マキアートとマルスは増援の波が収まった隙を逃さず通路を飛び出す。
最低限の敵を倒しながら砦の中を一気に駆け抜け、ついに外へ出た。

先程から敵を見ていて気付いたのだが、奴らはマキアートやマルスの故郷では見る事の出来ない、いわゆる“ロボット”のような見た目をしている事に気が付いた。
この世界に来てから初めて目にした“車”のような印象の敵も居れば、雲のようだと思ったのにあちこちに“機械”のような物が付いている敵も。
こいつらは自然に生まれたものではなく、明らかに何者かが意図して作り出したものだと言えよう。
そいつの元を離れて暴走しているのか、それともシンプルに、こいつらを作り出した者がマキアート達を狙っているのか。


「気味が悪いね……。闇使いのあたしに言われたかないだろうけど」

「誰が何の目的で作り出したのか。あの妙な紫の空間の所へ行けば分かるかもしれません」


突如広がった、この異変のきっかけと思えるあの妙な紫の空間。
打ち捨てられた投石機や刺さった矢の間を走り抜けて行くと、辿り着いた。
近付いてみて気付いたのだが、何だか自分の闇と似た印象があるな、とマキアートは感じていた。
これが何なのかは全くの不明である訳だが、微妙に近しささえ感じる。
そうして呆然と紫の空間を眺めていたマキアートは、甲高い金属音に、ハッとそちらへ目を向けた。
見ればマルスが、カービィのような体格の仮面を付けた剣士と剣を交えている。


「え、あれ、マルス君、そいつ何なの!?」

「マキアートさんすみません……っ! ちょっと今は」


あの小さな剣士に、マルスが余裕を持てない程に集中させられている。
ひょっとして奴がこの妙な空間を作り出し、ロボット達を送り込んだのか。
だったら負けるな! と邪魔をしないように心中で応援していたマキアート。
だが次の瞬間、マルスと剣士の背後から、あの人形達が襲い掛かって来た。
反射的に魔法を発動させようとしたマキアートの目の前で、マルスと剣士はお互いの背後に居た人形達を残らず切り刻む。

えっ、と言いたげにお互いを振り返る二人。
仮面を付けた剣士はそこで、ようやく口を利いた。


「どうやら私は、とんでもない勘違いをしていたようだな」

「お互い様ですね、僕も勘違いしていました」


先程とは一転、互いに背中を預けて人形達に対峙し、立ち向かう二人。
今の会話を聞くにマキアートやマルスだけではなく、仮面の剣士もマキアート達をこの空間やロボットを放った張本人だと思っていたらしい。
マキアートも、次々と集まる人形達を倒し始めた彼らの元へ向かい、魔力を含蓄させて行く。
すると仮面の剣士がマキアートに話し掛けてきた。


「娘、あの少年の仲間なのだろうが、ここは私達に任せておくがいい。巻き添えにならない離れた所へ下がっていなさい」

「仮面の剣士さん、お言葉ですけど、あたしそれなりに強いですよ。今からご覧に入れます」


得意気な表情を浮かべ、含蓄した魔力を闇に変えて解き放つマキアート。
複数の人形達を一気に葬った魔力に仮面の騎士も、マキアートが庇護されるべきか弱い淑女ではないと理解したようだ。
3人で次々と湧き出る増援を屠り続け、ようやく収まってから改めて仮面の騎士が名乗った。


「先程は失礼した。私はプププランドという国の護国卿・メタナイトだ」

「え……? プププランドって事は、やっぱりカービィと同じ国から」

「カービィを知っているのか? ……そうか、お前達もスマッシュブラザーズのファイターなのだな」


お前達も、と言う言葉。
聞けばこのメタナイトもファイターの一員らしい。
登録だけ済ませて参加はしていなかったとか。
そこでマキアートは、ファイターリストの中にメタナイトという名前があった事を思い出した。
彼なら何か分かるかもしれないと思い、一体何が起きているのか尋ねる。


「メタナイト卿、今、この大陸に何が起きているのかご存知ですか?」

「……ああ。おおよそは」


メタナイトの話によると、妙な紫の空間は、亜空間と呼ばれるデータ空間。
ロボット達は亜空軍と呼ばれる集団で、それらを率いているのが、ある日突然亜空間に現れた、タブーと呼ばれる者。
メタナイトは奴に仲間をフィギュアにされ、大事な戦艦を奪われたので追っている所らしい。


「緑のローブで全身を覆い隠している者を見掛けなかったか? エインシャント卿と言って、奴も亜空軍の指揮を取っているらしい」

「あ、見ました! 確か東の方へ飛んで行って……」

「マキアートさん、メタナイト卿、すぐに奴を追い掛けましょう!」


マルスの言葉に頷き、東を目指して走る。
ふと、マキアートは偵察に行ったきりのアイクの事が気になった。


「ねえマルス君、アイク青年大丈夫かな」

「うーん、アイクさんなら大丈夫のような気もしますが心配ですね……。メタナイト卿、どこかでバンダナを付けた蒼い髪の青年を見ませんでしたか?」

「いや、知らないな。仲間なのか」

「はい。偵察に行ったきりで……」


心配だが、エインシャント卿や亜空軍も放っておいては大事だろう。
アイクの無事を信じ、今はエインシャント卿の追跡を優先する事にした。


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