「ちくしょーっ!! 待てよ、ドンキーを返せっ!!」

「さすがに飛ぶしかねぇな。セルシュ、お前はあの戦闘機を呼べ。近くにグレートフォックスを待機させてあるから、俺達はアーウィンで後を追うぞ」


言われた通り、通信機を借りて前日に乗ったアーウィン似の戦闘機を呼ぶセルシュ。
ディディーを一緒に乗せ、グレートフォックスに向かうフォックス達を見送りながら
浮遊島近辺の情報とハルバードの行方を調べてみる。
するとあの浮遊島に、キャプテンファルコンの愛車ブルーファルコンと、キャプテンオリマーの宇宙船ドルフィン号の反応があった。


「ファルコンさんとオリマーさんがあの島に……?」

「あいつらが居んのか? 協力してくれたら助かるけど。どこに居るか分かる?」

「彼ら本人の居場所までは分かりませんね。機体の傍に居るとしたらやや離れていますが……」


そうしてディディーと会話していると、フォックス達から通信が入った。
ハルバードは既に大陸の東端へ向かっており、もしこのまま外海の方へ出られてしまえば厄介な事になる。
なので先にフォックスがグレートフォックスと共に、ハルバードへ向かうと言い出した。


『セルシュ、お前はディディーを乗っけてるし、ドンキーを助け出すまで手伝ってやった方がいい。放っとけないんだろ?』

「フォックスさん……どうか、無事でいて下さいね」

『ああ、任せろ』

「ドンキーさんを助け出したら、私達もすぐハルバードへ向かいますから!」


こうして今度はフォックスだけが単独で行動し、二手に分かれたセルシュ達。
だがフォックスには母艦も付いているし、何より以前よりも彼らを信頼出来るようになったため、ファルコの時よりすんなり送り出せた。
ファルコと共にフライングプレートを追い掛けたセルシュは、プレートの上に敵の亜空軍が数人しか乗っていない事に気付く。


「意外に少ないですね」

『おいディディー、あれならお前一人でも何とかなるんじゃねぇか。島に入ってから助けようと思ってたが、手間が省けそうだぜ』

「うん。フィギュア化さえ解除すれば、あんな鎖ドンキーは軽くちぎっちゃうよ!」


決まりだ。
敵の本拠地かもしれない浮遊島から援軍が来た場合はセルシュとファルコが迎え撃つ。
セルシュはフライングプレートに近付くと機体を逆さまにし、ハッチを開けてディディーを落下させる。
ジェットバレルで上手いこと着地したディディーはすぐさまドンキーのフィギュア化を解除。
ディディーが言っていた通り、自身を縛る鎖を引き千切り、ドンキーが雄叫びを上げる。


「やった、ディディー君!」

『気を抜くなセルシュ、敵さん来やがったぜ』


見れば浮遊島の方から、亜空軍を乗せたフライングプレートが何機も出て来た。
ディディー達を守るため、セルシュとファルコは次々と撃ち落として行くが、数が多くて全ては撃ち落とせない。
ディディー達が乗るプレートに幾つか到達してしまい、彼らも戦い始める。
しかしそんな中、撃ち落とし損ねたフライングプレートの一つに、見慣れた仲間の姿を見付けたセルシュ。


「ファルコさん、島へ向かって一番手前側のプレートは撃たないで下さい! キャプテンファルコンさんとオリマーさんが乗ってます!」

『……あんな島で何やってたんだアイツら』


理由は分からないが、ディディー達の戦力が増えるのは良い事だ。
この戦いが一段落ついたらディディーとは別れ、ハルバードを追ってフォックスと合流するつもりだったから。

やがてフライングプレートの増援も尽き、ディディーが乗るプレートの敵も全滅させる事が出来たようだ。
ハイタッチして踊り合うディディーとドンキー。
二人のキャプテンも居る事だし、もうセルシュ達の手助けは必要無さそう。
浮遊島へ向かうプレートに近付き、挨拶するように機体を回転させるセルシュ。
そんな彼女へディディーは大きく手を振り、あらん限りの大声を張り上げる。


「セルシューーっ、ファルコーーっ、ありがとなーー!! フォックスにもよろしく言っといてーーーっ!!」


高速で飛ぶ戦闘機に、そんな声は届かないだろう。
けれどきっと心は伝わるだろうと、
ディディーは見えなくなるまでセルシュ達へ手を振り続けていた。



セルシュはファルコと共に、ハルバードを目指す。
ハルバードはグレートフォックスと共に東端から動いておらず、交戦している可能性が高かった。
フォックスが既にハルバードを停止させている可能性も考えたが、信頼とは別に、あまり楽観はしない方が良いと思い引っ込める。
昨日 艦のデータベースにハッキングして得た情報では、ハルバードはかなりの性能と装備だった。
正直な話、グレートフォックスも勝てるか怪しい。
それでも。

“出来るだろうか、じゃない。やるんだよ”

フォックスの言葉を反芻して覚悟を決める。

改めてハルバードの状況を確認しようとモニターを操作したセルシュ。
その瞬間、信じたくない表示が目に飛び込んだ。


「ファ、ファルコさん! フォックスさんのアーウィンが撃墜されてます!」

『ハァ!? ッチ、あの野郎……二日で2回も撃墜されてんじゃねぇよ……! 急ぐぞセルシュ、情けないリーダーにお灸を据えてやらねぇとな!』

「はいっ……!」


口では悪態のような言葉を言いつつ、ファルコも心配しているらしい。
この大陸の東端、遺跡や氷山がある最果ての地を目指し、二人は空を行く。


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