑ましい。
「あれからサムスやピカチュウとも会ってさ、もう大変だった! そっちは?」
「大きな敵と戦いましたが仲間も沢山いましたし、大丈夫でしたよ」
「よかったー! オイラセルシュを手伝うって言ってたのに、出来なくてゴメンな」
「いいんですよ。これから一緒に戦いましょう」
「モチロン!」
そんな2人にヌッと大きな影が掛かり、そちらを見ればドンキーが見下ろしていた。
彼は大きな体で戦いもパワフルだが、普段はとてものんびりした性格。
「セルシュ〜、ディディーを手伝ってオイラを追い掛けてくれたんだって? ディディーからいろいろ聞いたんだ、ありがとね」
「どういたしまして。ドンキーさんもご無事で何よりです」
これだけの仲間が揃えばきっと負けない。
相変わらずボスとの連絡が途絶えセルシュが代理行動をしているが、何となくこれはボスが望んでいる事ではないかと思えるセルシュ。
そして今 海の彼方に広がっている亜空間を見ると、胸騒ぎがする。
それは悪い予感が殆どだが、少しばかりの良い予感も混じっていた。
「(ボス……もしや、あの亜空間の中に?)」
セルシュのボスは特殊な立場。
連絡が途絶えるなど異例中の異例で、それが亜空間の中に居るからなら納得が行く。
タブーに囚われているのだとしたら勿論それは大問題だが、安否も行方も不明の中、居場所が分かればそれだけでも前進だ。
集まったファイター達の中で初対面の者が数人居たので、改めて手短に自己紹介する。
事情を知らなかった者達も、メタナイトやセルシュの話により亜空軍についてを知った。
恐らく海の彼方の巨大亜空間が決戦の場所になるとは誰もが思っているが、目下、問題はどういう方法であの亜空間に近付くかという事。
空を飛ぶ手段なら複数あるが、きっと亜空軍もすんなりと近付かせてはくれないだろう。
万一にでも飛行手段が全て落とされてしまえば、近付くのが非常に困難になってしまう。
セルシュはフォックスとファルコにこそりと訊ねてみた。
「あの、グレートフォックスを使うのはどうでしょう」
「考えたんだが駄目そうだ。ハルバードとの戦いでだいぶダメージを負ったからな」
「落とされれば終わりだ。せめてもっと近付いてからアーウィンに乗れれば良いんだが……」
亜空間までの距離が長ければ長いほど危険が増す。
まして目的地は遥か海の上、身を隠して近付けるような場所ではない。
せめてもう少し亜空軍にばれないよう近付いた場所から、飛行手段を使えれば……。
「みんな、私に考えがあるのだが」
一体どうするべきか……話し合いでざわざわとする一団の中、メタナイトが少し大きめの声を出して輪の中心に進み出た。
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