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ピット・ネス・リュカは親が5000年前の人で、ピーチ姫達のように祖国復興を託されて眠った。
その親から遺志を受け継いでレジスタンスと接触を試みてるのか。
そして更に驚くべき事を教えられる。

リンク・ロイ・マルスの3人はお婆ちゃんの守護戦士で、お婆ちゃんを守って死んだと。
今この時代に居る彼らは生まれ変わりのようなものだって……。
そんな彼らがお婆ちゃんの孫である私と接触して交流した。

歴史は繰り返す、みたいな事にならないよね?
彼らは私に仕えてる訳じゃないんだから私の為に死ぬ必要は無い。
でも彼らは私を友人と思ってくれているだろうから、
状況とタイミングによっては私を庇って……なんて可能性だってある。

駄目だ、そんなの。
レジスタンスだけじゃなく、彼らにも会わない方が良いかもしれない。


「ボクはピカチュウやルカリオたちと同じ。リグァン王国に住んでたの」

「妖精、みたいな存在なんだっけ? 何で人間になってたの?」

「カムイさまっていうヒトを知ってる?」

「カムイ……!?」


そ、それってお婆ちゃんの友人だっていうあの……!

カービィが言うには、カムイさんから貰った力で人になったらしい。
5000年前の人達が年齢を戻して眠っていたのもカムイさんの力だって。
カービィの話の信憑性が一気に増した。
お婆ちゃんはこっちの世界の人で、だからカムイさんと友達になれたんだ。

カービィは国が滅ぶ時、混乱に巻き込まれて詳しい事までは分からないみたい。
時を超えた際に記憶を上手く保持できなくて、自分がカービィである事や昔の事は忘れていたとか。
ちなみにピット達はこの事を知らないらしい。
彼らは親から遺志を受け継いだだけで、リグァン王国で生きてた訳じゃないから仕方ないか。


「コノハねえちゃん、ボクもいっしょにいていい?」

「良いけど……市民証は持ってる? 孤児院に入る時に作ったかもしれないけど、その姿で登録した訳じゃないから効かないんじゃないかな?」

「ボクは人工ペットあつかいになるからだいじょうぶだよ」


そっか、そう言えばピカチュウやルカリオも市民証いらなかったね。
ほんとグランドホープって技術や規制が時々中途半端だよなあ……。

ピット達が心配してるだろうけど、レジスタンスと接触しようとしている彼らには近付けない。
大勢の仲間は期待できないので一人でも増えるとだいぶ心強い。
カービィを仲間に加え、改めてグランドホープを行く。

まだ初日なので、政府がどう動くかはサッパリ分からない。
セレナーデが市民証をすり替えておいてくれたから、居場所や言動が全部筒抜けって事も無いだろう。
暫くは様子を見られるだけで済むだろうけど、あんまり勝手な行動をしているときっと回収に来る。
……もしその様子をレジスタンスに見られたら、それってチャンスじゃないかな?
私が政府の意に沿わない行動をしている所を見せつけたら、精神はちゃんと死ぬ前の私だって信じて貰えるかもしれない。

いつかそういう機会が来れば良いと願いながら、私は賑わう未来都市を歩いた。


+++++++


イーストエリア、とある建物。
アイクが個人所有しているこの場所に、ピカチュウ達とマリオ達レジスタンス、そして孤児のピット達やコノハの友人リンク達が集まっていた。
彼らの中心には棺と、それに納められたコノハ。
既に体を洗われ服も着替えさせられ、綺麗になっている。
棺にはピーチが密かに栽培していた生花が入れられ、コノハの周囲を取り囲んでいた。

ここに集っているのは過去の王国に関係する者達。
コノハがどうして、どうやって死んだのかも全て伝えられている。
泣いているピーチをさすって慰めながら、マリオが口を開いた。


「まさかコノハのヤツ……殺されるまで黙ってるなんて……」

「私っ、私のせいだわ! 私がコノハを誘ったりしたから……!」


泣きながら絞り出すような声で言うピーチに、違うよ、と告げるピカチュウ。
ガノンドロフがコノハを誘拐した一番の切っ掛けはピカチュウだ。
もっと言うならコノハをこの世界に来させた者……誰かは分からないが、そいつが大本の原因という事になる。


「ほんと馬鹿じゃないの……大馬鹿だよコノハ!」


ピットが俯いたまま吐き捨てるように言う。
が、すぐ穏やかな声音になって、消え入りそうな声で。


「だけど、いつか言った“温室でぬくぬく育った馬鹿”は撤回する。こんなに友達想いで意思の強い人だとは思わなかった……ごめん」


ルカリオが発見した、コノハが死ぬ際の映像は見た。
情報を喋る事を最期まで拒み、結果、惨たらしい苦しみの中で殺された……。
そんな彼女の姿は普段のコノハと付き合っていたリンク達に大きな衝撃を与える。
平凡に暮らしていた彼女がまさか、こんな大事に巻き込まれ、こんな決断をしたなんて。


「なんでっ……なんでだよコノハ、なんで死んじまったんだよぉっ……!」


先程からロイは、なんでなんでとコノハの死に問い掛けばかりしている。
だがリンクもマルスもルイージも、そしてここに居る誰もが同じ気持ちだ。
なぜコノハが死なねばならなかったのか。なぜあんな残酷な目に遭わなければならなかったのか。


「ファルコ、コノハを始末しておいた方が良かった……なんて言わないよな?」

「言わねえよ。思ってもいねえさ」


フォックスの問い掛けにファルコは即答する。
そういう考えも無かった訳ではないだろうが、あのコノハの最期を見ればそんな気にはなれない。
ただあるのは、ヨリの孫娘である事が判明したコノハの為にも政府を倒して、リグァン王国を復活させる事を誓う心のみ。

高台にあり周囲には何も無い広い土地。
敷地内であれば邪魔者の居ないここは、見晴らしが良く海が爽やかに見渡せる。
ピーチの屋敷と似たような環境だが位置的には遠い。

政府の手が及ばないこの敷地内は土の地面。
草花が生い茂る敷地の一角、一番海が見渡せる場所に穴を掘り棺を納めた。
棺の蓋を持つルカリオが嗚咽を漏らし、それに触発されたピカチュウが泣き始める。
胸の上で手を組み、穏やかに死んでいるコノハはもう目覚めない。


「コノハ……。約束、したじゃんかぁっ……!」


泣きじゃくるピカチュウの言う約束が何なのか、それを気にする者は居ない。
これから土の下に埋められるコノハを前に誰もが何も言えず、涙を流すのみ。
ただ一人、アイクを除いて。
彼は泣きそうな顔をしてはいるが、歯を食い縛って泣くまいとしているよう。
流れる涙を乱暴に拭ったピカチュウはアイクに近寄ると、体をよじ登って肩に乗り、軽く叩くように彼の頬へ手を添えた。


「コノハに何も言う事ないの」

「……俺は……コノハは俺のせいで、こんな……」

「今はそれはいいよ。最後なんだよ? 涙の一つも見せてあげないの!?」

「……コノハ……」

「泣けよ、悲しいんだろ!? 何で我慢なんかしてるのさ! 好きな子が死んで泣くのがそんなにいけない事か!」


自身も涙声のまま、頑なに泣こうとしないアイクに感情を出すよう促すピカチュウ。
それでも歯を食い縛っていたアイクだったが、諦めたピカチュウが、そろそろコノハを眠らせてあげよう、と、棺の蓋を閉めるようルカリオに言った……その瞬間。


  


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