19-3



え、ええ、何か知られざる二人の過去を覗いてしまった……。
強制的に政府入り、か。
きっとそうして有能な人材を手元に集めてるんだな、ガノンドロフの奴。


「正直少し混乱していますが……これまでの情報と事実を合わせて判断します。コノハさん、私とシュルクさんは今からあなたの味方です」

「あ、ありがとうございます!」


うわああやったぁぁ!
小躍りして喜びたいくらいの気分だよ今! やらないけど!

シュルク達は政府に、アンドロイドが見付からないので引き続き捜索に当たると連絡するみたい。
その間に私がやる事と言えば、サムスとカービィに隠していた事の説明だ。
死んだ事もアンドロイドの事も……だ、黙っててゴメンナサイ……。


「コノハ、私が疑いそうだったから黙っていたんだな」

「はい……」

「そう申し訳なさそうにするな。私がお前の立場でも同じ判断をしている」

「えっと、コノハねえちゃん、しんじゃったの……? ボクをかばったせいで……?」

「違うよカービィ、あれは私がやりたくてやった事。悪いのは政府。カービィは何にも悪くない」


しゅんとした顔と泣きそうな潤む瞳で俯いて落ち込むカービィを慰める。
確かに直接的な切っ掛けは私がカービィ(エイネちゃん)を庇って撃たれた事だけど、そもそも政府が来なけりゃあんな事にならなかった。
……私が後を尾けられたせいでもあるんだけど、言われないので黙っておこう。


「あとコノハ、あの文章は一体 何なんだ?」

「え……あ、見ましたか」

「何故あんな事が分かる? ……“友達”からの情報か」

「はい」


サムスは私がレジスタンスと友達だって知ってるもんね、説明の手間が省けた。

こうして私の仲間は2人増えた。
サムス、カービィ、シュルク、ルフレ。
あああ嬉しい頼もしい泣きそうになって来る……!

ルフレが市民証を操作しながら口を開く。


「明後日……多めに見積もって2日程はバレないようにしなければなりませんね」

「それまで離れていれば良いかもしれないけど、状況が一変するのなら近くに居ないと会えなくなる可能性もあるか。分かり易い場所でコノハ達が一ヶ所に留まれれば良いんだけど」

「なら明後日までホテルに籠もるのはどうだろうか」

「そうですね、日にちが分かるんですからそうしましょう」


サウスエリアのホテルを取ってそこで明後日まで過ごす。
シュルク達はグランドホープ内を転々として、明後日にまたサウスエリアに戻って来る事にした。
……またシュルク達と合流する頃にはレジスタンスの戦いが始まってるんだ。


「(みんな……無事で居てよ)」


やる気が出た今の私でも、この状況では無事を祈るしか出来ない。
そっと目を閉じて、妙に懐かしく感じる友人達を思い浮かべた。


+++++++


レジスタンスの拠点になっている、アイクが所持する敷地。
その中にある建物内で、レジスタンス達が一人の少年を囲んで唖然としていた。
少年……レッドの隣には2m程の大きさをした真っ白な体の機械生命体。


「で、レッド、コノハの葬儀に来なかったのってそれが理由?」

「ああ。行ける状況じゃなかったんだ。早いところコアを隠さなくちゃいけなかったし」


レッドはテーマパーク関連で親と共にグランドタワーを訪れた際、連れて来ていたポケモン達がどこかへ行ってしまい探し回っていた。
随分と探し回ってゼニガメ、フシギソウ、リザードンを見付けるが、リザードンが抱えられる程の大きさのカプセルを持っている事に気付く。

気になったレッドは親と相談して密かに持ち帰り、一緒に持っていたディスクを独立した端末で閲覧してみた。
そこに書いてあったのは反政府思想の人間を取り締まるアンドロイドのデータ。
ポケモン達が持っていたのは、二体目のアンドロイドのコアだ。


「ポケモン達は人工ペットだから、センサーとかには反応しない。どうしてこれを持って来たのかは分からないけど、調べてもウイルスや追跡機能、逆探知は無かった」

「それでこの一週間、コアを中心に据えてアンドロイドを創ってたんだ……」

「アンドロイドというよりポケモンを創るのと同じ要領だよ。元々創る予定だったポケモンのデザインを流用して、この……ミュウツーが完成した」


ミュウツーと呼ばれた“ポケモン”は黙っているばかりで何も言わない。
これは大きな出来事だ。
政府の新たな戦力を削れた上に味方に出来たなんて素晴らしい。
レッドの言う通り、なぜ彼のポケモン達がコアを持って来たのか、持って来られたのかは分からないが、レッドと両親が自社の技術力をもって調べても怪しい所は無かったと言うなら安心だろう。

……実はこれはセレナーデの差し金なのだが、レジスタンスは知る由も無い。

マリオが仲間達を前に、真剣な瞳で告げる。


「明後日だ。明後日、5000年の悲願を達成する為の戦いが始まる。アイクの協力によってシェリフの力も期待できるようになった」

「オレ達のこれまでが報われるようにしないとな。いや、してみせる」


フォックスも真っ直ぐに告げた。

そんな中、ピカチュウは仲間達から離れて窓から空を眺めている。
もうコノハが死んだ事による涙は流れないが、胸にぽっかり空いた穴は埋まらない。
枯れたと思っている涙も油断すると溢れて来るので、意思をしっかり持って耐えていた。
そんな彼の隣にはアイクも居る。


「……ねえアイク。コノハはさ……どうしてこの世界に来たんだろう」

「それが疑問なんだ。カムイの力を貰ったヨリは既に亡くなっていた訳だしな」

「カムイ様がコノハを呼び寄せたんじゃないよね?」

「あいつが呼び寄せたなら姿を現しているだろう。実際はどこに居るのかも分からんぞ」

「強大な力を持つ者はそれを極力使ってはならない、神は世界と運命に極力関与してはならない、か。そんな掟を守らなくちゃいけないなんて神様も大変だね」

「だな。いざという時に守りたいものも守れない。あいつも随分と歯がゆい思いをしただろう」


コノハがこの世界に来た、それがそもそもの始まりだ。
あの時から既に死へのカウントダウンが始まっていたと思うと……やり切れない。


「ヨリが残してくれた力、自分の移動と解除で使い切っちゃうなんて思ってもみなかったよ」

「ああ。それが残っていたらすぐにでもコノハを元の世界に帰してやれたんだが……」

「やっぱりヨリが死んじゃったから、カムイ様の力を使う中継媒体も消えちゃったって事か」


何にせよ、あと2日。
明後日から始まる戦いでコノハの復讐を果たしてやれる。
必ず果たしてみせるつもりだ。


「ところでピカチュウ」

「なに?」

「お前コノハの葬儀で、自分も近いうちにそっちへ行く……みたいに言ってなかったか?」

「……」

「つまらん死だけは選ぶなよ。それはコノハが望む事じゃない」

「……分かってるよ。でも寂しいよ。ボク……コノハに会いたい……」


涙声になったピカチュウは俯き、そのまま両手で目元を乱暴に拭う。
そんな彼の背中を撫でて慰めてあげながら、俺も同じ気持ちだ、と、アイクは呟くように言った。




−続く−


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